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妄想が進み過ぎる曲①-「慟哭」

今回は妄想が進み過ぎて何度も聴いてしまう曲について書きます。何故、同じ曲を何度も聴いてしまうのか。何故、歌詞に書いていない所まで想像を超えて妄想してしまうのか・・・。自分でも謎なので、言語化したいと思ったためです。

まず第一回目は、工藤静香さんの歌う「慟哭」について書きます。作詞:中島みゆきさん、作曲:後藤次利さんです。

1.そもそも何故妄想が進む曲とそうでない曲があるのか

私にとって曲は、妄想が進むか/進まないかの2種類に分かれます。私がミュージカルの曲が好きなのは、その物語の世界観を知っているため、よりその曲から妄想が膨らんで、曲も物語も深く広く味わえるからです。

ただ、ミュージカルの歌でもドラマの主題歌でもないのに、その曲を聴くだけで物語が立ち現れてくる曲があります。その特徴として、以下があると考えています。

・的確かつ印象的な歌詞から、登場人物や物語が想像出来る。
・かといって詳細に触れられていない部分もあるため、その余白部分を埋めるがごとく妄想が進む。
・メロディーから主人公の感情や周りの雰囲気がガンガン伝わってくる。
・歌い手の声や見た目が曲の主人公像と合っており、あたかもその人が体験した話であるかのように思える。

2.「慟哭」で妄想

タイトルからして胸騒ぎがして、サビからもう切なささが予感される曲です。

そして歌詞からその恋の結末、主人公の感情をつぶさに伝わってきて、「ううう・・・」と身もだえします。しかし、聴いているうちに気になる部分が出て、そこから物語の細部を勝手に自分で考えてしまいます。きっとこの妄想部分は人に拠って違うと思うのですが、私の場合は以下です。

気になること①この主人公の男友達は、どんなトーンで「お前も誰か探せよ。」と言ったのか。

・・・これはこの男性が、主人公である女性の恋心を気づいているかで大きく変わると思うのです。

私はこの男性を彼女の恋心に気づいていない、超鈍感な人と設定して物語を妄想しています。そのため妄想では、男性は「お前も誰か探せよ。」と100%友人として、ものすごく無邪気なからかいトーンで言います。主人公は少し顔を歪めて笑いながら「何よ、えらそうに。」と返します。ここで、「そりゃ顔も歪むわ・・。で、この男友達はその歪みの本当のわけに気づかないのよね!ひー!!」と思って私は勝手に切なさを更に味わうわけです。

男性は学生時代はスポーツに打ち込んでた感じの、精悍な顔立ちで全体的に爽やかなイメージです。女性は工藤静香さんそのもの。美人で少しクールな感じです。

「避けられてるかもしれない予感」とあるので、男性が実は女性の恋心に気づいているバージョンも想像出来なくはないですが、怖すぎる!残酷すぎる!と思って妄想しないようにしています。

気になること②何故彼女は心で慟哭しているのに、笑って話を聞いているのか

何故ってそりゃ、好きだった友達に恋人紹介されたら、失恋決定だし笑うしかないじゃん、とも思います。でも、ここで感情を大分抑える主人公の性格がくっきりと浮かび上がってきます。

男友達の前でつい泣いてしまったり、取り乱してその場を去ったりしない。それはみじめな姿を見せたくないというプライドや、男性と友達でい続けたいという思いもあるけれど、男性を困らせたくないという気遣いもあるのではないか・・・。そんな細やかな気遣いを軽い感じで出来る人って、他の場面でも我慢したりしてるんじゃないかなあ、とまたここで勝手に妄想が進みます。

歌詞は大分重たいのに、工藤静香さんの歌い方が比較的さらりとして感じられるのが、更に自分の感情をコントロール出来る大人な女性像を醸し出し、「分別のある、いい女の人なんだろうなあ。しかし分別が幸せを呼ぶとは限らない、あああ。」と思ったりします。余計なお世話ですよね。

3.軽やかな歌い方の理由・工藤静香さんへのインタビュー記事より

ここまで書いてから検索したら、以下の工藤静香さんのインタビュー記事が出て、とても興味深かったです。

上記記事から少し抜粋します。

工藤さんは「あまりにも内容が濃いから、暗く歌うのはやめよう。『こんなこともあってね』と、過去を笑って振り返る歌にしたい」と、後藤次利さんのメロディーに合わせ、軽やかにリズムを刻んで歌った。
 曲は大ヒット。一方で、事務所にこんな意見が届いたことを覚えている。《つらい歌なのに、どうして明るく歌うんですか》 
工藤さんは24年前の質問に、こう答えた。
 「男性は偉そうに、お前も早く誰かを探せよと主人公をからかう。上から目線なんです。こんな傷つけられ方をしたら、主人公だって吹っ切れて、男性より更に上から目線にもなる。『こういう男だったのね。よし、卒業!』と。一晩中泣いた後、こんなことされたら『もうイイでしょ』ってなるじゃないですか?」

・・・これを読んでなるほど、と思いました。そしてかっこいいなーとも。軽やかな歌い方から私は感情を抑える女性を妄想しましたが、吹っ切る強さを持つ女性を表してもいたのですよね。

それからふと、片思い中でもない私がこの歌を何回も聴いてしまう理由は、自分の思い通りにならない時に、その辛い感情をこの歌のように軽やかに受け止めたい、と思っているからかもと思いました。

考えすぎかなあ、妄想し過ぎかなあ、と思いつつ、またこの曲を聴いてしまうと思います。他にも書きたい曲があるのですが、またどこかで。ではでは皆様、良い1日をお過ごしくださいませ。