マガジンのカバー画像

分解する物語

15
自然数での素因数分解の一意性の仕組みを、「可換な単位的半群」というモデルの中で考察する物語です。
運営しているクリエイター

記事一覧

【分解する物語(11)】終わりに

この『分解する物語』では可換な単位的半群という抽象的なモデルの中で、自然数の素因数分解を…

3

【分解する物語(10)】最小公倍数

今回は第9話で保留した最大公約数の2つの定義の同値性を確認しよう。そのためには最小公倍数…

5

【分解する物語(補足2)】ノルム

今回は話の位置付けとしては、『【分解する物語(7)】素元』 の補完に当たる。そこでは既約…

6

【分解する物語(9)】最大公約数

自然数の素因数分解が一意的であることを証明しよう。前回の考察から、一意分解条件を示すには…

8

【分解する物語(8)】一意分解条件

簡約条件を満たす可換な単位的半群において、素元は既約元であった。しかし、一般には素元でな…

6

【分解する物語(7)】素元

まずここまでのあらすじを見直そう。 我々は「自然数の素因数分解」をお手本に考察していった…

7

【分解する物語(補足1)】既約元分解可能だが約鎖条件を満たさない例

可換な単位的半群Rに約鎖条件を考えたことで既約元分解可能となることを、第6回で考察した。そこではその逆が成り立つかどうか筆者の中ではまだ完成していなかった。今回反例を一つ見つけたと思われるので補足という位置づけで考察を追加しよう(注意1)。なお物語の向かうところには影響なくて、単に論理的関心である。 以下の命題は必ずしも成り立たない:  簡約条件を満たす可換な単位的半群Rで、  (Ⅱ’)既約元分解可能 ⇒ (Ⅱ)約鎖条件 その反例を示そう。 ※注意1:参考にしたのはW

【分解する物語(6)】約鎖条件

Rは簡約条件を満たす、可換な単位的半群としよう。Rの元を分解していったときに、自然数にお…

7

【分解する物語(5)】既約元

自然数を積の形に分解し続けていくと、これ以上分解できない究極的な自然数に行きつく。その要…

4

【分解する物語(4)】同伴

整数を分解する際、±1による分解と、符号のみ異なる2つの整数による分解に相当する概念を考…

8

【分解する物語(3)】簡約条件

ここで自然数の素因数分解を実行する1つの機械的な手続きを見直し、手続きを可能にする条件を…

5

【分解する物語(2)】整除関係

分解を語る上で基本的になってくる約数や倍数の言葉を見直し一般の単位的半群においても同様な…

2

分解する物語(1)

いつもは数学概念の単発的な記事ですが、何かをテーマにして数学の考察ものを作ってみたいなと…

3

整数を作る物語(2)

※前回の記事『整数を作る物語』の続きになります。 我々の知っている整数の世界には加法、減法、乗法が自由でできて、どんな2つの整数a,bを持ってきても、  加法:組(a,b)を和と呼ばれるa+bに対応させる写像  減法:組(a,b)を差と呼ばれるaーbに対応させる写像  乗法:組(a,b)を積と呼ばれるa・bに対応させる写像 が定義されている。 積a・bは  a×b や単に  ab と書くこともある。 前回は整数の世界を自然数の集合Nから構成し、そこに加法・減法について定