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ツアー・オブ・ターキー2022第4ステージ、ジロ・デ・シチリア2022第2ステージ、ブラバンツペイル2022男女

2022年4月13日に開催された4レース(さすがにベオグラードバンジャルカは除く)を簡単に振り返る。


ツアー・オブ・ターキー2022 第4ステージ

第3ステージはこちら

全8ステージ中唯一の山岳ステージで1級山岳(登坂距離14.2㎞・平均勾配7%)山頂フィニッシュ。当然総合に大きな影響を及ぼすクイーンステージである。Spil Milli Parkという国立公園らしい。

登りの麓まではロット・スーダルがジャスパー・デブイストやカレブ・ユアンらスプリンター陣の牽引によって支配。過去ワールドツアークラスのステージレースでも総合TOP10リザルトも記録しているハーム・ファンフックがエース。

但し登りが始まってからはそこにナイロ・キンタナ率いるアルケア・サムシックが主導権を奪い始める。そして残り9㎞を過ぎたあたりでまずはニコラ・エデがアタック。

一度はファンフックが引き戻すがその後も再びアタック。これが引き戻されると今度はエースのナイロ・キンタナが飛び出した。

キンタナも抜け出すことはできなかったが、それでもこのペースアップで一気に集団の数が絞り込まれていく。キンタナがさらにペースアップし、集団を休ませない。

残ったのはジェイ・ヴァイン、エデ、パトリック・ベヴィン、ファンフッケ、ケヴィン・コレオーニ、アンリ・ファンデナベーレ、そしてアンデシュハラン・ヨハンネセンといった強豪選手たちばかりが集う。

だが、残り5㎞で、2020年ベイビー・ジロ総合3位のケヴィン・コレオーニ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が脱落。

そして残り4.5㎞でエドゥアルド・セプルベダがアタック。2015年に総合2位、昨年も総合3位とターキーとの相性が非常に良い元モビスターのアルゼンチンクライマーである。

残った精鋭集団はやや牽制気味。キンタナも先日の落車で調子が上がり切らないのか、今年ここまで見せている力強さが見られない。

そのままセプルヴェダ、逃げ切り勝利。2016年のツール・ド・サンルイス第4ステージ以来となる、6年ぶりの勝利であった。

追走集団の先頭を取ったのは、やはりその中では最もスプリント力のあるベヴィン。

期待していたコレオーニだけじゃなくファンデナベーレも普通に落ちてしまって、少し残念である。

一時抜け出したセプルベダを単独で追走していた9位のアドネ・ファンエンゲレンは今年のツアー・オブ・タイランド最終パンチャーステージで4位に入っていた選手(総合でも9位)。

7位のショーン・ベネットは元EF所属で昨年はキュベカ・ネクストハッシュにいた選手。今は中国籍に・・・このチームにはカチューシャ・アルペシンやブルゴスBHにも所属していたウィリー・スミットなんかも所属している。

総合でもセプルベダが2位ベヴィンに14秒差で首位に。キンタナはすでに落車で総合タイムを大きく落としているため勝負圏にはいない。

このままセプルベダが逃げ切るか、それとも第6ステージや第8ステージのパンチャー向けレイアウトで、そういうフィニッシュが得意なベヴィンが逆転を狙っていけるか。


ジロ・ディ・シチリア2022 第2ステージ

第1ステージはこちら

ラスト1㎞から500mに最大勾配10%の激坂が待ち構えており、その先は道幅の広いストレートが待っているというパンチャー向けのレイアウト。

ラスト1㎞に到達する前からイタリアナショナルチームが枚数を揃えて集団先頭を支配。激坂に突入してからもエースのダミアーノ・カルーゾを含めた3枚で先頭に残り、その後ろにはヴィンツェンツォ・アルバネーゼにヴィンツェンツォ・ニバリ、そしてケニー・エリッソンドなど。

5名が抜け出して最後のストレートに突入し、そこにドメニコ・ポッツォヴィーヴォが追いついてくる。

最後はカルーゾのアシストも外れ、カルーゾ、ニバリ、エリッソンド、ポッツォヴィーヴォら4名によるスプリントに。

残り100mでスプリントを開始し、そのまま背後のニバリに一瞬たりとも並ばせなかったカルーゾが先頭のままフィニッシュ。

かつて、そのニバリのアシストとしても活躍していた男が、地元シチリアで強力なチームの助けを借りて見事な勝利を披露した。

第1ステージに続きイタリアナショナルチームが3名TOP10に入る。

基本的にカルーゾ以外は元ガスプロム・ルスヴェロ、つまりはプロチームレベルだというのに、これだけ圧倒的なチーム力を発揮しているのは凄い。モチベーションのなせるわざか。


ブラバンツペイル2022男子

北のクラシックの主要レースを主催しているフランダースクラシックが送る最終レース。もちろん舞台はフランドル地方で石畳も出てくるのだが、アップダウンは激しく例年であればアムステルゴールドレースの直前の水曜日に開催されている、「アルデンヌ・クラシック前哨戦」。

なお、昨年のフランドル世界選手権でも一部コースが使われており、そこでもお馴染みだったモスケストラートや教会前のS字カーブなどが登場している。

中盤から常に積極的に動き続けていたのがトム・ピドコックやレムコ・エヴェネプールなど。何度かアタックしては引き戻されていたが、最終的に残り53㎞でのエヴェネプールの加速によって、10名が抜け出す形となった。

トム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)
ベン・ターナー(イネオス・グレナディアーズ)
マグナス・シェフィールド(イネオス・グレナディアーズ)
レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)
ディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス)
ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
ヴィクトール・カンペナールツ(ロット・スーダル)
ブノワ・コヌフロワ(AG2Rシトロエン・チーム)
ワレン・バルギル(アルケア・サムシック)
ロバート・スタナード(アルペシン・フェニックス)

このうち、トゥーンスについては残り40㎞地点でパンクによって後退。

残った9名のうち、残り30㎞のホルストハイデの登りでカンペナールツとスタナードが脱落し、先頭は7名に。

3枚乗せているイネオスの圧倒的有利であり、ジュリアン・アラフィリップやレミ・カヴァニャらを擁するメイン集団のクイックステップ・アルファヴィニルは何とかしたいところだったが、最終周回に入るゲートの狭くなったところに自分たちのチームカーが無理やり入り込もうとして落車が発生。

アラフィリップがそこに巻き込まれ、肩のあたりを大きく痛める事態に。

やはり今年のクイックステップはどこかついていない。


メイン集団がそんなこんなで追走の力を失う中、そこから飛び出したのがマッテオ・トレンティン、ディラン・トゥーンス、アンドレアス・クロン、クサンドロ・ムーリッセ、マイケル・マシューズの実力者5名の小集団。

途中でカーブで落車したクロンや、残り10㎞のモスケストラートで脱落したトレンティンなどを失いつつも、1分差をつけて逃げていた先頭7名とのタイム差を着実に縮めていく。

先頭は先頭で、3人いるイネオスもなかなか支配的に牽引しようとせず、苛立ちを隠しきれないレムコ・エヴェネプール。残り10㎞を切ってマグナス・シェフィールドが単独で抜け出したときも、誰よりもエヴェネプールが全力で加速しこれを引き戻した。

が、それこそがイネオスの狙っていることであり、またエヴェネプールのある意味で弱点(ある意味で魅力)とも言える。

残り3.5㎞。再びシェフィールドが単独でアタックして抜け出したとき、今度もまずはエヴェネプールが追いかけるが、しかしさすがに疲労がたまったのか足を止める。

カウンターで飛び出すアムステルゴールドレース2位のブノワ・コヌフロワ。これにすぐさま飛びつくベン・ターナー。エヴェネプールは後続に追いかけろとジェスチャーするが、ピドコックはもちろん他のウェレンスもバルギルも動こうとはしない。

やがてコヌフロワも引き戻され、結局、協調の取れない追走集団はシェフィールドとの距離を稼がれてしまう。

最後は堂々たる独走勝利。

今年まだ20歳のネオプロが、早くも今期2勝目を飾った。

アムステルゴールドレースに続く、クラシック2連勝。

イネオス・グレナディアーズは2020年代に入り、着実に進化を遂げつつある。


ブラバンツペイル2022女子

男子レースに先駆けて行われた女子レースは、さすがに早い時間帯ということもありほとんどまともに観られていないが、残り30㎞を過ぎたあたりからデミ・フォレリング(SDワークス)とポーリナー・ロイヤッケルス(キャニオンスラム・レーシング)の2名が抜け出す。

これをチームDSMのジュリエット・ラブーが単独で追いかけていたがなかなかタイム差は縮まらず。

先頭2名はそのままラスト10㎞の勝負所モスケストラート(平均勾配9%)に突入するが、そこからデミ・フォレリングがアタック。

あとはひたすら独走状態。アムステルゴールドレースでは惜しくも2位で敗れた彼女が、強さを見せつけて最強SDワークスの一員としての誇りを証明した。


週末はいよいよ「北の地獄」パリ~ルーベ。

男子も女子も名勝負は必至のこのレースを楽しみにしていこう。

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