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魚を獲るひと、守るひと

♦︎Seaspiracy:偽りのサスティナブル漁業

"持続可能"とは"繰り返せる"ということ
僕らが目指すべきゴールなのだろうか

一度海に出てしまえば監視の目の届かない世界。
さまざまな人たちの思惑の渦巻く危険と隣り合わせの世界。
何が正しいのかわからなくなるが、まずは知ることからはじめよう。


創ったものには想いが込められている。

世の中を批判的に描く作品に向かい風は付き物であるが、筆者も本作を観ながら情報をきちんと取捨選択することの大切さを深く実感した。提示されるデータの正しさだけでなく、作中でインタビューを受ける人々の専門性や中立性など、本作は「批判的思考」を受け手に求める映画だ。ドキュメンタリーというジャンルは客観的事実のみを描くものと思われがちだが、あくまでも人の手が入ったものであり、その裏には必ず作り手の主観が隠れている。


ジャッジをせずにただ見ていく。


代表的な魚具と漁法


トロール漁業の現実

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底引き網漁は世界中の商業漁業で使われている方法で、重いネットを海底に沈めて網の中に入ったものを全てすくう方法である。過去の調査では、トロール漁業を、”混獲”と総称される漁獲対象でない種の大量漁獲や、浅い海底の破壊など大きな環境への影響を関連付けている。 
トロール漁業の始まりは1300年代に遡り、1800年代後半の商業漁業の工業化により世界中の沿岸地域に広まった。底引き網漁の狙いは、タラやメバル、様々な種類のイカやエビなどの海底付近に棲息する商業上価値のある種である。装備は釣具によって異なるが、網は一市街区に近い大きさで一度に数千の魚や海生生物をすくう
底引き網漁 はあらゆる商業漁業の手法の中でも混獲率が最も高い。北太平洋では、底引き網漁での捕獲量は年間の水底魚捕獲量の18パーセントを占め、この地域で廃棄される混獲の82パーセントが底引き網漁によるものだ。時には一度の底引き網漁での捕獲漁の90パーセント以上が混獲になることもある。
底引き網漁は堆積物を除去し、海底に棲息する生物の棲息環境を壊し、水を不透明で多くの種にとって好ましくない状態に変え、海底の下にとらえられていた汚染物質やカーボンを解放する。
網が繊細な海底のエコシステムを砂漠化に近いレベルで破壊しているのだ。

大型漁船のトロール漁業の風景…
今回初めて映像を見て、正直その規模感にゾッとした。
しかし、そうやって獲られている魚を自分は食べているのだと実感することにもなった。

日本の巻き網船団は、日本海の産卵場に卵を産みに来たクロマグロの群れを一網打尽にしています。こういう漁法なら、資源量が低下しても、漁獲が維持できるので、低水準資源に甚大な影響を与える危険性があります。大西洋のタラ資源は、産卵群をトロールで漁獲していたのですが、資源が崩壊する直前までトロールの漁獲効率はほぼ一定でした。今のテクノロジーだと、漁法によっては、本当に獲り尽くすまで、魚が効率的に捕れてしまうのです。
これまでクロマグロを生業としてきた沿岸漁業は、水揚げが落ち込み、年による変動も大きくなっています。巻き網団体の「産卵場の巻き網は水揚げがあるから、資源には問題が無い」という主張には無理があります。実態は、「巻き網ですら産卵場でしか獲れなくなっている」という危機的な状態なのです。また、大型巻き網の漁獲は温存しながら、沿岸漁業ばかり熱心に規制をする水産庁の方針は本当に国益に適うのか。大いに疑問を持ちます。数ばかり多くて漁獲量が少ない釣り漁業より先に、大型巻き網漁業の産卵場での漁獲を規制すべきです。


映画『Seaspiracy:偽りのサステナブル漁業』についてのMSCの見解

「MSC認証の取得は簡単すぎて、信頼性に欠けている」という主張について
MSCは、多くのパートナーや組織と共に、漁業慣行の改善と持続可能な水産物の推進に努めてきたことを誇りに思っています。世界には400を超えるMSC認証取得漁業があります。MSC認証の審査は、MSCではなく、独立した専門の審査機関によって行われます。そのプロセスは完全に透明であり、NGOなどのステークホルダーが意見を述べることができる機会が何度も設けられています。すべての審査結果について、Track a Fishery(漁業検索)にアクセスして検索すれば見ることができます。認証を取得できるのは、MSC漁業認証規格の厳格な要求事項を満たした漁業だけです。認証取得は、この映画製作者が言うような簡単なものではありません。
持続可能な漁業が海と人を守ります
MSCは、『Seaspiracy:偽りのサステナブル漁業』のドキュメンタリー製作者の主張の大部分には同意することができませんが、過剰漁獲が危機をもたらしているという点については同意できます。世界中の何百万人もの人々が、必要なタンパク源を魚介類に依存しています。2050年までには世界人口が100億人に達すると言われており、責任を持って天然資源を活用することがこれまで以上に早急に求められています。こうした資源の確保において、持続可能な漁業は重要な役割を担っているのです。


持続可能とは?


イルカ追い込み漁

和歌山県太地町のイルカ追い込み漁はかつて、伊東市から伝わったとされる。過激な動物愛護団体からの反対活動を受けながらも、漁を継続してきた同町。いとう漁協(同市)の日吉直人・イルカ漁担当理事は同町での1日の解禁を受け、「毎年実施していることに敬意を感じる」と話す。
 追い込み漁は明治時代から伊豆半島で営まれてきた伝統漁法。約50年前、太地町の「くじらの博物館」の開館に合わせて生きたままの状態の生体個体の捕獲が必要になった際、伊東市富戸の漁師が技術を伝えたとされる。


イルカを食べる

古来より日本では、イルカを食糧として食べる文化がありました。そしてそれは今でも一部の地域に根付いています。これに対し、野蛮だとか仕方がないとか、様々な意見が飛び交っています。イルカを食べるということは、どんな意味があるのでしょうか。

イルカを食べる意味とは?

食用イルカの文化
「いるか」の肉は、哺乳類ということもあって、魚類とは違った味がしました。そのため、人気になったのではないかと考えられています。漢字で海豚と書くのも、豚肉の味に近かったからとか。

昔は「いるか」の肉は高級品とされていたようで、17世紀の終わりごろまでヨーロッパの宮廷では、丸ごと調理したものをナイフで切り分けて食べたのだそうです。「いるか」の肉を食べなくなったのは、ほかの肉が出回ったこと、輸入品が増えたことなど、食文化の発展が大きな理由のようです。
日本の食用イルカ
日本ではクジラ肉の代用品とされてきました。現在でもクジラ肉は高価で「いるか肉」のほうが安く売られています。
昔から「いるか」を食べる地域と食べない地域で開きがあったようです。
食べない地域は「いるか」のたたりを恐れていたのですが、食べる地域では漁の前にはお祈りをし、食べるときも感謝をして食べてきたのです。
イヌイットの伝統捕鯨
イヌイットの人にとっては、今も昔もイルカの脂肪がついた肉や皮は大切な食糧源となっています。イヌイットの場合、捕鯨頭数を維持しながら遠征狩猟し、肉を分け合って食べます。

イルカの肉は栄養価が高く、経済的です。そして分け合って食べることによって、人間関係は形成されていくのです。しかし、現状では環境汚染によってこれらの肉は食べにくくなっています。どうしたら安心して肉を食べることができるのか?が課題となっています。

その土地の人たちにとってイルカを食べることは、人間関係の形成のためでもあり、記憶(歴史)の伝承でもあるのかもしれない。



漁業から発生する海洋ゴミは?

養殖業と趣味の釣りも含めると,漁業から発生するごみの量は海洋ごみ全体のおよそ10%と推定されています(Macfadyen et al. 2009, Green Alliance).

ただし場所によって大きく異なります。

たとえば,韓国で行われた調査では,ゴーストネットの占める割合が年間に発生する海洋ごみの半分から4分の3を占めていました(Jang et al. 2014).

外洋では,海洋ごみの50-90%がゴーストネットの場合もあります(Hammer et al. 2012).

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場所によって大きく違うようだが、やはり目に届きにくい見つかりにくい場所ほどひどい状況になるのは、山にゴミを捨てたり、ひとけのない場所でポイ捨てしてしまう心理と似ている気がする。

バレないならいいだろう…一度は誰しも頭に浮かんだことがあるのではないだろうか。

人の目がなくてもしなくなるには、恐るべき何か…けっきょくは罰則が必要になってしまうのだろう。

海の過酷さや人間の欲は理性や良心さえも木っ端微塵にしてしまうものなのかもしれない。



日常に潜む釣り糸の事故

釣り糸でこんなことも起こりうるのか。


漁獲量と養殖業

世界の水産物の漁獲量は過去50年で2倍以上に増えてきました。
そして、魚を獲りすぎた結果、1990年以降は海で獲れる魚の数が減り、養殖による生産量が一気に増えました。

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世界の漁獲量と養殖生産量(出典:FAO )
世界の漁獲量と養殖生産量(出典:FAO )
国連食糧農業機関(FAO)の発表では、世界の水産資源の3分の1が獲りすぎの状態(乱獲)で、漁獲枠に余裕があるのはわずか10%未満に留まっており、持続可能な水産資源に頼る世界の数千万人の生活を脅かしていると言われています。

●世界的な養殖漁業の問題点
・海の汚染や病気
・魚が食べる餌
・養殖業界の規模の大きさ
・都合の良い情報しか発信されない
・エビの養殖などの海洋奴隷



サスティナブル(持続可能)とは?

「持続可能な漁業などない。これだけサカナが減ってる中、そんなもの不可能だ。持続可能は流行の宣伝文句だ。」
シーシェパード創始者 ポール・ワトソン船長
「漁業におけるサスティナブルの定義はない」
海洋保護団体アセアナ マリア・ホセ・コルナ


漁業を生業にしている人と守りたい人では立場が真逆であるため対立しやすい。
昔ながらの漁師とただ海を愛する人であるなら、話し合うこともできるかもしれない。
けれど、生活のためだから仕方がないのだと思う人と当然環境を考慮するべきだと思っている人とでは、話し合うことすら難しいだろう。

ときに現状をかえるため大きな行動を起こす。
それは目立つ行動をとらないと声が届くことがないから…という必然からのことかもしれない。
けれどそれが結果的に終わりの見えない戦いの始まりになる可能性も秘めている。
そしてそれは倒すことが目的になってしまうこともある。

でも最初はきっと「何かを守りたい」から始まったはず。

守るために何を犠牲にするのか。
その犠牲を最小限にすることは可能か。

犠牲の形を変え
犠牲を分かち合い
犠牲から可能性を
見つけることはできるだろうか。




♦︎オクトパスの神秘:海の賢者は語る

 『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』は、タコと人間の交流を映し出した、衝撃のドキュメンタリー作品だ。タコが愛犬のように、一人の人間と仲良くしている姿をとらえた本作の場面は、誰もが驚かざるを得ない映像の力を持っている。
 本作に出演し、撮影をしているのは、南アフリカの映像作家クレイグ・フォスター。彼はかつてアフリカ南部のカラハリ砂漠に住む狩猟民族サン人の生活を追った作品を完成させる。その後、サメを間近に捉えるなど危険な映像素材を撮り続け、長い間極限の状況に身を投じたことで、心身ともに疲れきっていたという。そんな彼の傷ついた心を呼んだのは、幼少期に長い時間を過ごした、岬を囲む荒々しい海だった。


♦︎海のなかは神秘的

神秘的な動き。
海の中の生き物は触れなくても、ただ海のなかで眺めているだけで気持ちが溶けていく。
そして静かな世界に慣れるころ安らぎがやってくる。

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