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鶏白湯おでん

コンビニでも、一年中おでんが食べられるようになって久しい。レジの横に置かれた間仕切り鍋の具を見ていると、ついつい二個三個と、買ってしまう。別に腹も減っていないのに。

おでんというと、味は決まって醤油ベースのお出汁の効いたアレというのが相場である。これがラーメンだと、味噌だ塩だ豚骨だカレーだと色々あるのだが、おでんは一向に、お出汁一本やり。濃いか薄いか黒いか、違いはそのくらいである。これは古いのではないか?何か新しいおでんができるのではないか?

そう考えるヒマ人は私だけではないらしい。もっと最前線で食と消費者と戦う、コンビニ商品開発室の面々。彼らは日夜おでんに没頭し、シン・おでんの開発に血道を上げている、はずである。

そして遂にシン・おでんとなるコンセプトのツユが誕生したとの情報を得た。開発したのは大手コンビニエンスチェーンのファミリーマート。あなたとコンビにファミリーマート、である。

早速開発した商品を試すべく、神田某店にてロケテストが行われたらしい。その模様を、その場にいたCA(コンビニ・アルバイト)の方から聞き取ることに、我々は成功した。

CA氏によれば、当日、間仕切り鍋にはたっぷりのツユが張られていたという。その色は、かの名湯・登別カルルスの如く白濁した、鶏白湯スープであったとのこと。なるほどこれは新しい。このスープが沁みた白滝やら大根やらは、さぞかし旨い事だろう。これはおでん史に残る一大事件だ。大発明だ。ヒット間違いなし。億万長者間違いなし。

だが、ひとつ問題が。

白濁したスープのおかげで、おでん種が全く見えないのだ。コンビニおでんの醍醐味である、自分で見てあれだこれだと選ぶあの作法が出来ないのである。ガーン。

てなわけで鶏白湯スープは、ほどなく消えていったとのことである。

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