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1986年の男の子ものがたり(2009年記、門田博光追悼として再掲)

西原理恵子原作、映画『女の子ものがたり』。大阪、なんばパークス・シネマにて。西原氏の、小学生時代から高校卒業、東京に向かうまでの自伝を映画化。

深津絵里をここまでしょぼくれた感じで撮った映画は初めてじゃないかな? きみこ役の波瑠という女の子がよかった。

さて、なんばパークスとは、大阪球場跡にできたショッピングビル。エントランスの床、当時マウンドとホームベースがあった場所に、ご丁寧にもそれぞれの形を模したデザインがされている。

ということは、8階と6階にあるなんばパークスシネマは、だいたい外野席の上空となる。そうか。少年時代に、ビールの匂いとタバコの煙に包まれた大阪球場で観た門田博光のホームラン。あの上空で、いまワタシは映画を観てるのかと。

映画を観終わったら難波はもう22時。中央区(むかしの南区)ではなく、こちら側、浪速区側の難波はこの時間、もう静かで寂しい町並み。ふらふらと歩き出す。

このあたりは予備校時代に通った街。大阪府立体育館裏にあったその予備校=大阪予備校はもう影も形もなくなっていた。

1986年の春。ワタシより1つ下のライオンズの新人・清原和博が、大阪球場で球宴初出場初本塁打を打つ数ヶ月前。某国立大学に落ちた報告をしに、その予備校に行った。

同じ時代、同じ世代、同じ場所。しかし決定的なこの格差!

特に落ち込んでいたわけではない。どちらかといえば東京で暮らさなければならないことへの緊張感のほうが勝っていたその日。

それは、映画の中のラストシーン、東京に向かうためにバスに乗るときの主人公と同じ気持ちだったのだろう。

で、「不合格報告」を終えたあとに行った御堂筋沿いのラーメン屋に23年ぶりに行き、あの頃は大盛りを一気にたいらげることができた「焼きめし」の並を時間をかけて食べ、宿泊先の天王寺までフラフラと歩く。

ランダム・プレイのmp3オーディオから流れてきたアースシェイカー《ラジオ・マジック》は、当時を思い起こすのにとてもピッタリの選曲だ。

東大阪に住んでいた少年時代、世界の果て、世界の中心は難波だった。あの頃の難波が消えていく。そして42歳のオッサンは18歳のころの自分を思い出しながら、アースシェイカーを聴きながら、フラフラと歩いていく。

アースシェイカーに包まれて、星空を見上げたら、門田博光のホームランが――見えた!

さようなら難波、さようなら大阪。さようなら南海ホークス。俺、東京に行くんやで――スージー鈴木くんの男の子ものがたり。




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