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女子プロレス観戦記 #05 on 2022.07.10

Ⅰ:参議院選挙の日、投票ウィって女子プロ観戦するんだ

2022年7月10日。世間では日本の国政を占う参議院選挙であり、イスラム教的にはイード・アル・アドハー(犠牲祭)の始まりの日であり、日本の女子プロレス界的にはスターダム・東京女子プロレスに所属しない選手たちによる夏の祭典がプロレスの聖地「後楽園ホール」で開催された日である。そしてこの2022年7月10日は2年半にも及ぶコロナ禍での声援規制が後楽園ホールにおいて女子団体初で条件付きではあるが解除された日でもあり、2022年女子プロレスのベストバウト試合が生まれた日でもある。

センダイガールズプロレスリングのリングではお馴染みのマルニ食品のブータンが見切れ。

SENJO Chronicle」と名付けられたこの大会。いつの間にそんな大会名になったの?と大会開始前のムーチャス入江リングアナウンサーの案内で知ったのだけれども、大会ポスターにもその記述はないし、そういうのはちゃんと事前に企画した方が観客も盛り上がりやすいのに!
クロニクルとはねじまき鳥で有名になったクロニクルだけれども、意味としたは年代史とか物語とか、そういうことなんだけれども、やはり突拍子もないなあと思うんですよね。せめて「SENJO Chronicle」の後にアーリーサマーとか2022とか#1とかそういう時間の句読点とつけないと意味がさっぱりわかんないよなーと一夜開けた今でも思うのです。せっかく、ここ最近の仙女のビジュアル戦略・SNS戦略が活性化してきているのにもったいないよ!と思う。
クロニクルは年代史という点ではなく線を意味するので、一年前のリベンジ色が強いのだからここは新たにスタートするとかそういう言葉を足せばいいのに!女子プロレス界隈でこういうのがちゃんとしているのが少なすぎる。そういう点では東京女子プロレスWAVEはちゃんと規則性があって素晴らしい。スターダムはネーミングセンスが古いっていうかダサい。今の仙女のデザインをされてるのは新入社員の田中さん?だと思うのだけれども、デザインの思想は別にして明らかにスターダムよりは上なので、もう少し、年単位と年周期でアイデアを詰めた方が、より世間に届きやすくなるのになー!と思う。

Ⅱ:決め手は鈴季すず選手の参戦だった

仙女にとって今回の後楽園ホール大会がちょうど1年前の同ホールでの集客能力の低下が問題となり、この1年を通して通ブラッシュアップさせた総決算になるというのは分かりきったことだった。昨年のメイン後の橋本千紘選手の涙のマイクの詳細はこちら

なので、今年はどうしようかなあとぼんやりと思っていた所、6月17日の新木場大会で鈴季すず選手による試合乱入でDASH・チサコ選手との因縁が生まれ、ハードコアマッチが後楽園ホール大会で組まれるのを知って急いでチケットを抑えたわけです。どうにか南側の最前列を入手。最前でこの二人のハードコアが観たい!というのが今回の動機だったわけです。

ここで明言しておきたいと思うのは、僕にとって仙女とはもはや里村明衣子選手ではないということ。いや、里村選手は大好きですよ。等身大のタペストリーを貼るぐらい好きですよ。とはいえ、今、この団体を動かしているのは橋本千紘選手とDASH・チサコ選手だし、この二人がリングの上に立っているのが観たくって仙女の大会を観に行く感じです。
鈴季すず選手の凄さというか引力はこちらのnoteで書いたので是非ともご一読いただきたいのですが、まあ、鈴季すず選手とDASH・チサコ選手のシングル、ルールはハードコア。これは絶対に観た方がいい試合だと思うんですね。まあ、その決定に狂いはなかったのですが。
今回のセミがハードコアならメインはセンダイガールズワールドチャンピオン選手権試合。現チャンピオンの橋本千紘選手と朱崇花選手(フリー)というアマレス出身者同士の対決。もう絶対に面白い試合になることは明白で、しかも、我らが岡優里佳選手が稲葉ともか選手(JTO所属)の元へ流出したセンダイガールズジュニアチャンピオンのベルト戦という超豪華カード。もう、盆と正月と誕生日がまとめてやってきた、そんな1日になる予定でした!

Ⅲ:夏の仙女の後楽園は何かある。

左眼窩内壁骨折により欠場となった岡優里佳選手による挨拶。元気そうで何より。

僕的に決して外すことのできないカードであった岡優里佳VS稲葉ともか選手のベルト戦。しかし、チケット購入後に岡優里佳選手が怪我で本大会を欠場とのアナウンス!急遽、白羽の矢が立ったのがNATSUMI選手(超花火プロレス所属)。タイトルマッチではなく一般のシングル戦に変更。今回参戦で初めて観る選手。まあ、選手権試合は残念だけど初めてみる選手だからまあいっか!と思ったのも束の間、大会前日になって発熱症状のため欠場が決定。えー!夏の仙女の後楽園は何かあるなー!と思ったのでした。
最終的にこの稲葉ともか選手の対戦カードが確定したのは僕が後楽園に向かう電車に乗る前。知らないままでも良かったのですが、新対戦選手が稲葉選手と同じくJTOの神姫楽ミサ選手。以前、SEAdLINNNGで観て以来、かなり注目の選手だったので結果オーライ!なのでした。
それと今大会はマスク着用での声援が解禁。ムーチャス入江リングアナの「皆様のご協力により今大会は声出しOKとなりました」というアナウンスで場内が一気に弾ける。みんな、みんな、この日のために我慢してきたんだ。本当に割れんばかりの拍手でなんだか涙汲んでしまう僕。明けない夜はないし、止まない雨はないし、君が笑えば世界が微笑むという感じ。どうにかここまで辿り着いた。今は許された範囲の中で十二分に楽しむべき時間なのだ。

Ⅳ:第1試合から第4試合までの感想戦

当日のカードは以下の通り。

二冠チャンピオンの稲葉選手相手にどう爪痕を残すか?要注目の神姫楽ミサ選手初仙女戦
大好きな二人のシングル。僕的目玉カードです!
世羅りさ選手の試合はお初!楽しみな一戦!
赫覚醒を観るのは初めて!そして週プロ表紙女こと安納サオリ選手もお初!
念願のハードコアマッチ!超ド級のセミ!
つべこべ言わんと誰が一番強いんか決めたらええんやなメイン!

まずは第一試合。今回の後楽園ホール大会はマスク着用での声出し応援が解禁。ドカーン!と盛り上がる予定だったのですが・・・。

かわいい of かわいい の神姫楽ミサ選手。なかなかハードな選手です!
二冠チャンピオンの稲葉ともか選手

久しぶりの声出しOKにも関わらず、この二人の試合、玄人好みすぎる内容。コロナ禍時代のプロレスというか、みんなグッと集中して観たいと思わせる試合展開で、不必要な応援をしたくない、ただ黙って一部始終を見守りたい、そういう試合でした。まあ、声援の仕方を忘れているというのもあるのですが、とにかくいい試合。こういう試合を他団体の第一試合でみせる姿勢、好きだわ〜。
稲葉ともか選手、じゃじゃ馬トーナメントに出ていなかったのである意味ノーマークの選手で、初めて観たのが今年1月の仙女の新宿FACEという感じ。それからスターダムのNEW BLOOD1で3月に観戦したぐらい。あれから4ヶ月ぐらいぶりだけれども、こんなにも成長するのか!という衝撃がすごい。もうチャンピオンとしての威厳というか風格が出てきてる。ベルトって本当に選手を育てるんだなあと感動するし、そのベルトの王者として最後の試合に挑んでいる感じがすごい出てた。
後輩というのもあるかも知れないけど、ちゃんと神姫楽ミサ選手の技を全部受ける。そして神姫楽ミサ選手の手札がなくなる寸前ぐらいから、ちゃんとお返しをする感じ。横綱感というかなんというか。

王者としての風格が出てきた稲葉選手。マーベラスで観てみたいとフと思った。

神楽坂ミサ選手も出せる技は全部出し切るという新人?らしい感じもあったし、僕が観たことのあるSEAdLINNNG初参戦の時とは違う一面も観ることができたし、とても気持ちのこもったいい試合でした。JTOで鍛えて他団体で磨かれるダイヤモンドの原石という感じ。同世代の選手より2006年デビュー組クラスの選手と試合してメキメキと腕を上げていって欲しい、そんな選手でもあります。

中島安里紗選手から中森華子を彷彿とさせると言わしめた神姫楽ミサ選手。なんかわかる。

第二試合はプロレスの酸いも甘いも味わい尽くしてる旧姓・広田さくら選手対ライディーン鋼選手(PURE-J所属)のシングル。このカードも楽しみでした。最近、PURE-Jの亀アリーナマッチに行った時、ライディーン鋼選手のファン捌きが最高だったので、これは爆発ありうるんじゃないか?と思ったら大正解。最高に面白い試合(作品)でした。
まず、特筆すべきは旧姓・広田さくら選手のオープニングマイク(オープンマイクな感じ)。多分、第一試合で声援があまり出ていないことに気づいた旧姓・広田さくら選手が機転を効かせて声出しの練習からスタート。これで今まで出しずらかった声がみんな出るようになる。テクニックだわ。テクニシャン。手練れって感じ。

旧姓・広田さくら選手の入場曲の歌唱はご本人!艶やかなアーバンヴォイス。必聴!

試合内容は息のあった?手の合う感じ?の試合で、終始、観客の笑い声が絶えない。いいんだ。大きな声で笑ってもいいんだという安心感。多幸感。仙女がこのカードをこの試合順で組んだ意義は大きいと思う。ライディーン鋼選手は完全に旧姓・広田さくら選手を解っている。観ていて安心できるというか隙がない映画を観ているよう。オレ、ライディーン鋼選手、やっぱ好きだわ〜。この試合で魅力がわかった感じ。沼。ライディーン沼。

ライディーン鋼選手の器のデカさと深さを実感。ひょっとしたらP-Jで一番好きかも?

第三試合は6人タッグマッチ。なかなか豪華な組み合わせ。ここで世羅りさ選手と水波綾選手を投入するのは思い切ってるなー!という感じ。
世羅りさ選手以外はみんな他団体でも良く観る選手。特に優宇選手と笹村あやめ選手はここ1ヶ月で相当観てる。しかも直近の試合はWAVEさんのCATCH THE WAVE なのでガチめのシングルバウトを体験した後だけに、この組み合わせがまた違う表情を観せてくれる。

息子の嫁にしたい女子プロレスラーNo. 1と評判の笹村あやめ選手。ササムー?
みんな大好き優宇選手。ツヨカワ女子とは優宇選手のことやで!

今回のカードの意味は多分、Aoi選手と世羅りさ選手の査定だろうなあと思う。こういう組み合わせでどこまでやれるのか?というを観られているような気がする。

世羅りさ選手のカッコよさ。全女だったらスター決定!松永兄弟の好きそうな感じだよ!
少し緊張気味だった気がするAoi選手。もっともっと揉まれてほしい。強くなるぜー、この人!
オレたちの兄貴こと水波綾選手。この試合のキーパーソンの一人。
若手コミカル系レスラーの筆頭という感じだけれども愛海選手の受け身とか最高なんやで!

プロレスの大会というのは、全てがシングルマッチというのはやはり稀で、タッグマッチはもちろん、こういう6人タッグマッチというのも組まれる。プロレスの醍醐味というのはシングルマッチにあると思うけれども、大会・興行の醍醐味は6人タッグマッチだと思う。
愛美選手を抜かした今回の5人は、世羅りさ選手とAoi選手以外は仙女の常連メンバー。団体からの信頼も厚い。厚いからこそレギュラー参戦できているわけだけれども、こういう個性の強いメンバーの中でどれだけインパクトを残せるか?というのが常に求められているのだと思う。
そういう意味で世羅りさ選手とAoi選手は少しだけ弱かったような気がする。今、一番お客様を呼べる選手が世羅りさ選手とセミで出場する鈴季すず選手、つまりプロミネンス勢だと思うのだけれども、こういう6人タッグでは自分を生かしきれていないような感じがした。この6人タッグで誰と因縁を作って次に繋げるか?が生命線のような気がするけれども、そういう伏線は作れていなかったように思える。それはAoi選手も同じで、ここは愛海選手とバチバチにやり合うとか、水波綾選手にコテンパンにやられるとか、そういう機転が効いても良かったのではないか?そんな風に思ってしまった。
とはいえ、世羅りさ選手と優宇選手のやりとりは面白かったし、何よりも愛海選手の試合巧者ぶりが素晴らしかった。場の馴染み方とかベテランな感じ。正直なことをいうと、今、仙女は愛海選手を活かしきれていないように思っていて、今後、仙女が後楽園ホールをフルハウスで埋めるためには愛海選手がどれだけ他団体に参戦してどれだけお客さんを連れてこれるかにかかっていると思う。愛海選手は仙女の宝だよ。マジで。

優宇選手を担ごうとする世羅りさ選手。世羅りさ選手と仙女選手のシングルが観たい!

第四試合はタッグマッチ。実力者しかいないリング。これ、メイン級のタッグマッチでした。仙女の岩田美香選手と高瀬みゆき選手のタッグチームである「赫覚醒(レッドエナジー)」の試合を観るのは初めて。対戦相手は大好きな松本浩代選手とお初の安納サオリ選手。安納サオリ選手はアイスリボンICE×∞王座(アイ・シー・イー・クロス・インフィニティおうざ)ベルトを獲って週刊プロレスの表紙を飾ったばかり。今、ノリにノっている選手の一人。

安納サオリ選手の破壊力!誰もがカワイイと唸らせる磁力がすごい!
このかわいく撮れた松本浩代選手を観て!
こういう笑顔の高瀬みゆき選手も超かわいい!
岩田美香選手も、うん、かわいいよー!HIYOKOのケムドリラー使ってみて!

仙女には素晴らしいタッグチームが存在していて、一つは現在仙女のタッグ王者である橋本千紘選手と優宇選手の「チーム200kg」。もう一つはDASH・チサコ選手と松本浩代選手の「令和アルテマパワーズ」。つまりは仙女を代表する二人がそれぞれフリーと他団体の選手とタッグを組み、タッグ戦線を盛り上げているのだけれども、今回、赫覚醒(レッドエナジー)を観て、このタッグも入れて三つ巴だな!タッグ三国志!と思った次第。ていうか、全女子プロレス業界のタッグチームで一番好きになりました!
もうねえ、バランスが最高なんですよ。ツンデレ・デレデレなんですよ。岩田選手がツンデレで高瀬選手がデレデレ。もう観ていて最高に面白い。岩田選手、いいパートナーを見つけたな〜という感じ。
安納サオリ選手の試合を初めて観戦したけれども、まあ、とにかくセンターが似合う感じの選手でした。この人を中心に世界が回ってるオーラがある。今回の大会に参加した選手ってそれぞれに泥臭さ、まあ、ブルースがあるんですけど、安納選手はジャズシンガー的な憂いがあるなあと。シングルを観たい選手。まだまだ未知な選手。
松本浩代選手。松本選手って非常に器用な選手だよなあと思う。女子プロレスラーというよりも男子レスラー的な安定感がすごいある。アントニオ猪木と組んだ東洋の荒鷲感というか。松本選手も売れっ子。ここ数ヶ月で毎回観ている感。シングル戦線での活躍もすごい観たい。どこで観れるんだ?Σ(゚д゚lll)

岩田選手を投げようとする安納選手を投げようとする松本選手。

仙女大好きおじさんの僕なのですが、実は、岩田美香選手の試合っていつも「難しいなあ」と思って観ていました。どこをどう観ればいいのか、岩田選手のチャームポイントがなかなか分からなかったのです。それが今回のタッグマッチを観て、岩田選手の良いところ(だと思う)がとても良く出ていたなあと思いました。そこを引き出しているのはタッグパートナーの高瀬みゆき選手で、岩田美香選手の魅力がとても良く出てる。このタッグの試合はメインでも感情移入できる感じに昇華!先日(6月16日)、タッグ選手権で負けてしまったので、まだだいぶ先になるかもなのですが、ベルトを巻く姿が観たい!ベルト戦観たい!年内あるか?という感じです!

Ⅴ:セミ。DASHチサコ選手はやっぱり鬼でした

リングに次々と上げられるラダー、脚立。後楽園の空気が変わる。

待ちに待った第五試合セミファイナル。若手で最も実力があって、最も客の呼べるプロレスラー・鈴季すず選手VSセンダイガールズプロレスリングの最後の砦であり里村仙女のナンバー2・DASH・チサコ選手のハードコアマッチ。二人とも筋金入りのハードコアガールズ。
実際、場外での反則ギリギリの椅子攻撃や折り畳みテーブルでの攻撃以外でルールとしてのハードコアマッチを観るのが初めてな僕なので最初から最後まで何が起こるか、そして果たして僕はハードコアマッチが好きになるのか?目が離せない試合になりました。

緊張した面持ちの鈴季すず選手。こういう張り詰めた闘志が出せるのも魅力。
試合開始早々からフルスロットルの鬼。仙台の鬼ことDASH・チサコ選手

試合早々から場外での乱闘になるこのマッチメイク。DASH・チサコ選手が飛ばしまくりの展開。キャリア的にも実力的にも差がある二人の明暗がハッキリと分かれる試合内容に。
とはいえ、二人ともハードコアヘッズというか、この試合形式に誇りを持っていて、そして二人ともハードコアを愛しているのが非常によく伝わってくる。そして女子プロレスラーにとってハードコアマッチがどういう意味を持つものか、そこに因縁とか勝負論とかそうものを度外視したもう一つのプロレスがあるように思える。それは戦っている二人以外にも感じることで、試合中のリングサイドに集まってくるセコンドの選手の数が多いことからも、この試合の持つ凄まじさを感じることができる。一言でいうと「万事が大事(おおごと)」なのである。

鈴季すず選手とえばコーナーでのヘッドバット。この日も観れたのでプロレス中なのだ。
バケツいっぱいの鈴をリングで倒れているチサコ選手に散布してからの、
ニードロップ!これ二人とも痛いだろうよ!これが噂のハードコアマッチか!

有名な話だけれども、仙女のボスの里村明衣子選手はハードコアマッチにどちらかというと否定的らしい。そのボスが現在WWEのNXT UKに所属してイギリス在住で不在の中、実質ボス的な位置にいるDASH・チサコ選手には好き放題やってほしいと思っている僕。その一つがハードコアマッチ。仙女でハードコアマッチをやる意味。やはりそれも「強さの証明」であるのだなあと二人の攻防を最前列で眺めながら思う。

とうとうターブルの上に寝かされてしまった鈴季すず選手。と言うことはもちろん?
DASH・チサコ選手が空から落ちてくるぞお!!

この試合。DASH・チサコ選手による鈴季すず選手に対する査定マッチだったと思う。よくチサコ選手が生意気な若手選手に向かって言い放つ言葉に「じゃあいいよ、やってやるよ」がある。今回は「じゃあいいよ、やってやるよ、ハードコア」なのですが、それは「この私を引っ張り出すと言うことはどういうことか分かってんな?」ということなのです。
もしもこれで不甲斐ない試合だったら「次はない」ということだし、積み重ねることのできない「一発勝負」の査定なのです。
試合結果はDASH・チサコ選手の圧勝。貫禄の差。とはいえ、そもそもDASH・チサコ選手が大事にしているハードコアマッチをひょいひょいとやる訳がなく、鈴季すず選手を認めた上での試合なのは間違いないわけで、これで鈴季すず選手はハードコアクィーンのDASH・チサコ選手に認められたハードコアマッチレスラーになったということだと思う。
鈴季すず選手が女子プロレスラーとして今後ハードコアマッチを行なっていう時、DASH・チサコ選手を通過したのと、通過していないとでは説得力が違うと思う。結局、その場を仙女が、DASH・チサコ選手が提供した。それはやはり里村明衣子選手が大事にしている「女子プロレスラーの仁義」が受け継がれているのだなあと思う。

印象的だったプロミネンス選手の介抱シーン。この日プロミネンスを背負ったのはすず選手だ。

会場前、伝説の後楽園ホールの非常階段で、往年の仙女ファンの方々が、結構なボリュームでプロミネンス批判をしていて、それは先の新木場での鈴季すず選手の乱入による技が危なかったと。プロミネンスは何をやり出すのかわからないから危険だ、嫌いだと。

後楽園ホールは非常階段での待機こそ後楽園ホール!

確かにあの日のコーナーからのジャーマンは危険だった。後頭部を机のヘリの角で擦る感じ。しかしあれは鈴季すず選手のミスだったと思う。乱入直前にウォームアップをしていたとは思えないし、試合中に身体が温まっていたわけではないし、あれは事故だと思う。リングの上で事故などあってはならないのはもちろんだけれども、乱入後のマイクで「ジャーマン投げるんだったら机ひとつぐらい割れよ、ハードコアだぞ、おめえ?」と言われて一瞬反省する顔になるし、そもそもDASH・チサコ選手は「危ねえことしてんじゃねえ」というよりも「ハードコアユニット名乗るんだったらちゃんとやれ!」ということを言っている。
まあ、何が言いたいかというと、DASH・チサコ選手が認めていない選手など仙女のリングに上がれるはずはないし、公式のYOUTUBEにてこの試合のダイジェストではツイッターで上がっていた問題のシーンはカットされているので、これは鈴季すず選手に批判が集まらないようにした配慮だと思うので、僕たち仙女ファンはDASH・チサコ選手が牽引する新しい世界・新しい仙女を楽しもうぜ!ということなのです!
近々(7/23)、スターダムのリングでプロミネンスの鈴季すず選手&世羅りさ選手VSジュリア選手&桜井まいでのハードコアマッチが行われる予定。僕はジュリア選手のファンだけれどもジュリア選手の口から「ハードコアやってやるよ」はさすがにハードコアを舐めすぎだろ?と思う。ハードコアクィーンのお墨付きのついた本物のハードコアファイターに、格の違いを見せつけて欲しい。なんかそういう意図もあるんじゃないかなあと思えるエモエモな試合でした!

Ⅵ:2022年のベストマッチ、令和女子プロレスの金字塔

仙女とは何か?を問う試合になった

本日のメインイベント第六試合は王者・橋本千紘選手VS朱崇花選手のタイトルマッチ。
この試合、今まで僕が会場での生観戦や動画で観てきた全ての試合の中で、ナンバーワンの試合でした。
この試合に関する因縁。つまり試合に向けての感情的な煽りはほとんどなく、あるとすれば5年前に一度だけWAVEにてシングル戦を行なって引き分けぐらい。それと両方選手ともアマレス出身というルーツに関するあれこれ。
なので、この試合はシンプルに「どっちが強いか?」だけが問われるという珠玉のマッチメイク。シンプルに言って最高なのです。
開始早々から漂うピリピリ感。真剣での勝負といった雰囲気。全体的にはアマレス実力者同士のレスリングが一つの山場であり、朱崇花選手のちょっとだけ鬼畜な場外での投げ技、橋本千紘選手の世界最高峰のバックドロップの連続攻撃がプロレス的な醍醐味であり、最終的にはプロレスが格闘技の最高峰であることを教えてくれる、強さとは何かを教えてくれる、そういう試合だった。

今大会で最も危険なシーンだった。場外でのパワーボムで橋本選手が後頭部を強打。

今回の大会で一番危険だったシーンについて。朱崇花選手が場外エプロンサイドからのパワーボムで橋本選手を場外に叩き落とすシーンがあった。僕は最前の上記の写真の位置で見ていたのだけれども、朱崇花選手のバネのあるスピード感で後頭部をマット外の床で打ち付けてしまう。グシャッ!というとんでもない音がして、流石にセコンドの選手が介抱する。明らかに危険。写真では朱崇花選手がコーナーポストに座っているけれども、その前に「橋本、起きろや、コラー」と近寄ると、吉野恵吾レフェリーがガチで怒って静止する事態。場外カウント19でリングインしたけれども、かなり意識が飛んでいた様子。事故に繋がりかねないシーンだった。肝を冷やしました。

上記の動画の最初に問題のシーンあり。とはいえ、この事態の一因はプロレスマスコミのスチールカメラマンにあるのではないか?と思っていて、それは彼らが大会開始前に場外フロアマットの位置を20cmほど前にずらしているんですよね。多分、写真が撮りづらいから、つまり立膝をついた時に膝が痛いからだと思うんですけど「許可とっていじってんのかなー?」となんとなく見ていたのですが、こういう事態に発展するとは。プロレスマスコミの皆さん、とても大事なお仕事ありがとうございます、だけれども、お前ら、常に一番高い席からしたら邪魔だからな?とこっそり。

メイン前の吉野恵吾レフェリー。この表情を見て期待が緊張に変わりました!
ゴング直前の朱崇花選手。いい表情だ!
橋本千紘選手のシュート顔!

そんなアクシデントもありながらも、一切の妥協のない攻めの朱崇花選手、次第に調子を取り戻していく橋本千紘選手との攻防はまさに死闘。「お互いボロボロになりながらも」というより「本能での戦い」あって、技のエグさが相乗的に増していく死闘。こんな凄まじい試合を観たことがない。
仙女のリング。特にこのセンダイガールズワールド選手権試合のマットには強さの単位は一つしかない。それが事実であり、この試合の真実だ。2022年の週プロのプロレス大賞にこの試合が評価されないのであれば、プロレスマスコミは何も観ていないのと同じだし、そんな忖度なメディアに価値はない。

Ⅶ:7.10後楽園大会の総括としての苦言

この戦いでしか価値を上げる方法がないのであれば修羅の道だよ、修羅の道

現役の女子プロレスラーの最強を決める戦い。2022年。令和4年の今現在において最も強い二人の戦い。これ以上の強さの証明は今後何年先に観られるのだろうか?少なくとも強さの証明の証人、立会人になりたいのであれば、その舞台はセンダイガールズプロレスリングのリングにしかない。
その価値を提示できる選手を仙女は有しているし、それを知っている選手が集まってきている。もっともっと仙女の運営サイドはこの事に真摯に取り組むべきだと思う。
どういう事かというと、この試合があった週の週刊プロレスの表紙はスターダムだった。内容はユニットを裏切った選手の事件性をクローズアップしたものであった。確かし、このユニット移動は衝撃的でもあったし、スターダムファンの僕からしてもなかなかのエポックでもあった。しかし、この週で最もプロレスファンに伝えなければいけないのはこの試合であった筈だ。
そこに届かない理由は週プロの表2表3の見開き広告を載せているトップスポンサーであるブシロードの力があるのはもちろんのこと、仙女の発信力にあるのではないかと思う。女子プロ界最高峰の試合がユニット移動に負けるというのはどういうことか?それを考えるタイミングだと思う。
この大会、有料生配信ではなく、無料生配信にするべきだったと思う。仙女の懐事情もあるとは思う。思うけれども、この大会、この試合はそれに相当な利子がついて戻ってくる珠玉の大会だった。もちろんそれは結果論に過ぎないのはわかっている。とはいえ結果としてこういう大会になったのだから、有料生配信の期間が終わり次第、すぐに大会を無料公開に踏み切るべきだ。鉄は熱いうちに打て、だ。
それにスタッフの人員の問題もあると思うけれども、バックステージインタビューとかはその日のうちにTwitterであげた方がいい。今のスターダムの躍進があるのはそういうSNS戦略のスピード感。そこは完全にマネてもいいと思う。最終的な差は試合内容でつくのだから。
それにしても今大会は本当に素晴らしい大会だった。この魅力が世間に届かないのは勿体無さすぎる。大手じゃないと届かない訳ではない。それが令和の過渡期気味なSNS時代。誰かそういうスタッフはいないのかね。個人的にだけれども「頑張れ金子」の金子夏穂さんとか、もう一度仙台に戻ってきて、そういうスタッフをやれば絶対に面白いのに!と思う。
センダイガールズプロレスリングは強さの象徴であり、それを証明している。それを届けるための努力・協力が選手外に必要な時期に来ているのは間違いない。

#女子プロレス曼荼羅
〈2022.07.17 記〉

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