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色とりどり

カランコロンカラン

「~そしたらさぁ、隣におっかない顔の男がいてよー、その嫁がこれでこれでさぁ~」


ここは京都市北区にあるゲイ・バーMassy time


扉を開けたら1番に、色とりどりの毛糸で編まれたワンピースが目に入る。
ましこママだ。

店内の爆音に負けない声量が響き渡っていた。

「嫁がこれよこれ!」

ギャハハハハハハハ

"これ"の時に、頭の上に両手で"鬼"のジェスチャーをして大盛り上がりだ。

令和も10年目をとっくに越えたというのにいつまでも動きが昭和だ。


「あら、薄焼ちゃん?今日もお疲れ様~いつも人の相談ばっかりのって疲れてんじゃないのぉ~?今日はゆっくり休んでいきなさいな。こんなうるさい所で無理だと思うけどぉ❤️」


「ありがとっ。ママ?今日は懐かしい子連れて来てんよー」


「あらっ?!、、、、、もしかしてあんた、ツキミコ?5人子供産んだって言ってたけどそれ以来じゃないの!!!」

「てへ」

「懐かしいわね~。覚えてる?私がまだ北海道に住んでた頃っ!」

「ましこママが京都旅行に来た時の話ぃ?」

「そうそう!」

「まだみ~んな可愛かったわよねー❤️」

「それぞれに悩み抱えて、でも迷路から抜け出したタイミングでね~」

「又会おうって言いながらまさか10数年経っちゃうなんてね~っ」


「ほんと懐かし、、うっ、、、えっあっ、、、わぁぁぁぁん」


「ツキミコ?どしたん?!その泣きっっ、演劇WS始まったんかと思ったやん。」


「わっ、私っ、、、、PTAのLINEグループで嫌がらせにあってて。。。。」


「あ~、本人にしか分からんようなやつね。アレ嫌やんなー、そっかそっか。あるある。」

「ないない。」

「え?」「え?」


「あんたらっっ!いつまで女子やってんの!めんどくさいわね。見せてごらんなさい!何これ!ただの嫌がらせじゃん!きっと何か引っかかる物があったのよ。あんたの問題じゃない!あんたは巻き込まれただけ!ほっときなさい!

いい?気持ちの上でしっかり切り捨てるのよ?あんたは優しいから何言っても怒らないしって思われてるのよ。あんたが嫌がらせの許可を下ろしちゃってるの。分かる?

まだ演劇やってるのよね?
全てネタにしてコトコト煮て、あんたの手で美味しい優しい重ね煮にしてしまうのよ!

あんたなら出来る!
どんな素材も、美味しいお料理にね!

ほら、涙はいい男を落とす為に使うものよ。」

「ママ、、、、」

「ほんと昔から何も変わらないわね。ほーら、今日は踊りなさいな、楽しい夜はこれからよ!」

かわるがわる展3 短編集
2020.06.08【色とりどり】より

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