酢豚さん

という通り名の人物が、私と母の中にいる。

その人は、帰宅ラッシュの駅のホームでよく遭遇する。

いつも1番後ろの車両に乗っており、電車が来るまでの間、宙に向かっていろいろな単語を吐き捨てている。


例えば
「〇〇線!〇〇線!」
と、この路線ではない路線名を連呼したり。

ある時は
「〇〇先生!〇〇先生!」
と、恩師(?)の名前を連呼したり。

初期は、「YKK!」とずっと言っていたのだが、ファスナーのことだろうか。笑


また別の日に遭遇した時、ついにその言葉は放たれた。

「す!ぶ!た!! す!ぶ!た!!」


夕飯のメニューか、好きな料理かはわからない。
でもこの言葉はどれよりも多く耳にした。
それほどの思い入れがある酢豚なのだろう。


以来、彼を見かけたら、母に即時LINEをする。


“酢豚さんがいる”

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