焼肉宝島

学生時分にバイトをするまで、焼肉屋と言えば宝島だった。今話題の事件ではない。茨城を中心にチェーン展開していた所謂ファミリー焼肉店。家族で休日に行き、一人ひとりが焼肉とご飯、スープ、サラダなどがセットになったものを頼み、共通の焼肉ロースターで焼くスタイル。肉だけを頼む焼肉屋というよりもファミレスに近い感じ。それが私の持っていた焼肉感であった。

ライスがお代わり自由だった。学生時分には「サラダで一杯、肉一枚で一杯、大根おろしで一杯、タレで一杯」などと、とにかくシロメシを掻っ込んだ。肉は豚が主体。牛は高くて頼めず。薄いそれ、ボーっとしていると炭化してしまうから、焼き上がりを見つめる眼差しは常に真剣だった。その横で野菜は見事に炭と化していた。焼いた鶏肉の旨さを教えてくれたのも、宝島だった。

てっきり地元食品流通のガリバー・カスミ系列だと思っていた。実際はカスミのファミレス部門「ココスジャパン」の会社であるから、まぁ間違ってはいないのだが。そのココスジャパン自体をカスミがゼンショーホールディングスに売ったことで、ゼンショーの子会社になっていたようだ。あのすき家を展開するグループである。そういやある時期からメニューが変わった。以前のセットではなく、食べ放題の店へと業態が変化していた。

その宝島が2024年3月をもって全店閉店した。これには少なからずショックを受けてしまった。また一つ、青春の思い出が捨てられた気がした。まぁしょうがないけどね。ちなみに店を潰すことはなく、同じゼンショーグループの「熟成いちばん」とかいう焼肉屋に順次書き換えられていくとのことである。

その熟成いちばんのホームページを見てみた。そこにかつての学生の貧乏人の味方のメニューは無い。勿論本格的な焼肉屋とも違う。ランチでは定食と食べ放題、夜は食べ放題の店となっているようである。そう、もう宝島はないのだ。ありがとう宝島、さようなら宝島。

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