観察法

 一般的に、観察法は、研究者あるいは観察者が、観察状況にどれだけ人為的操作を加えるか、現象をどのように切り分けて選び取るか、観察したものをいかに記述するか、さらに観察対象にどのようなスタンスで関わるかという四つの視点から、整理・分類することができる.

 はじめに、観察者が観察対象や状況に何ら操作を加えず、そこで自然に生起してくる行動をありのままに把握しようとする方法を「自然観察法」と呼ぶ.それに対して、ある特定の行動が生起しやすい状況や環境を研究者があらかじめ設定し、そこでの人のふるまいや出来事を精緻に検討しようとする方法を「実験観察法」という.これに関しては、現象の選択を特に行わないこともある.「偶発的な自然観察」が多くの場合、特定の場合、事象、時間などに焦点化した観察が行われる.保育園におけるこどもの遊び場面など、特定の場面に絞り込んだ観察を「場面見本法」と呼ぶ.それに対して、例えば自由遊び場面で生じるこども同士のいざこざなど、特定の出来事に注視する観察を「事象見本法」という.さらに、観察対象が何をしているかにかかわらず、観察の時間帯を明確に定め、その間に生じた主だった行動ほぼすべてに注目する観察を「時間見本法」と呼ぶ.

 さらに、生起した行動や出来事を直接的に書き留めていく方法を「行動描写法」という.それに対して、研究目的に応じて予めいくつかのカテゴリを設定しておき、生起した行動等がその内のどのカテゴリに該当するのかを逐一判断する方法を「カテゴリ・チェック法」という.また、「評定尺度法」では観察対象の具体的な行動一つひとつを取り上げるのではなく、こどもの他児に対する共感性など、その全般的な心理行動傾向をある評価次元に沿って評定するような場面もある.

 最後に、観察者が傍観的な観察者役割に徹し、極力、観察対象との関わりをもたない方法を「非交流的参加観察法」と呼ぶ.それに対して、基本的に観察対象の行動に直接関与することはしないが、観察者の存在が状況の不自然さを作り出してしまうことを防ぐために、予め観察対象とラポールを形成し、観察対象に、自らの観察者役割を了解してもらったうえで、観察する方法を「消極的参加観察法」という.加えて、観察者がこどもの遊び相手になるなど、ある現象を観察対象と共同構成する者という態度で観察を行うような場合を「交流的参加観察法」と呼ぶこともある.Observation method.

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