高齢者虐待防止法

 高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(以下高齢者虐待防止法)は、高齢者虐待を「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命・健康・生活が損なわれるような状態に置かれること」と捉えたうえで対象を規定し、高齢者の虐待防止と早期発見・早期対応を主眼に、家庭内だけでなく、施設・事業者の従業者などによる虐待も対象として、市町村を虐待防止の主たる担い手と位置づけている.

 高齢者虐待防止法では、虐待を「身体的虐待」、「心理的虐待」、「介護世話の放棄(ネグレクト)」、「性的虐待」、「経済的虐待」の5種類としている.施設・事業所などにおける身体拘束禁止規定に反する身体拘束も虐待として扱う.身体拘束禁止規定に反する身体拘束とは、「緊急性」、「非代替性」、「一時性」という例外三原則には、個人の判断で行われるものではなく、施設や事業所内に、権利擁護委員会や身体拘束廃止委員会を設け、そのなかで検討され、やむを得ないと判断されたときに行われるものである.身体拘束を行う場合には、本人と家族に説明して、同意を求め、記録に残さなければならない.

 家庭内や施設・事業所内で虐待を発見した場合は、一般市民であっても通報の努力義務があり、緊急時の場合には通報義務が課せられるが、施設事業者などの医療福祉関係者が発見した場合は、緊急時でなくとも通報義務が課せられていることに注意する必要がある.また、高齢者虐待防止法では通報者が不利益を被らないように、通報による不利益扱いを禁止している.また、守秘義務の適用も除外されている.この法律に罰則規定はない.虐待者の処罰は主に刑法による傷害事件として扱われる.一方、高齢者虐待防止法は虐待を行った家族などの養護者に対する支援も目的としており、心理的な支援が望まれる部分である.

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