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あと一歩、あと半歩の努力を(川崎F-清水まとめ)

等々力へ行ってきました。自分たちがコントロールできないものと戦っても仕方ないので、コントロールできるものに目を向けたいです。

フォーメーション

GK権田
DF原・立田・鈴木義宜・山原
MF中山・白崎・松岡・カルリーニョス
FWサンタナ・北川


FWマルシーニョ・小林・家長
MF遠野・脇坂
MFシミッチ
DF登里・谷口・山村・山根
GK丹野

うまく滑り出した序盤15分

直近3試合未勝利の流れをダービーで払拭し、ある程度の手応えを持って川崎F戦に臨めればよかったですが、日程の変更で計算が狂ったことは事実としてあります。また、川崎Fは逆転優勝への望みをつなぐために、人がいなかろうがアグレッシブに来ることが予想されましたので、清水の試合勘も含めて、最初はぎこちない入りになる可能性もあると思っていました。

ただ、3分にビルドアップに失敗して小林にシュートを打たれた以外は、自分たちからボールを奪う、ボールを握るという作業ができていて、悪くない入りでした。

ボールを奪う部分で言うと、北川とサンタナの2トップを採用したことに一つの狙いが見えます。最近は相手のアンカーをカルリーニョスがケアしながら、ピカチュウと乾の両SHが外を切りながらけん制をかけるという形での守備でしたが、まず4-4-2でセットしてからボールホルダーに出ていく。また川崎Fのうまさで外された場合にも、中山とカルリーニョスの献身性を活かしながらSBのフォロー、セカンドボール回収に力を発揮してくれという形で入ったと感じました。8分に右SBの山根にパスが出て後ろ向きになったところをカルリーニョスがつついたように、川崎Fは4-3-3の形から初期段階ではそんなに形を崩してこないので、相手の立ち位置やボールの動きを見ながらスライドして対応することは難しくなかったと思います。

ボールを握る部分では、川崎Fの両ウイング(家長やマルシーニョ)は外を切りながら中にガンガン来ますので、逆手に取って外にボールを運べれば一気に前進するチャンスになります。5分には、鈴木義宜がマルシーニョの動きを見ながら原にフィードを出して、中山が下りていって前にできたスペースに白崎が走り込んで前進、シミッチの寄せを利用してサンタナに横付けして、サイドチェンジのパスが主審に当たってしまうも山原につながり、北川にクサビを入れ、サンタナが左足でフィニッシュという場面までいっています。15分には、鈴木義宜の配給に対してカルリーニョスが山根に競り勝ち、サンタナがキープして、カルリーニョスが抜け出し、北川が中央の空間でキープ、中山が中央に立ったことで右が空いて白崎が受け、原がオーバーラップしてマイナスのクロスに北川が合わせたというシーンも、良いビルドアップです。全体がどこに立てばスムーズにボールが動くのかを把握できているように見えました。

チャレンジを忘れた痛恨の30分間

悪い時間に入ったのはそのあとからです。17分、家長が外を切って寄せてきたところで鈴木義宜は山原に展開を狙うも、脇坂にカットされてショートカウンター。19分、右サイドで原がスローインを入れようとするも、最近のゲームでも見られるように出しどころに困って北川がロスト。20分、権田からのリスタートで原へ蹴ったがラインを割る。このあたりで自分たちからボールを失い、落ち着きがなくなりました。後ろからボールを動かしていくのにミスはつきものですし、劣勢の時間帯は必ずあるので、ゲームの雲行きを察知して、「ここは落ち着かせよう」という意思表示をすることが大事ですが、それがあまり見受けられませんでした。相手に狙われていると感じたなら、1人1人が立ち位置を変えて、ボールを持っている選手に選択肢を提供してあげることが必要ですが、全体的に脚が止まってきていたのが気になりました。

こうなると川崎Fがボールを握り、4-4-2で形成したブロックがジリジリと下げさせられ、出ていけない状態になります。山根も脇坂も背後へのランニングで揺さぶってきて、いわゆる5レーンに選手が立つ格好だと、清水は4バックで対応し切れなくなりますので、その場合はカルリーニョスか中山のボールがあるほうのSHが下がって5バックで対応していましたが、そうすると中盤の人数が足りません。なんとかラインを上げられるように、白崎が持ち場を離れてボールホルダーに出ていきますが、白崎が単体で動くだけで周囲が連なっていないので、気づいて立田が出た時には鈴木義宜と段差ができて、小林に背後を突かれる危険が増します。8月の清水が我慢強かったのは、守備の局面で1人1人が脚を動かしていたからで、この日のようにすべてが後追いでは難しいと思います。そして、28分に失点。セットプレーで鈴木義宜が跳ね返したあとの遠野の左足、原と鈴木義宜の間を閉じられませんでした。

このままではいけないということで35分、カルリーニョスが意を決して山村にプレッシャーを掛け、山原と鈴木義宜がそれに追随するアクションを起こしてベタ引き解消にかかりましたが、小林をつぶし切れず、山根と脇坂で打開されてしまいました。サンタナが孤立してイラ立ちを露わにしたのはこのあたりからです。保持の局面でも、失点の直後に白崎がボールを受けた時、彼の技術であれば前を向けたと思うのですが、遠野とマルシーニョのプレッシャーをまともに受けてロストしてしまい、さらに相手の勢いを助長してしまいました。こういう場合、まず相手を押し下げる必要がありますので、この日でいえば背後へのランニングができる中山に蹴って、登里と競走してもらうというのは手段の一つです。ですが、相手が前から来ていない状態で立田が蹴り込んでいたことや、逆に相手が来ている中で出そうとしても原と松岡の距離が遠くて配給できず。川崎Fも何度かボールを失っていたのですが、清水もそれにお付き合いするような格好で、押し返し方の共有もできないとなると、前半をこのまま過ごすのは当然だったと思います。原の正面にマルシーニョが立って横から遠野が来ると塞がれてロストというシーンが頻発し、後半には松岡に出したくても出せない原が両腕を広げて「なぜ来ないんだ」とアピールしていましたが、どうも同じ絵が描けていないようです。すべてを白崎に託すのは難しいので、松岡も原も、相手がこう来たらこうしたい、どこで欲しいのか、どこで背後を狙うのかというのを共有しないとまた同じことが起きそうでした。

前半アディショナルタイム、数分前のセットプレー後に谷口と衝突して背中か腰を痛めていた権田が、フィードを思うように蹴れず家長に渡ってしまい、小林→脇坂で2失点目と思われましたが逸機で救われました。ハーフタイムまで待てば交代回数を削られずに済みますので、我慢していたのかもしれません。谷口のプレーにいろいろ言われているようですが、GKが素早くリリースするのを防ごうとすることは多いですし、それに先日の代表遠征で権田が痛めたことは、その場にいた谷口も分かっているはずです。とにかく権田にはカタールで日の丸を着けてもらうべく、ひどくならないことを祈るばかりです。

エンジン再稼働

後半、見違えるように変わった姿勢を見せました。まずシミッチから登里への横パスに対して、中山がチャレンジしてインターセプトに成功、その流れから遠野が慌ててプレスバックしてファウルを誘いました。前半のままであれば、登里が進出するコースを消しにいったと思いますが、脚を動かしてチャレンジしたことが前向きな姿勢を呼び覚ましたと思います。後半はまずボールに行くというのが徹底されました。

そして49分に同点に追いつきます。ここも松岡と脇坂の争いでセカンドボールをマイボールにできたことが発端で、前半の序盤以降はなくなっていた北川が左に流れる動きで山村を釣り出し、スピードアップした状態でカルリーニョスが左の奥に走って山根とシミッチを置き去りにしました。この日の攻撃の狙いであった背後を突くプレー(ゼリカルド監督)を出せた結果、ニアに走り込んだ白崎がフリーになったということで、狙い通りに取れたゴールだったと思います。

川崎Fはリズムを取り戻そうと、また家長が左に出てきて人数を割いてきます。ですが、清水は前半と違って全体が縦にズレるようになったのでコースを限定でき、マルシーニョが幅をとったのを利用して登里が内側の遠野に差し込んだパスを原がインターセプト。川崎Fはその時点で山根が内側にポジションを取って厚みを出そうとしているので、広大なスペースが空いています。まして1対1でも平然と止める力があるジェジエウも、ボール奪取力の高い橘田もいませんのでカバーし切れません。北川に合えば1点という惜しい場面を作ったあとの56分、右サイドのタッチライン際で北川が登里とのルーズボールの拾い合いを制してサンタナ→山原でクロスにカルリーニョスが合わせて逆転。カルリーニョスはゴール前で谷口から離れる動きをしたものの、これといって駆け引きしたようには見えませんでしたので、川崎Fがバタバタしているのに乗じたゴールと言えるんじゃないでしょうか。

川崎Fはすぐさまフィジカルの強い知念を入れて、ボランチ2枚に知念がトップ下の形に変えてきました。そこで起点を作られてしまうと、どうしても下がる場面は出てきます。脇坂と知念の関係で攻略されかかった63分の場面では、松岡が下がりすぎず懸命にこらえてブロックに行けましたが、直後に山根に背後を突かれてクロスにフリーのマルシーニョ。前半と同様に苦しい時はSHを下げて5枚で対応するも、川崎Fはそんなのお構いなしに突撃を繰り返してきます。そうなると前半のような展開を避けるために、脚を動かせるような体制を組まなければならず、66分にピカチュウ、71分に乾を投入します。乾を入れる時には、ゼリカルド監督が5本の指を立てて大外の指を持ちながらアップダウンの指示をしていましたので、状況に応じて4枚と5枚の対応をしてくれという依頼だったと思いますし、乾も分かっている様子でした。この展開なら、ハードワークができて中山と同様に飛び出していける後藤がいれば……というのは思いましたが。

ピッチ内からベタ引きにならないよう意識していたのは伝わってきていて、白崎が谷口のところまで出ていって前線の追い込みを促したのが68分。そこは川崎Fにパスワークで打開されたものの、72分、家長が中央で受けてどこから進入しようかというところで白崎が狙い撃ちし、4対3の数的優位でショートカウンターを繰り出すことに成功しました。白崎はここぞの決定力を信じてサンタナを選択するも、パスが短くシュートへ行けず。左足で打てるところに置けば3点目を取れた可能性があり、ここがターニングポイントだったと思います。

またもセットプレー、魔の2分間

76分の同点ゴールはCKからでした。松岡がカバーしているエリアの奥まで山根が入り込んできて、後ろ向きの対応にならざるを得ませんでしたので、CKを与えること自体は起こり得ると思いますし、出場機会が多いとは言えない山村に立田を付けているわけですから、警戒すべきなのは分かっていたと思います。ゴールから遠ざかるボールに対して山村が腕を使いながら立田をうまくほどいたという言い方にはなりますが、少しでも良い体勢で打たせないように付いてもらうしかないというところです。

逆転ゴールを許したのはその2分後。川崎Fは知念・家長・脇坂・シミッチの4枚が中央で回していて、山村がフリーで出てこられる状態でした。清水は外にいた山根に対して山原がスライドして、奥に走ってきた知念には鈴木義宜が対応しましたが、その瞬間に全体が気を取られて山村を管理できませんでした。バランスを考えると、山根には乾がスライドしたほうが良かったかもしれませんが、あの状況でも松岡がもう少し我慢して前に踏ん張っていれば山村のクロスを防げた可能性もあります。しかし、いずれにせよピカチュウは下がってきている以上、マルシーニョに前に入られてはいけないです。ここはどれだけ準備できていたかになるのかもしれません。

清水ベンチは同点のタイミングでコロリと鈴木唯人を準備していました。川崎Fが勝ちに来ることが予想され、カウンターで裏返せる可能性はありましたから、できれば早く入れたかったですが、そのまま2トップ同士をチェンジ。サンタナが交代時に歩いてベンチに向かったのは残念ですが、そういうフラストレーションが感じられた以上、交代はやむなしと言えます。チャンスとしては、82分のCKを山原がクイックで始めて乾のミドル。そして86分、コロリのキープから鈴木唯人のサイドチェンジが主審に当たるもプレーオン、山原が逆サイドに展開したボールによく反応していた原が折り返してピカチュウのヘッドが決まるもオフサイドでした。川崎F側はラインコントロールできておらず、サイドを揺さぶって攻略したのですが、ピカチュウが我慢できずに少し前に出ていたのがもったいなかったです。コロリにはある程度ボールが収まっていましたので、もう少し押し込みたかったですが、やや雑だったのは否めません。ビハインド時にどうするかはもう少し詰めても良さそうです。

まとめ

決定的に何かが欠けているという状態ではないので、モヤモヤする敗戦ではあると思います。しかし、ここ3試合はすべて一度リードしているのに勝点1しか取れていませんので、ゲーム運びに課題が残ります。湘南戦、福岡戦、川崎F戦と展開自体は異なっていますが、挙げるとすれば、8月の戦いに比べるとラクをしていないか?ということです。“攻守に主導権を握る”というスタイルが具現化され、一定の成功体験も積みましたし、方向性がブレている様子もないのですが、相手も清水を研究してきます。そうなった時に、ボールを失ったらすぐ取り返しにいける位置にいるとか、ボールを動かしにくいなら動かしやすい場所を見つけるとか、最良の選択肢を作り続ける作業は1人1人が脚を動かさないとできないものです。前半の15分以降と後半の立ち上がりは全然違うわけです。やり方を大きく変えたようには見えませんでしたので、ここまでくれば意識の問題です。それが、ゼリカルド監督が就任して4ヶ月程度のチームの現在地で、「意識から変えるには時間が足りませんでした」となる可能性は、残念ながらあります。でも、それはもう長年の蓄積で仕方のないことであって、近年にはなかった主導権を握るスタイルでここまで来ていることに希望を見いだしているのが現在。ならば、このやり方で突き抜けたいじゃないですか。だから、ここは監督の口癖である“ハードワーク”を全員が体現すること、味方のために走るとか、少しでも相手に寄せるとか、ちょっとした動きを増やすだけで結果も変わってくるという部類だと見ています。

静岡ダービーまで2週間あります。最近のゲームで足りなかったことを踏まえて、いろいろなものを精査する最後のチャンスだと思いますので、抜かりない準備をして、ラスト3に臨んでもらいたいと思います。

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