口唇期

 フロイトは発達を五段階にわけ、成人の性的なふれあいのチャンネルとなる身体期間に対応付けて命名した.やがて、成人男女の性愛(エロス)へと発展していく小児性愛的な交流によって促される「関係の発達」は、こうした対応付けが可能なところにひとつの根拠をおく.しかし、関係の発達は、その社会の時代的・文化的なあり方、その社会における人と人との関係のあり方に規定される面が大きい.よってフロイトの発達論の記述は現代世界の我々にそのまま当てはまらないことも多々ある.

 口唇期は、授乳による関わり、口唇が親子の交流の大切なチャンネルとなる時期で、零歳から一歳ころに相当する.授乳によって乳児はたんに栄養が与えられ、空腹が満たされる満足を得るだけではない.やさしく胸に抱かれて乳首から暖かなミルクを吸うことに深い喜びや満足や安心を得るのだとフロイトは強調した.精神発達的にはこちらが重要で、日々繰り返される授乳を通して、子供は養育者との間に親密で愛着的な関係の絆を深める.Orale Phase.

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