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・「好き嫌い」への肯定 -「すべては『好き嫌い』から始まる 仕事を自由にする思考法」

今回は楠木 建さんの著書「すべては『好き嫌い』から始まる 仕事を自由にする思考法」について書きます。この本によって自分はどちらかというと好き嫌いを基準に物事を考える『好き嫌い族』に当てはまるのではないかと気づき、より心地よく生きる方法が分かりました。

作品紹介には以下のように説明してあります。

仕事は晴れの日ばかりではない。努力をしても成果が出ない。思うような評価が得られない――では、どうしたらよいのだろう?

・インセンティブに頼らない仕事術とは?
・「良し悪し」よりも「好き嫌い」――「コレクトネス」の奴隷になるな!
・UMS(ユニクロ、無印良品、サイゼリヤ)にみる独自価値の創造
・アマゾンの競争優位の正体は「順列」にあり
・「今こそ変革を!」を演説する社長を信用しない理由
・「勝ち組・負け組」と騒ぎ立てる人のイヤらしさ
・「ダイバーシティ経営」の落とし穴…etc

『ストーリーとしての競争戦略』の著者が贈る「究極の仕事論」。
成熟社会における仕事・ビジネスの活路を指し示す画期的考察がここに。

印象的だった点は以下5点です。

1.「好き嫌い」と「良し悪し」とは何か?

この本では『好き嫌い族』と『良し悪し族』という分類が出てきます。私は物事を好き嫌いで判断しがちなので、本の中で紹介される『好き嫌い族』の思考パターンにとても当てはまりました。ただ、状況によっては良し悪しで判断することもある気がするので、「好き嫌い族」というよりは「好き嫌いという基準をより重視する人」という風にとらえて以下を書いています。(そのとらえ方の方が私は好きでそうしている、ということでどうぞご容赦頂ければ幸いです。)

それではまず「好き嫌い」と「良し悪し」と何か?ですが、以下のダ・ヴィンチニュースのレビューの説明が分かりやすかったので抜粋します。

 良し悪しは、本来、社会的にコンセンサスがとれている普遍的な価値基準であり、人が法を犯さないため、また、社会的モラルに反さないために必要なものだ。
 一方の好き・嫌いは、個人やその集団としての企業が、自由に決めてかまわない意思決定の価値基準である。

そして、 「著者によれば、本来、好き嫌いで判断して意思決定すべき局面においてまでも、良し悪し判断が跋扈し」ていると説明されています。

2.「良し悪し族」と「好き嫌い族」とは何か?

「良し悪し族」と「好き嫌い族」との違いについては本の中で以下のように説明されています。

良し悪し族は世の中を縦に見る。見るもの聞くものを、良し悪しの縦軸に当てはめて価値判断をする。「悪いこと」を指弾し、世の中からなくそうとする。「良いこと」を増やし、伸ばそうとする。好き嫌い族は世の中を横に見る。ミクロな視点といってもよい。それぞれに好き嫌いが異なる個人の集積として世の中をとらえる。人それぞれだからノリやソリが合わないこともしばしばだが、「ま、それぞれの好き嫌いだからイイんじゃないの......」とやり過ごす。良し悪し族と好き嫌い族、これにしてもつまるところは好き嫌いの問題で、どちらが良いということではない。ただし、僕ははっきりと好き嫌い族に属している。

→この分類から、自分が好き嫌いで判断しがちなことや、SNSなどの友人のコメントを理解できなかった理由が、その友人が良し悪しで判断する傾向にあったからと分かり、すごくすっきりしました。

例えば、Facebookである個人的な事項について「○○は良くない。」そして「○○は改善すべき。」と投稿してあることをよく見かけていました。これに対し「私は○○を改善してほしい」という言い方ではなく、改善すべきという断定調になるんだなあと不思議でした。

そしてその投稿のコメント欄に同じような断定調の同意といいねがたくさんついたりしていると、「この投稿の意味が全く理解出来ない私は他の人とズレてるかな」と不安になったりしていたのです。また、部分的な話だと私が思うことについても、「日本は・・・」「世界が・・・」と範囲を広くして語られたり、「みんなもそうだと思う」と追記してあったりすることにも驚いていました。

SNSで何を投稿しようと自由なのですが、私が不安になっていたのは、以前 職場の先輩や同僚の言葉の意図が理解できず、怒らせたり無視されたりしたことがあったからです。

周りの人と私の意見が違うのは当たり前なので良いのですが、その思考プロセスを理解して想定外の争いを避けたいと思っていたので、良し悪し基準で判断する人についての解説にとても納得しました。思い返せば、怒らせた先輩方も良し悪しでよく判断する人たちでしたので、それを理解せずに返した言動がトラブルの一因だったと分かりました。この本を読んでからは、SNSの投稿を見ても「あーこの人は良し悪し基準で考えがちなのね」と理解出来るようになりました。

3.「位置エネルギー」と「運動エネルギー」という分類

この本の中で私が物事を理解するのに役立った解説がたくさんあるのですが、その中の一つが「位置エネルギー」と「運動エネルギー」です。

本の中では、

きらびやかな経歴や肩書きが「位置エネルギー」であるのに対して、実績は「運動エネルギー」といってよい。

と書かれています。楠木さんは「実績のみが実在」というアメリカ合衆国の実業家のハロルド・ジェニーンさんの言葉を紹介されていますが、これが仕事の本質であると私も思います。

→この本を読んでから人と話していても「?ああ、この人はAさんの位置エネルギーと運動エネルギーを一緒のものとして語っているのね。確かに肩書は素晴らしいんだけど、実績があまり見えないから私はAさんの今の仕事について判断出来ないと思ってて、この人に話に疑問を持つんだな。」などと分かるようになりました。

また、エネルギー保存の法則の例として、「ボールを空に向かって高く投げる。上に行くほどボールは位置エネルギーを得る。その分、運動エネルギーは喪失される」とも書かれています。位置エネルギーが高い組織や肩書にいるほど、その位置に固執して行動(実績)が乏しくなっているように見える人がいるのも納得しました。私は仕事でそれほど高い位置に行くとも思わないのですが、位置ではなく実績に集中するように気を付けたいと思います。

4.自分の価値基準を理解する方法

この本で一貫して語られる楠木さんの好き嫌いとその理由の解説によって、自分の好き嫌いの認識の仕方が学べてとても参考になりました。特に良し悪しの価値を重視する人と接するときには、好き嫌いを重視するとトラブルが起きたりします。

プライベートでは良し悪しの話に関わることは極力ないのですが、仕事など必要な時はその良し悪しの話に対して自分の好き嫌いを基準とした考えを話す場面があります。その時に自分の好き嫌いの理由を明確にしておくと説明出来ますし、攻撃された時に自分を守ることも出来ます。

楠木さんご自身がツイッターでされた発言について批判されたご経験を紹介されていますが、私には全く問題ないように思える発言だったのでびっくりしました。その罵詈雑言を含む批判に対する楠木さんの冷静な分析を今後見習いたいと思います。

5.これからより快適に生きていく方法

この本から得た一番の気づきは、好き嫌いを重視する私もこの社会で生きていけそう、という安心感でした。私にとって自活することが最重要事項なのですが、そのためには周りの人々とうまく関係を築くことが大切です。周りの思考や行動パターンを分析する方法をこの本で知れて良かったです。

また、楠木さんが仰るように「『誰に嫌われるか』をはっきりさせる」ことは大切だと思うのですが、嫌われるというのはやはり嬉しくありませんでした。ただその嫌われることを通して自分の仕事のコンセプトを明確にしていく、という方法を教えてもらえて、覚悟と勇気をもらえました。

その他にも「なるほど!」と思う部分がたくさんあって、紹介しきれません。特に「『フェイスブック』を好きになれない理由」や「『ダイバーシティ経営』の落とし穴」の章は日ごろモヤモヤしていたことに対して言語化してもらえたようで、とてもすっきりしました。

楠木さんの他のご著書「好きなようにしてください たった一つの『仕事』の原則」「『好き嫌い』と才能」「『好き嫌い』と経営」も他の方の思考パターンが知れてとても興味深かったです。この記事ではあまり取り上げていませんが、好き嫌いを仕事に活かす方法も書いてあります。 私もこの本で学んだことを活用して、「どうして私はこれが好きなのか/嫌いなのか」を考えることでより自由に心地よく生きていこう!と前向きな気持ちになれました。