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Aくんの話。②

おちゅゴーが始まる前に何とか書けるかなーと思って、書いてみる。

Aくんと出会って2年目。相変わらず毎日放課後に色んな話をする。時には、めっちゃ忙しいときに美術室に呼び出され、粘土をこねさせられたりする。30分ぐらい経って、たまらんくなって、「すみません、忙しいんです・・・。」と伝えると、「ああ、すみませんでした。」と解放される。Aくんは、若干空気が読めない。

初めて職場以外で会ったときは、私が誘った。と言うか、それから月1くらいで遊びに行くが、ほぼ、私が誘っている。

私にはAくんを断らせない必勝法がある。当時はメールで、「〜行きたいんですが、一緒に行きますか?興味がなければ、私一人で行きますが。」

この、「一人で行きますが。」が、Aくんには刺さるようだった。別にあなたが目的ではなく、あくまで場所が目的ですよー、と振る舞うと、Aくんは気楽に行きたいと言えるようだった。行きたい場所は、必ずと言って良いほど一致するので、自分の行きたい場所を誘ってた。

初めて誘った場所は、京都大学で行われた、森村泰昌の講義だった。内容は全く覚えてないけれど、最後に映像を見ることができ、その中に大野一雄に扮した森村泰昌が出てきて二人でめっちゃ興奮したのをよく覚えてる。

初めて行った京都大学の図書館は、品揃えもマニアックで、私たちを虜にした。

いつもは王将か吉野家しか食べないと言い張るAくんが、その日は、たまたま歩いている道にあったお洒落なイタリアンに行こうと言ってくれた。なんだか頑張ってくれてるのかな、と思えてすごくうれしかった。お金も払おうとしてくれる。私の方が給料はもらってるのに。必死に止めて、少しだけ多めに出してもらった。

色々話しているうちに、共通点がまた見つかる。救いのない漫画が好きなこと。初めてAくんに貸した漫画は、多分「惡の華」。私の大好きな古谷実の作品は、Aくんも全巻持っていたから。

恥ずかしいから、素知らぬ振りして、職場のAくんの机にメモと一緒に漫画を置いた。翌日には、Aくんから、大量の感想メールが来る。そのメールを読むのも、面白くて、楽しかった。

それから数日後の、土曜日。「大学の友達と海に行くから、バイクで行くので夜中にいまいさんの実家の前を通るから会えませんか?」とメールが来た。

うれしくて、差し入れのお菓子を買ってAくんに見せたいためにどこに行くにも着ていけない稲中のTシャツを着て、夜の1時頃、私の実家の最寄り駅の歩道橋で会った。

そこで差し出された漫画が、画像にある松本次郎の「フリージア」である。全10巻くらい。

歩道橋では、Aくんが止めどなく話し、気付けば夜中3時。うれしい時間ではあったものの、初めて人と二人で会ってウトウトしてしまった。まだまだAくんのおしゃべりは続く。非常に申し訳なかったけど、「もう、眠たい」と言ってしまった。Aくんも京都の奥の方の海まで行かないと行けなかったので、解散した。

次の日、楽しみに「フリージア」を読んだ。それは、私が今まで読んだどの漫画よりも救いのない話だった。

「こんな漫画を知ってるAくんってステキ✨」

私はAくんのことが好きなことを確信した。

余談では、あるが、同僚の話によると、Aくんも「いまいさんの選ぶ漫画のセンスは神がかってる」と言ってくれていたらしい。今でも思い出すとうれしいぜ。畜生。

おちゅゴーまでに何とか終わった。

Aくんの話。③に続きます。


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