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ユンボ・ヴィスマが今年のツール、ジロ、クラシックの展望を発表

2022年1月11日火曜日、ユンボ・ヴィスマがチームプレゼンテーションを行った。

今やイネオス・グレナディアーズとUAEチーム・エミレーツと並び、ツール・ド・フランスの総合優勝候補として最大の注目を集めるこのチームの、クラシック、ジロ、そしてツール・ド・フランスの現時点における構想が語られた。


クリストフ・ラポルト、トッシュ・ファンデルサンド、ティシュ・ベノートがクラシックでファンアールトをサポートする

今年のユンボ・ヴィスマは、これまで課題であったクラシック班の強化に乗り出した。

昨年もグレッグ・ファンアーヴェルマートの相棒だったネイサン・ファンフーイドンクが加入し、実際にヘント~ウェヴェルヘムでは素晴らしい活躍を見せてファンアールトの勝利に貢献

今年はさらにそこに、昨年のパリ~ルーベ6位のクリストフ・ラポルト(元コフィディス)、ストラーデ・ビアンケ優勝者のティシュ・ベノート(元チームDSM)、昨年のドワースドール・フラーンデレン5位のトッシュ・ファンデルサンド(元ロット・スーダル)などが新たに加わる。

もちろん、本来であればファンアールトの最高の右腕たりうる存在であるマイク・テウニッセンも健在で、2022シーズンの「ファンアールト軍団」はこれまでにないほど強力な体制となるはずだ。

そのうえで、今年のシクロクロスシーズンでの、鬼気迫るほどのファンアールトの絶頂ぶり。今シーズン10戦中9勝と、全盛期のマチュー・ファンデルプールに匹敵するほどの強さを見せており、しかもロードレースに集中すべくあえて世界選手権には出場しないことを早々に決めるなど、やる気満々だ。

今年こそ、ファンアールトによる「クラシックの王様/女王様」の制覇を見られるのか?

なお、手前味噌だがYouTubeで「ワウト・ファンアールトで2021シーズンの全モニュメント制覇を目指す」という企画をやっていたりもしますので、もしよろしければご視聴ください。


トム・デュムランの3年ぶりの「エースとして出場するグランツール」はジロ・デ・イタリアで決まり?

2017年ジロ・デ・イタリア覇者にして2018年ツール・ド・フランス総合2位の男、かつて誰よりもクリス・フルームを倒しうる存在と目された男が、ユンボ・ヴィスマ加入後初の、そして実に3年ぶりの「エースとして走るグランツール」としてジロ・デ・イタリアを選んだ。

いや、「エースとして走る」かどうかはまだわからない。あくまでも、まだ出場することしか明言はしていない。何しろ昨年の冒頭でエースとして期待されて走ることへの疲労を語り、暫く休養を取ることを選んでいただけに、シーズン前半を慎重に過ごしながら最終的な決断をすることになるだろう。

しかし、イタリアへの愛を語る彼と、ツールではなくあえてジロ・デ・イタリアを選んだことに、彼の思いを読み取ることはできる。

どんな結果になるかはまだ分からないが、まずは悔いの残らない形で走り切ることを期待している。

しかし、かつてインタビューで「タイムトライアルはもっと長くなるべきだ。それがよりオープンなレースを作る」と語って個人TTが短めの「クライマー向け」設定にハマり気味だった当時のツール・ド・フランスを批判し、より長めの個人タイムトライアルを設定する傾向のあった当時のジロ・デ・イタリアを賞賛していたトム・デュムラン。

しかし今年のジロ・デ・イタリアはTTステージが2つ、総距離26.3㎞と、近年のジロ・デ・イタリアに比べると短め。

一方のツール・ド・フランスは総距離53㎞で平坦基調ということで、ここ数年の中では最もTTスペシャリスト向けの設定を行っている。

せっかく久方ぶりにグランツールにやる気を出したタイミングで、彼の「好み」じゃないグランツールを選ばざるを得なかったのはやや残念? まあ、さすがにツール・ド・フランスをエースで出るわけにはいかないからね・・・。

こちらもYouTubeで、2019年のジロ・デ・イタリアをトム・デュムランで総合優勝を目指すという企画をやっていたこともあるので、もしよろしければ。


ツール・ド・フランスはログリッチとヴィンゲゴーのWエース、そしてそれを支える精鋭たちは?

そして注目のツール・ド・フランスのメンバー。ここ2年ほど、シーズン冒頭でいきなりツールのフルメンバーを発表してきたユンボ・ヴィスマ。今年は8名中6名をこのタイミングで発表した。

まずは不動のエース、プリモシュ・ログリッチ。そして昨年、早期リタイアしたログリッチに代わり急遽エースを務め、そして見事総合2位を射止めた新鋭ヨナス・ヴィンゲゴー


このWエースを支えるメンバーとしてステフェン・クライスヴァイクセップ・クスローハン・デニスワウト・ファンアールトを発表。

山岳アシスト、平坦アシスト、スプリントとバランスの取れた体制となっている。

残り2名についてはクラシック後、5月に発表するとのこと。

もしもファンアールトのマイヨ・ヴェールを狙っているのであれば、もう1人くらいはアシストが欲しい。マイヨ・ジョーヌ経験のあるマイク・テウニッセンや、昨年のジロ・デ・イタリアで不意打ち気味のアタックからステージ勝利目前まで迫ったエドアルド・アッフィニなどが候補になりうるだろう。若手のダヴィド・デッカー、オラフ・クーイも、シーズン前半の活躍次第ではチャンスがある。

一方の山岳アシストとしては大ベテランのロベルト・ヘーシンクや、若手のトビアス・フォス、サム・オーメンなんかが候補になると思われる。

いずれにせよ、シーズン前半の各種レースにそのヒントがちりばめられていることになるだろうから、しっかりと注目しておきたい。


ブエルタ・ア・エスパーニャは? その他2022シーズンの注目ポイント

さて、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスとくれば、気になるのはブエルタ・ア・エスパーニャ。だが、今回のチームプレゼンテーションでは、その点については触れられることはなかった。

ただ、母国オランダでの開幕となる今年のブエルタをチームが重要視していないことはないだろう。初日は得意のチームタイムトライアルであり、いきなりマイヨ・ロホをチームが手に入れる可能性も十分にある。

最も期待したいのは、プリモシュ・ログリッチによる、ブエルタ・ア・エスパーニャ史上初となる驚異の「四連覇」達成。歴史に残る偉業を成し遂げられるか。

また、ブエルタと言えば若手の登竜門。すでに名前を挙げたデッカーとクーイの両スプリンターのほか、昨年のツール・ド・ラヴニール総合4位のハイス・レームライズや5日間マイヨ・ジョーヌを着用していたミック・ファンダイケなどがその頭角を現す瞬間を見られるかもしれない。

もちろん、何かしらの理由でログリッチがエースとして走らなかった場合には、セップ・クスやステフェン・クライスヴァイクなど、今やエースとして走るチャンスが少ない男たちが、希少な機会をものにしようと奮起するかもしれない。

その他、マリアンヌ・フォスを中心とした発足したばかりの女子チームについても、ジャージのスポンサーとしてかつてワールドツアーチームにもスポンサードしていたヴァカンソレイユが帰ってきたことなどが発表され、若手育成チームも含め、あらゆる分野でこのチームがオランダの、そして世界のサイクルロードレース界を牽引する存在となることを強調した。

今や、世界最大級の注目の集まる超名門チームとなったユンボ・ヴィスマ。

その2022シーズンの活躍に、さらなる期待を寄せていきたい。

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