柔らかさと鋭さの理由「棟方志功の眼」
今回も版画家・棟方志功さんについて書きます。
前回の展示で素晴らしい絵を見て「なんでだろう?」と思っていたことが、お孫さんの石井 頼子さんのご著書「棟方志功の眼」を読んで、何となくわかりました。
1.「棟方志功の眼」の概要
商品説明では、以下のように書かれています。
・・・この本を読んで、棟方志功さんのイメージが地に着いた、人間らしいものになりました。
展示では、絵の素晴らしさとその才能に圧倒され、映像では独特の話し方や言葉選びに驚きました。そのため、「天才」「常人離れした人」というイメージが強かったのです。
2.好きなエピソード
この本では、棟方志功さんが身近にいたからこそのエピソードが紹介されています。中でも印象的だったのが、石井さんが幼いころ、茶碗を見ながら質問した話でした。
「単純な模様なのに、真似をしようとすると形にならないのは何故だろうか。」「祖父(ババ)の絵も同じこと、走り描きのように見えるその絵と私のこの絵と、どこがどう違うのか。」と聞く石井さんに、棟方志功さんは、「それはなあ、”五十年と、ちょっちょっ”なんだよ」と答えたそう。
つまりは、それが五十年の繰り返しの上にある一瞬の筆であり、そこから生まれる普遍的な美である、との意味だったようです。
才能ももちろんあるけれど、ずっと描いてきた人であること、そして何より絵が本当に好きな人であることが、この本を読んでしみじみ感じました。
3.鋭い線で柔らかな絵が描かれる理由
この本を読んで、柔らかな絵は、棟方志功さんの優しさや穏やかさを反映して、鋭い線は絵に対する情熱を表しているのなあとぼんやり感じました。
そして、棟方志功さんの作品を見て、印刷技術が進んだ現代で、版画が存在する理由がわかりました。固い板に、固い彫刻刀で刻まなければ生まれない線が、確かにあるからです。
4.おまけ:好きな作品
前回紹介しきれなかった作品を紹介します。
5.おわりに
棟方志功さんの様々な面を知って、人って本当に多様だなあと改めて感じました。
そして、何かに真面目に取り組んでいる人ってやっぱり素敵なので、自分もそうしよう、と思います。