満月の夜
「ことば」の本がここ数年のマイブーム。
初めて1人旅をした帰り道に寄った本屋で、たまたま目に入った本。
パラパラみてすぐに買うと決めたのはそれが初めてだった。
買ったのは
「365日の広告コピー」
いまでもとても好きで何回も読んでいる本。
この本に出会ってから「ことば」が好きになった。
「ことば」に関する本を読むようになって、買うようにもなった。
そして素敵な「ことば」たちが載っている本を見つけて読むたびに思うこと。
誰かに共有したい。
1冊の本を誰かと一緒に読んで、「ことば」について話したい。
どれが響いたのか、なんで響いたのか、どう解釈したのか…
そういう話をしてみたいとずっと思っていた。
何人かの友達に、本を貸してみたりしたけれど、私が思うような深くまで話はできず…
でも自分がやりたいと思っていたことは、ひょんなことからできたりするみたい。
これは他の人と初めて、ことばの本の話を読んだ話。
「オールアラウンドユー」木下龍也
誰かと思いを共有したい!が叶った本。
この本。歌集。
木下龍也さんの第3歌集。123首が載っている。
え?歌集?
歌集読むなんて、よっぽど文学を感じる心でもあるのではないかと思う人もいるかもしれない。
でも学生の頃は、国語の授業が嫌いで、特に短歌や詩といったものが嫌だったし、大人になってからも、そんな本を読んだことなんてない。
短歌とかに全く興味のない私でも読めるくらい、身近なことが題材になっていて初心者でも読みやすいのがこの本の魅力の一つ。
本を開いてすぐ
たった31音のことばたちに、心がとても揺さぶられる。
31音のことばに深く共感したり、
ことばの奥にある情景に思いをはせたり、
そういう世界の見方があるのかとはっとさせられたり。
どのことばたちも、軽いのに重い。
読む前と後では、世界の感じ方が大きく変わっている本。
そんな本がきっかけで、素敵な時間を過ごすことができた。
私がずっとしたかったことができた夜
きっかけは、私がたまたま気に入った短歌が載ったページをインスタのストーリーにあげたこと。
その人は、この1首が響いたんだって。
私のストーリーをスクショしていたほど笑
でも、「これなに?」みたいにすぐDMが来たわけではなかった笑
後日会った時に、「ストーリーにあげてたあれは何なの?」って聞かれて
「短歌です。本の1ページです。」と。
よっぽどその1首が響いたんだろうな、その後即買いしてた笑
私としては、私が好きな本に興味をもってくれるだけで十分に嬉しかったのに、さらにすぐ買ってくれたの。
それがさらに嬉しかった。
でもその人と、本と、私の、" 嬉しい "はここで終わらなかった。
本を買ってくれただけでなく、一緒に本を読むことができた。
気づいたら始まっていた、その時間
月明りが全てを静かに照らす満月の夜。
私は1回その本は読んでいるから、その人が読んでいる横にいるだけ。
その人が
「この短歌が好き」
「この短歌のここに刺さる」
「この短歌の意味は?」
そう言っている横で、
「私もそう思う」
「私はこれが好きだと思った」
「私はこういう意味でとったんだけど」
そう言うだけ。
ただそれだけ。
ただそれだけ。
ただそれだけだけど、
ひとりで読むよりも何倍も本を味わえた。
ひとりだと、「おー」や「ふーん」と思って次々と読みがちだけど、
誰かと読むことでいい意味で自分のペースでは進まない。
相手が味わう時間を待って、その後感想を共有して…もう1回味わってみて…
ひとりだと1首20秒くらいのところを何分もかけて読む
違う生き方をしてきた人間だからこそ、1首とっても感じ取り方や響き方が全然違う。
それが面白い。
「どう解釈した?」って聞かれることで
自分の感じ取り方を伝えるから、その1首が自分の中で深くまで落とし込まれる。
ひとりだとなんとなくで読んでいた首が意味を持って私の中にゆっくり入ってくる
ひとりでは「???」と思って読み飛ばしてしまった首も、
改めてゆっくり読んで考える機会ができるから、最初は分からなかった意味が分かるようになった。
ことばの咀嚼ができる…。
でも、ふたりで一緒に考えてみて、結局ふたりで「???」ってなってしまったりもした笑
それもいいよね。
いつかわかる時がくるまで寝かせておこう。
1ページに31音しか書いていないたった144ページの本。
その半分を読むだけで気づけば3時間以上もかかっていた。
私としては、私が好きな本に興味をもってくれて、さらにすぐ買ってくれたという嬉しさの上にさらに、
誰かと思いを共有しながら読めるという嬉しさ が加わり、
相手がこの本を気に入ってくれたという嬉しさ が加わり、
この時間で新しい発見があったと言ってくれた嬉しさ が加わり、
何をとっても素敵な時間だった。
ひとりでは絶対に感じれなかったことをたくさん感じれた。
嬉しいし、幸せだし、楽しいし、刺激的だし、でも穏やかで、澄んでいて、やさしくて、あったかくて
ぴったりとこの気持ちを表す単語を見つけることはできない
映画を見た後の穏やかな感動ような、どこかを走り切った疾走感のような、何年振りかにある場所に帰った懐かしさのような…
今までに経験したことのない種類の
「心が満たされる」
という時間を過ごした
こんなにも、「誰か」と読む時間が素敵な時間だったなんて、思いもしなかった。
私の「好き」を同じように「好き」になってくれて、私以上にそれを大事にしてくれる。感動してくれる。
そんな人と過ごしたこの夜を、この時間を私はきっと忘れない。
初めて、誰かと一緒に本を読んだこの時間を。
思いを共有した時間を。
そしてこの本が、私の " 特別 " になった瞬間を。
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