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何はともあれ、ビジョンは示された ~2023清水新体制会見を考察~

降格が決定した日以来初めて、noteの投稿画面を開きました。

オフィシャルが頑張ってくださって、YouTubeで流した会見の動画をアーカイブしつつ、文字起こしもしっかり出してくれました。今季に臨むにあたって、サポーターとしてはクラブが何を考えているのか、発信されたメッセージをしっかり読み解く必要があると思います。まず、しっかり見ましょう。その上で感想を軽くまとめてみます。

山室社長の決意

第2部から山室社長と大熊GMが登壇され、山室社長が話し始めたわけですが、伝わってきたのは「悪しき風習をなんとしても断つ」という意気込みでした。就任してからの3年でいろいろ手を付けてきたとは思いますが、変わるに至っていないのは明白です。『経営の正解はすべて社員が知っている』という社長の著書が下記にあるように、どちらかというと山室社長は社員から出てくるアイディアを大切にしながら物事を進めていくタイプの方だと思っていて、本当に大事な局面を除けば静観していたんじゃないかと思うのです。

ただ、今回の会見では「選手全員と面談」という話も出てきていましたし、J2降格という大きな出来事を機に、自分も出ていかなければならないという所信表明のような会見だと感じました。静岡の風土の話もされていましたが、ここからが本当の戦いなのではないかと思います。「変わる変わる」と言って変わらないことはこれまでも多々ありました。それでも、山室社長はプロ野球で実績を積まれた方で、プロスポーツの組織として何を変えなければいけないのかは分かっているはずです。軋轢も生まれるかもしれませんが、ここは思い切ってメスを入れてもらいたいと思います。

『VISION2027』

次に出てきたのが、『VISION2027』という新しいワードです。

今年から5年間でエスパルスはこうなりたいというものを示したことになります。具体的にはJ1強豪クラブの仲間入りを果たし、優勝するというものでした。『VISION○○』というワードで示すクラブは他にもたくさんあり、その通りに事が運ばないクラブも目にしてきましたので、「大風呂敷を広げて大丈夫か?」という意見が出てくることも想像はつきます。ただ、こうなっていたいというものが示されたこと自体に意義があると私は思っていますので、中身の正当性はいま考えなくてもいいと思っています。

エスパルスもビジョンを示したことはありました。でも、その通りに事が運ばないとすぐに諦めてしまい、いつしかどこへ向かおうとしているのか分からず、また仕切り直しというサイクルに陥っています。ですから大事なことは、示されたビジョンに向かってクラブが動き続けること。動いていることをオープンにすること。それをチーム、パートナー、自治体、サポーターが共有できるようにすることです。それが、私が1年前に申し上げた“ムーブメント”を起こすことにつながっていくと思います。手前味噌ですが。

ビジネス目標は時間の関係なのかサラッとした扱いでしたが、「Jリーグ初」「日本初」というキーワードだったり、「関東圏を中心とした商圏」という部分は、昨年7月に30周年記念試合を国立競技場で開催して多くの観衆を集めたこととリンクしていると思います。J2に降格したことやスケジュールの問題で実現性は分かりませんが、再び国立を借りて試合をしたいという意欲があることを感じさせました。

清水が考える“育成型クラブ”

次に、育成型クラブについての再定義と、ロードマップが示されました。

質疑応答で大熊GMが、エスパルスから羽ばたいて、経験を積んで、活躍できるうちに戻ってきてもらうという循環を作りたいようなことを強調されていましたが、これまではユース出身の選手を多くしていくことが“育成型”で、大型補強が行われると相反するものだと捉えられ、真意が伝わっていなかったのではないかと思います。監物拓歩や齊藤聖七が大学経由で帰ってきたのも循環の1つ。北川航也の例もそうですし、移籍が実現した原輝綺だってまた縁が出てくるかもしれません。少しずつそういう流れはできつつありますので、そこは理解を深めていきたいところです。

ロードマップの部分は、順位的な結果も、代表輩出もそうですが、ただ言って終わりではなく、そのためにできることは何でもするつもりがあるのか、軌道修正することなく本気で取り組む姿を見守りたいものです。ただ会見で言及こそなかったですが、今年の目標にJ1昇格と並んでルヴァンカップor天皇杯ベスト8以上とあるのがやや引っかかったところです。J2リーグ戦と並行してのカップ戦は本当に過酷で、他クラブが苦しむ姿を見てきましたので、優先順位があるのであれば言っても良かったと思います。あえて記したのは、1試合でも多く経験を積むことでチーム、個人それぞれの力を上げたいということなのかなと思っています。

フィロソフィーとスタイル

ここからはフィロソフィーやスタイルの話ですね。

一時期『フィロソフィー作成チーフ』なる役職があったり(苦笑)、部分的には大熊GMも口にしたりしていましたが、今回クラブとしてハッキリと打ち出したことに意味があります。遅かったですが、サポーターとしてはその通りにやれているのかを見極める指標ができたことを歓迎したいです。また、こういうフィロソフィー関連の話は抽象的なので、「そんな当たり前の話をするなよ」という意見も出ることがありますが、その当たり前を言語化できていないから立ち返るところがないと言われるのです。エスパルスにとっての当たり前はどういう部分なのかを示すことが大事であって、それが大まかに出たのが今回の会見だと考えています。ゼリカルド監督が招聘された昨夏以降にピッチ上で見えた方向性と重なる部分もありますので、利用する形で定義したということも分かります。とにかくこれをやり続けることが重要になります。

サッカースタイルの話になった時に、大熊GMが「つなぐことが目的なのかは議論になった」とおっしゃっていましたが、「自分たちの意図でボールを動かし続ける」というのは、ショートパスでビルドアップすることと同義ではないはずです。「優位性を保ってゴールを狙う」と言うからには、例えばCBからFWへ1本のロングパスで背後を取ることが相手の弱点を突くことにもつながって有効だと判断できればそうすべきだということだと思います。誤解されやすい部分でもあると思いますので、大熊GMを中心にクラブのほうからも何らかの形でサッカー観を発信していただけたらいいのかなと思います。

最後に、各部門のアクションプランが提示されました。育成にはもちろん「プレミアリーグ昇格」の文字がありますね。

気になったところとしては、トップチームの「メンタルトレーニングの導入」。他クラブでもメンタルトレーナーが招かれたりしていますが、浮き沈みの激しいチーム状態を改善していける方策が見つかることを祈りたいです。また、フロントの「スカウト強化」の部分に「年齢・ポジションバランスを考慮」とあえて入れたのも、近年の編成面の偏りを意識していると考えられます。ここはロードマップともリンクさせて、数年後にどういうチーム編成を理想とするのかを描かなければ動けないと思いますので、フロントの腕の見せどころと感じます。

2023選手編成

せっかくなので、選手の編成についても触れちゃいます。

大熊GMは清水が4バックで戦っているイメージしかないようで、そのつもりで編成したような話をされていたのと、更新が発表されていない選手については海外移籍できる可能性がある限りは彼らの夢を待つというふうに聞こえました。そのうえでポジション別に振り分けると下記のとおりです。


GK:大久保、梅田、阿部、※権田
CB:高橋、菊地、監物、落合、井林、鈴木義宜
SB:山原、北爪、岸本、吉田
DH:ホナウド、竹内、宮本、白崎、ヘナト、成岡、※松岡
SH:カルリーニョス、中山、西澤、コロリ、齊藤、乾
ST:神谷、ディサロ、北川、※鈴木唯人
CF:オセフン、森重、加藤、※サンタナ


個人的には選手数の多さ、“乱獲”について疑問を呈してきた立場ですが、ルヴァンカップと並行になる今季は結果的にこれでスタートするのも理解はできますし、もし※の4人が残ればポジションバランスも整います。J2降格でもこれだけ揃えられるのは、やはり大熊GMの手腕によるところが大きく、そういう人材がいるうちに悪いサイクルを断って軌道に乗せたいというのが本音です。

まとめ

正直、新体制発表でここまでまとめてくるとは思っていませんでした。それが取り急ぎだったとしても、まとめて出すことが大事でしたので、評価はしたいと思います。昨季の終了が11月頭で、例年のシーズン終了が12月頭だったことを考えると、いつもより1ヶ月間の猶予があったことで、今回のように取りまとめる時間も作れたのではないかと想像します。

ただ、出して終わりでは意味がありません。これがスタート地点です。まだ降格のショックもあれば、クラブにまた裏切られるのではないかという不安もあって当然だと思います。社長もGMも継続で抜本的な改革に挑む今季は、このまま沼地に入るのか、本当の意味で這い上がれるのか、エスパルス31年の歴史において最も大事な一年になるかもしれません。良いものは良い、悪いものは悪い、是々非々でその行方を見守りたいと思います。

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