ジロ・デ・イタリア2021 第19ステージ
今年のジロ・デ・イタリアも残り3ステージ。今日と明日は山岳最終決戦。
この第19ステージも、1級山岳と3級山岳を越えて最後は1級山岳山頂フィニッシュ――のはずだったのだが、最初の1級山岳が、この近郊で数日前に起きた悲惨なロープウェイ落下事故の影響でキャンセル。
全体的な難易度は下がったものの、それでもラストの急峻な1級山岳山頂フィニッシュは残っており、総合争いの舞台になる可能性は十分にあるステージとなった。
果たしてこのままベルナルが逃げ切るのか。それともライバルチームの反撃が見られるのか。
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逃げは6名。
ラリー・ワーバス(AG2Rシトロエン・チーム)
ニコラ・ヴェンキアルッティ(アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ジョヴァンニ・アレオッティ(ボーラ・ハンスグローエ)
マーク・クリスティアン(EOLOコメタ)
クエンティン・ヘルマンス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
アンドレア・パスクアロン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
山岳ステージにしては大人しい逃げ集団。タイム差も4分程度までしか開かず、逃げ切りはまず望めないような展開で元々の1級山岳モッタローネの代わりに用意された3級山岳アルプ・アゴーニャ(登坂距離12.8km、平均勾配2.9%)を先頭6名が越えていく。
登りは大したことないがむしろ下りの方が勾配が厳しく、メイン集団ではドゥクーニンク・クイックステップが6名全員集団先頭に出てきて一時集団が分裂する場面も。
とはいえそのあとも次の登りまでは平坦が続き、集団は再び1つに。先頭では1つ目のスプリントポイントを先頭通過したパスクアロンが、その後はチームメートのヘルマンスのために集団を牽引していく。
残り38㎞地点には3級山岳パッソ・デッラ・コルマ(登坂距離8.1km、平均勾配5.8%)。先頭からはヴェンキアルッティが脱落し、メイン集団からは山岳賞ジャージを確定させたジョフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン・チーム)が脱落する。
そして山頂直前でフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)が集団をハイ・ペースで牽引するが、それでも決定的な分断は起こらないまま、最後の1級山岳に向かっていく。
1級山岳アルプ・ディ・メーラ。登坂距離9.8km、平均勾配8.9%。十分に厳しい、破壊力のある登り山頂フィニッシュ。
登りの突入と同時に逃げ集団をすべて吸収したメイン集団では、この日積極的に動き続けていたドゥクーニンク・クイックステップが先頭に。
ジェームス・ノックス。昨年のジロで総合14位に入ったイギリスの若き才能。今回のジロの前半はそこまで目立たなかった彼が、ここに来てジョアン・アルメイダのための最後の発射台として機能する。
そして残り6.8㎞。
ノックスが終了すると同時にアルメイダが加速。
すでに9分近くタイム差が開いている総合8位の彼のアタックに、やはりイネオスは反応しない。
しかし残り6.4㎞でサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)がアタックすると、これに総合11位ジョージ・ベネット(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、総合2位ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)、総合4位アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)がついていく。
そしてその背後で総合首位エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)が動かない。動かない・・・動けない? どちらだ?
ジョナタン・カストロビエホとダニエル・マルティネスという2人のナイトに守られながら、ピンクを纏った王者はどこか辛そうな表情にも見える。
先行した集団から、残り5.4㎞でイェーツが単独でアタック。
ベルナルは動かない。・・・動けない?
ただ、残り4㎞を前にして、メイン集団からダニエル・マルティネスがベルナルを引き連れて加速。総合5位ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)と共にウラソフたちの集団に合流する。
集団の前に立ち、淡々と踏み続けるマルティネス。先頭を突き進むイェーツとのタイム差が広がらなくなった。本当に今大会、ベルナルは常にこのマルティネスに助けられ続けている。
残り2.5㎞。そんなマルティネスがいよいよ仕事終了。と、同時にベルナルが加速し、アルメイダとカルーゾ以外のライバルたちを一気に突き放す。
残り2.2㎞。カルーゾが突き放される。アルメイダもかなり苦しそうだが、なんとかベルナルの後輪にしがみ続けている。
残り1.5㎞。先頭のイェーツとこれを追うベルナル&アルメイダは18秒差。カルーゾは34秒差。
ベルナルは無理して先頭のイェーツを捕まえようとしない様子を見せる。明日の山岳に備え、足を貯めるのか?
残り500m。ベルナルを突き放し、アルメイダがさらなる加速。しかし、先頭のイェーツを捉えるまでには至らず。
4度目の挑戦。3回に渡り「忘れ物を取りに」来続けているサイモン・イェーツ。なかなか安定しない走りが続く中、この3週目はしっかりとそのポテンシャルを発揮して見せている。そして、3年ぶりのジロ勝利だ。
残り6㎞からのサイモン・イェーツのアタックと、これについていかなかったベルナル。
これは展開的にはとても熱いものではあったものの、蓋を開けてみればそのタイム差はわずか28秒。総合タイム差で3分以上離されている中で、サイモン・イェーツにとっても決して成功とは言い難い結果ではある。
これは結局、ベルナルの「計画通り」な走りだったのか。第17ステージではサイモン・イェーツの得意な激坂での加速に無理についていってしまったがゆえの失敗だったと述懐していたベルナルの、その言葉通りの反省の結果によるものなのか。
一方で、最後アルメイダに突き放されたベルナルがやはり本調子ではないという見方もできる。決して万全ではないエースを、できる限り傷口を小さくできるように最強の山岳アシストたちが護り切り、被害を最小限に抑えたという見方も。
すべては、第20ステージで明らかになるだろう。標高2,000mを超える山が2つ連続するこのステージは、高標高ステージを得意とするエガン・ベルナルにとってはチャンスとなるステージのはずで、そこでなお崩れるようであれば・・・。
最後に笑うのは一体、誰だ。
いよいよ、最後の山岳ステージが始まる。
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