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葦と鉄、スズ


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アシは薬用にも使われており、根茎は「蘆根(ロコン)」という名の生薬として、利尿、消炎、止瀉などに煎じて用いられてきました。また、春先のアシの新芽は、食用にも使われていました



おもしろい!!

温泉地帯の湿地帯に生える植物の根に付着した塊。
褐鉄鉱。
"たたら"よりも低い温度で精錬。

今回は今まで断片的に述べてきた「スズ」についてまとめてみよう。
*ここでいうスズは(元素記号 Sn)のスズではない。褐鉄鉱を意味しています。
 「みすずかる」は「信濃(しなの)」にかかる万葉集の枕詞です。
「みすず」は「み」+「すず」で,「み」は貴重な鉄の原料である「すず」の美称です。
  
「すず」とは、古代より製鉄の原料として、温泉地帯の湿地帯に生える植物(葦や茅,薦等)の根に,ある種の鉄鉱石(褐鉄鉱)が付着した塊をいいます。
この 「すず」は、"たたら"製鉄より古い製鉄方法によって、"たたら"より低い温度(土器を焼くくらいの温度)で精錬された。
特に信州(信濃)などで盛んに行われました。

またこれらの「すず」をつける植物群も「すず」といいました。
だから「みすず"刈る"」です。
この根は鉄鉱石成分が付着しどんどん成長し、中が空洞になると同時に小さな塊が残り、振ると音がします。これが本来の「すず(鈴)」です。

この「すず」は成長するのに、数十年以上の長い時間がかかりました。
現代でも、神社などで鈴を鳴らすのは、この「すず」がたくさんとれるように、と祈った名残りです。

また葡萄の房のように、この鉄鉱石の「すず」がたくさん付いた状態を「すずなり(鈴生)」という説があります。
◎日本建国神話中の建御名方神 が諏訪にまで逃げていったのがわかった!
 私はただ遠いところへ逃げた、といい加減に解釈していた。
 信濃、諏訪は「すず」が採れるところだ。
*建御名方神は原始的なスズによる製鉄でなく、「神穴流し」、すなわち砂鉄による初期製鉄を行ったように思われる記述もある。

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諏訪、須賀

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葦舟


豊葦原瑞穂の国

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すると面白い事にアマテラスの子供からひ孫まで、
直系にずらりとホの字が付いています。
このホに「穂・菩・番・火」の字が当てられています。
稲穂を指しているというのが定説です。

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川に油が浮かんでいるのを見た事がありませんか?
「こんな所に油を捨ててひどいなあ」とルナも思った事があるんですが、
その油は鉄バクテリアの集まったもので、それが鉄を集めているそうです。
ですから、その葦の根を焼けば簡単に鉄が採れるんですね。
温度は野焼きで大丈夫だったらしい。

知らなかったァ。
でもね、これで日本神話の初めの神の名の意味が分かったよ。

「古事記」の冒頭の文です。

天と地が初めて別れた時、高天(たかま)の原に現れた神は
天の御中主((あめのみなかぬし)の神でした。
次に、タカミムスヒの神。
次に、カミムスヒの神です。
この三柱の神は、みな単独の神として、身を隠されました。

次に国土が出来たばかりで、水に浮かんだ油のように、
クラゲのように漂っている時に、
葦の芽が牙のように大地を突き破って芽生えるようにして、
出現した神の名はウマシアシカビヒコヂの神。
次に、アメノトコタチの神。

この二柱の神もまた、単独の神として、身を隠されました。
以上の五柱の神は特別な天(あま)つ神です。
この太字の部分をスズ鉄の出来るようすとして解釈すると、
「それまで海だった所に次第に土砂が堆積して、国土が出来始めた頃に、
川には鉄バクテリアが油のように浮かんで、クラゲのように漂っている時に、
葦の芽が牙のように大地を突き破って芽生えるようす」を神格化したのが、
「ウマシ葦カビヒコヂの神」という事になります。
「ウマシ」は「すばらしい」、「カビ」は「芽」、「ヒコヂ」は「中州」です。
組み合わせると「すばらしい葦の芽が生える中州の神」。
おお、なんとすっきりと訳が出来るんだい。
スズ鉄の氏族はこの葦の芽映えを心から待ち望みました。
この神は、中州が出来て、鉄が採れる葦が生えて来るようすを神格化したものでした。

こうすると、アマテラスのあと二人の息子の「天津日子根」「活津日子根」の根も葦の根を象徴しているのが分かります。
この砂鉄とスズ鉄の事については、真鍋大覚氏も詳しいのですが、
さすが工学部の助教授らしく、化学式で説明されているんです。
鉄の鉱石成分はFe3O4とFe2O3の二種があって、
日本には前者は無限に埋蔵されており、原料に事欠くことは絶対にないが、
これを還元するには山林をあまねく伐採しなければならない。
しかし、後者はわずか少量で事足るが、産地が稀である。
これを言い換えると、
砂鉄は火山の国、日本なので、無限に採れるのですが、木を沢山燃やすために、周りの森がすぐになくなってしまいます


スズ鉄は葦の根を燃やせばいいので、木も少なくていいけど、
河口の湿原地でないといけないので、
遠賀川や信濃川など、産地が限られてしまう訳です。
スズ鉄は農耕には十分だけど、戦いの為の刀にすると折れやすいので、砂鉄の部族の方が有利だったのが分かります。
なるほど、これで、いろんな歴史的事件の謎も解けるんだ。
(パズルがカチカチとはまる音)
でも、今日はここらへんで。

ホの一族…スズ鉄の氏族、戦いに向かない刀
"たたら"…砂鉄の部族、戦い向きの刀

今回は、思いがけず「ホの一族」の謎が解けたページになりました。

なお、「もりもりキッズ」さんから教えてもらった、古代鉄を知る本はこれです。
「古代の鉄と神々」真弓常忠 学生社 1997年刊
これにスズ鉄の事が詳しく書かれています。

それでは、「銀の冠」を見に行きましょか♪
鞍手町歴史民俗資料館へ。



琵琶湖とヨシとの関係

"なぜ刈り取った葦を焼くのか"

その動画に出てくる葦笛に魅了された方の話や、その方の音色がすてきだった。


天気の子と龍




坂口安吾 堕落論(青空文庫)

いったいが日本の武人は古来婦女子の心情を知らないと言われているが、之これは皮相の見解で、彼等の案出した武士道という武骨千万な法則は人間の弱点に対する防壁がその最大の意味であった。
 武士は仇討のために草の根を分け乞食となっても足跡を追いまくらねばならないというのであるが、真に復讐の情熱をもって仇敵の足跡を追いつめた忠臣孝子があったであろうか。

彼等の知っていたのは仇討の法則と法則に規定された名誉だけで、元来日本人は最も憎悪心の少い又永続しない国民であり、昨日の敵は今日の友という楽天性が実際の偽らぬ心情であろう。

昨日の敵と妥協否肝胆かんたん相照すのは日常茶飯事であり、仇敵なるが故に一そう肝胆相照らし、忽たちまち二君に仕えたがるし、昨日の敵にも仕えたがる。
生きて捕虜の恥を受けるべからず、というが、こういう規定がないと日本人を戦闘にかりたてるのは不可能なので、我々は規約に従順であるが、我々の偽らぬ心情は規約と逆なものである
日本戦史は武士道の戦史よりも権謀術数の戦史であり、歴史の証明にまつよりも自我の本心を見つめることによって歴史のカラクリを知り得るであろう
今日の軍人政治家が未亡人の恋愛に就ついて執筆を禁じた如く、古いにしえの武人は武士道によって自らの又部下達の弱点を抑える必要があった。

意識的には望んでいなくとも無意識的に、規約(ルール)に縛られることを望む、または本心を切り分けることですんなりと受け入れていく人種なのかもしれない。

そこには自己への抑圧があるから、縛られないものを癌でもあるかのように認識してしまいがちなのかもしれない。

本来、癌も敵ではない。
自分の中から生まれたもの。

人は物語がなくては生きられない。
縛りの中でしか自由を感じられない。
ただ、変化を受けつけない強固な物語である必要はないのかも。
がんじがらめになる必要はないのかも。

同じ物語をみんなで共有できない時代だけれど、「あなたの物語はそういう物語でなのね」と、理解はできなかったとしても知ろうとするだで摩擦は減るのではないだろうか。





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