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それとなく

1日が暮れていく。大きな波もなく暮れていく。すごく久しぶりに友と会う。近況を語る。大きな変化もないが、それなりに時が過ぎている。人生の機微はこんなところに、きっと潜んでいる。今日は、おしなべていい日だった。昼、職場の近所を歩く。普段行かない方へ足を延ばす。うらびれた街並みの中に新築の会館が建つ。不釣り合いな新調感も、住人たちの生活の一部に溶け込んでいる。あやふやな存在が、人々の息遣いにまみれて、同化していく。ああ、こういうもんなんだなと思う。自分はこの街に溶け込めるのだろうか。もう一部になれているのだろうか。そう思っているうちは、他者なんだろう。雨上がりの空は雲間から淡く青色が覗く。この天気が好きだ。歩きながら、息を吸う。雨上がりはにおいがない。振り始めは、雨降りのにおいがするけれども。あれは濡れた土のにおいなんだろうか。それとも雨が運ぶにおいなんだろうか。こうして、日々が過ぎていく。それとなく。

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