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大腸内視鏡検査ってなにさ

 ひと月待った甲斐があったというものだ。
 待望の注腸。いや、違った。内視鏡検査だ。注腸は腸に尻からバリウムをぶちこんでレントゲンで撮るヤツだった。バリウムはいかん。あんなもんは腹に入れたらいかん。固まるわい。宿便になる。
 さて、内視鏡。前の晩、強力下剤を飲んで就寝。夜中に腹痛で起こされる自分。1回、2回。だんだんいい感じに掃除されていく気配。
 10時、病院に到着。尻に穴の開いた検査着にお着替え。準備万端、いつでも来い、と待機。が、動きがない。待合室には老若男女が入り乱れて10人ほど。ようやく一人ひとり順繰りに問診が始まる。「食事は摂ってませんね」「朝、食べました」「え!?何時に」「8時半頃、いつもと同じ物を食べていいってここに書いてあったから」「いえ、これは前の晩の食事のことで」。たいそうご年配のご婦人と看護師の人の会話。うーん、食べちゃったか。せっかく1か月以上も待って、下剤も飲んで、ようやくここに辿り着いたんであろうに。お気の毒さま。
 と、お腹がぐるるるる。おもむろにトイレ赴く。そこへ我が名を呼ぶ声が。だんだん近づき、ついにトイレの中まで。待てよ、トイレん中まで呼びに来んなや。おもわず声に出して呟く。
 問診は人のを聞いとったから、超スムーズ。問診者が2人態勢になって増員された圧の強い看護師の尋問?も難なくクリア。「ポリープがあったら切除していいですか」「お願いっす」「その場合、1週間ほど飲酒、遠くへの外出、運動は控えてください」「仕事でほとんど毎日階段上り降りしなきゃいかんのだけど」「あー仕事で」一瞬ためらい問診票に何か書きだす看護師。「ああ、いいっす。エレベータ乗るから」それ聞いて、看護師、瞬時にホワイトで書いた文字を消す。で、終了。隣の問診はまだ続いてる。とっととやろうぜ。
 それから、また待ち時間。問診が終わった者から、何やら、でかいボトルに入った飲み物を渡されている。また下剤か?飲み始めた者は、一杯飲んじゃ体をゆすったり、部屋の中をぐるぐる歩き回ったり。若手芸人のコントか。
 自分のところにもボトルがやってくる(どうやら腸洗浄のお薬らしい)。業務用スーパーで売ってる取っ手の付いた焼酎ボトル然としたそいつは、ちょいと手ごわそうだ。「それじゃあ1時間でこの線まで飲んで、そのあと水500㏄飲んでもらうので」この線までってのが約1ℓ、そのあとまだ水飲むってか。モデルじゃないんだから、そんなに飲めんだろ。
 恐る恐るボトルから紙コップ に液体を注いで一口飲む。うー、まずい。昔の青汁のコマーシャル(八名信夫のやってたやつ)のセリフがそのまま口をつく。その味を例えるなら、腐ったレッドブル。これ1ℓか。きっついな。
 まわりの被検者は、着々と飲み干していく。その間、トイレに行ったり来たり。恐るべきことに、トイレには男女兼用の個室が整然と並んでいるのみ。女子にはきつくないか。もうここ来た時点で腹くくったか。隣で高齢のご婦人が看護師に叱られている。「まだ1回もトイレに行ってないじゃないですか。出なくてもいいから、行ってください。出なかったら、ウォシュレットお尻に当てて刺激して」あな悲惨。もののあわれに涙。
 次第に待合室の人員が減っていく。飲み終わった者は、看護師に便の色(というかお尻から出てきた「液」の状態)を自己報告してOKもらえば、どこかに連れ去られて行く。看護師は「透き通るまで」って言うけど、どうやら誰一人、透き通ったやつはいないらしい。そもそも、何にも出ないって人までいる始末。それでも、一人減り、二人減り。最後に残るは自分と、二十代と思しき女子が1名。1時間たっても自分、半分もいけてない。看護師に、「ちょっと無理。そんな飲めねえよ」と訴えても、「みんなちゃんと飲んでるんですから」と小学生のように怒られる。女子も看護師に「普段、お水ってそんなに飲まないから」と言ってるのが聞こえる。「あの人と同じこと言って」とこちらに視線。小粋なカウンターバーよろしく紙コップちょっと掲げて会釈。パンツも履かず、尻に穴の開いた検査着着て。
 が、ついに女子も飲み干したらしく、看護師ともども別室へ向かわんとする。看護師が「更衣室の鍵がかからん」っと訴えるおっちゃんに呼び止められて、女子が一人手持無沙汰げに取り残されてたんで、シカト前提で「飲めないっすよね、こんなに」と軽く声かけ。予想に反して嬉し気に「そうなんですよ、お腹パンパンでもう入らないって感じですよね。さっきトイレでやっと出たんですけど」うーん、言っちゃうかあ。連帯感なのか、すでに何か捨ててしまったのか。
 そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティではない)。
 30分延長して(カラオケではない)もらって、ようやく腐れエナジー飲料を飲み干したあとにはさらに500ccの天然水が待っている。が、こいつはまずくないからちょいと楽勝。何やら甘いような気がする(味覚障害発症?)。
 看護師が戻って来たんで「終わったよ」とお声をかけると、「じゃあ、あと一杯」と自分だけお代わりが用意されている。いぢめ?確かに渡された説明書きには、1ℓ飲んで、液が透明にならなかったら、もう200㏄って書いてあったけど、ヤングな女子は飲んでなかったぞ、確か。しかたなし。看護師の熱い視線を感じつつ、ぐびりぐびりとファイト一発。何とか流し込んで…。既に時刻は午後1時30分を回ろうとしていた。
(to be continued! チャンネルはそのまま!!!)

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