見出し画像

実は今年初の1-0(清水-京都まとめ)

清水まで行った甲斐がありました。終了間際に追いつかれる試合は前節だけでなく、監督交代前にもありましたし、やっと1-0で勝ち切る試合ができたなと。課題はまだありますが…。

フォーメーション

GK権田
DF原・立田・鈴木義宜・片山
MF白崎・ホナウド
MFピカチュウ・カルリーニョス・乾
FWサンタナ


FW木村・山﨑・武富
MF武田・金子・福岡
DF本多・麻田・井上・白井
GK上福元

不測の事態にも動じず

京都は中止の試合が挟まったりして3週間ぶりの試合ということで、フレッシュな状態でアグレッシブにやってくることは想定されました。そして清水は山原、松岡とキーマンになっていた2人を欠く事態に陥り、全体の設計に変化が生じるのはやむを得ないということで、難しい展開になるだろうという予測の下に観始めました。

ただ、最初の15分は京都のプレッシャーに苦しむことなく、思ったよりスムーズにスタートできた印象です。4分にサンタナが収めて右へ展開した流れから、裏にピカチュウが走って、カルリーニョスの折り返しに左で空いた乾がシュート。これは前にかかってくる相手をひっくり返して下げさせ、手前のスペースを空けてラストパスを出せたシーンですが、京都は清水のボールホルダーに必ず1人が出るも連動しない立ち上がりで、清水は斜めにパスを出せば相手の背中を取れて簡単にボールを運べ、サンタナがバイタルエリアで浮く形を作れていましたし、相手の対応が後手に回ったのを見て原が裏に飛び出すなど、良い形がありました。

京都からすれば、山原が左SBにいる前提で準備するのは当たり前の話で、そこから前進されないよう、右WGの武富と右IHの福岡が連係しながらプレッシャーを掛けるイメージを持っているように見えましたが、結果的にスカウティングを回避しました。また、松岡のところがホナウドになり、ホナウド自身がタメを作りながら鈴木義宜に渡して運ばせる印象も通常よりありました。ホナウドは久しぶりの先発ながら、激しい攻防が予想された中盤でのボールの奪い合いで高いパフォーマンスを発揮し、的確につないで攻守のつながりをもたせていました。

徹底した京都の戦いぶり

ただ、15分を過ぎて京都も対応の仕方をつかみ始め、白崎へのプレッシャーを強くし、それに連動して圧力をかけてボールを奪い始めました。京都は奪ったらまずトップの山﨑に蹴り込み、セカンドボールを拾って優勢に進めたい狙いが垣間見えます。単純な競り合いでは山﨑が強いので、どうしても相手にこぼれるシーンはあり、京都はサイドに散らして、低く速いクロスボールで勝負することを徹底していました。ウタカがいればまた違った形も考えられますが、オール日本人で組まれた今日のメンバーの特徴から逆算すると、その攻撃パターンが最も怖く潔さがあっただけに、嫌な雰囲気はありました。そして21分、京都の左サイドに展開されて、本多の低く速いクロスに福岡が飛び込む形で狙い通りに先制された……と思ったのですが、VAR介入でオンフィールドレビューの結果ノーゴールに。スローインをトラップした山﨑のハンドがあったという判定で助かりましたが、山﨑がキープしたあとに福岡のドリブルを片山とホナウドで阻むことができず、脱出されたのは問題です。

手応えをつかんだ京都は、ここから山﨑へのロングボールに頼らず、右サイドで丁寧にビルドアップする形も披露。福岡が下がって、右SBの白井が内側を抜けて、武富が幅を取る形で清水の守備を惑わせ、白井→武富で奥まで入られて、クロスに山﨑が合わせる決定的な場面を迎えますが、ここは権田が止めてくれました。京都は山原の背後という狙いの予定だったかもしれませんが、彼がいる・いないにかかわらず、いわゆる“ハーフスペース”と呼ばれるサイドの内側のエリアをどうカバーするのかは清水の弱点で、今回はホナウドが埋めようとしましたが間に合わない場面がありました。ここは動く量の多い松岡だったらカバーできた可能性もあり、違いと言えるかもしれません。

押される展開になった清水としては、ボールを持てるように調整するのが最近のパターンで、実際にトライはしていたと思います。特にこの日は右SBが片山でなく原に戻ったので、白崎とピカチュウによるローテーションの動きが少なく、白崎はより中央で受けようとしていましたが、後ろとの息が合わないこともありました。ならばと原が内側に入ってピカチュウを下ろしてみたり、白崎が真ん中に残って片山を高い位置に上げた時にホナウドを左に下ろすこともたまにやりましたが、スムーズに出せていたとは言い難いです。なんとか原が個人で剥がして打開したり、立田が相手をいなしたりしていましたので、危険な失い方が頻発していたわけではありませんが、京都は立田のところに左IHの武田を押し出して、中央は山﨑、サイドは武富と木村で蓋をしてきてプレッシャーがハマりだすという展開になりました。

ブレずに辛抱した結果の先制点

後半の入りも、清水はビルドアップがうまくできません。これだけの活躍をすればサンタナへのマークはキツくなって当然ですが、京都はCBとアンカーの金子でサンドイッチして必ずサンタナの自由を奪っていました。金子を使ったのはそれが理由だとも思いますが、そこからセカンドボールを前向きに拾って厚みを生み出す京都。53分には右サイドで細かくパスを刻まれて清水のプレッシャーが回避され、白崎が相手に引きつけられた中央のスペースに武田から縦パスを差されるなど、あと少しで最終ラインを破って崩し切れそうな感触があったはずです。特に右IHの福岡の動きが秀逸で、運動量も多いですし、ビルドアップへの関わりも多くて、なかなかそこに圧を掛けられませんでした。

それでも、こういう難しい時間帯で耐えられるようになったのが8月の清水で、立田と鈴木義宜の2人が懸命に脚を動かしてポジションを取り、体勢を崩しながらも跳ね返すことをやり続けてくれました。今の清水はピカチュウ、乾、カルリーニョス、サンタナの4枚による強度の高いアタックが持ち味ですので、一方的に相手に攻め込まれることは考えにくく、55分に乾がヒールでサンタナにつなごうとした場面や、白崎のクロスにピカチュウがボレーで合わせた場面など、単発ながら押し返すシーンがあったことも確かです。65分にはまたホナウドがセカンドボールを拾ってくれて、原のクロスに片山のボレーというこの日一番の決定機。流れが変わりつつありました。

そして68分に待望の先制点が生まれるわけですが、シュートは乾のテクニックがずば抜けていて見事と言うほかないとして、そこまでの作りが見事でした。立田が左足で放ったフィードは前半にも1本あり、相手の武田はこれを切れていませんでしたので、また狙っていたのではないかと思いますし、そろそろ背後を1本取りたいなというタイミングで内側のレーンを走った片山の動きも秀逸。片山の左SBは久しぶりでしたが、乾が左で幅を取る役目なので、自分がどこにいればいいかは分かりやすかったと思いますし、前半から何度も内側を抜けてくれていましたので、さすがの戦術理解度と思います。カルリーニョスも良い位置でフォローして左につなぎました。見事な連係です。

同じ“1-0”、今度はどうする

今度は前節の柏戦の反省を活かして、まず2点目を取れるかどうかでした。畳み掛けるように右サイドでピカチュウを走らせたり、乾がもう1本来るか?というカットインを見せたり、圧力は掛けていたのですが、京都も攻め疲れで気落ちするどころか攻勢を強めてきてシビアな展開になります。豊川が入ってきて、山﨑が起点になるだけでなく左足を振る場面が出てきたり、さらにCKが増えそうだという流れで大前を入れてきたり、相手も準備期間が長くていろいろなものが備わっていたんでしょう。77分にはCKのクリアを大前に拾われて白井に縦に仕掛けられ、乾がプロフェッショナルファウルで覚悟のイエロー。さらにCB井上からの配給を阻止できず、大前に左サイドで収められてしまい、最後は川﨑のミドル。こうなると柏戦の苦い記憶が蘇ります。

ひとまずカルリーニョスが交代を要求して北川を入れ、警告を受けた乾を後藤に代えますが、本来なら全体を下げすぎずに進めたかったはずです。しかし、コロリがいない、ホナウドが先発だったので途中から入れられない、前節は宮本を入れた直後に失点しているなど、いくつかの理由でゼリカルド監督は交代を慎重に判断していた印象で、ラインを上げるのは難しくなってきました。ベンチに鈴木唯人が帰ってきましたが、逃げ切るためのコマとして使うにはまだ不安があるという判断だったと思います。

そうなると、あとはいかに時間を使うかになってきます。ここは良い面と悪い面と両方ありました。権田がキャッチしたあとリリースした判断が悪くて自陣で失ったところ。あるいはホナウドの戻りが遅れてバイタルエリアを埋められなかったところ。87分に豊川の決定的なミドルシュートを権田が防いだシーンもクリアが中途半端で人がいるだけになっていましたし、見直すべき点があります。一方で、柏戦でうまく試合に入れなかった印象の北川が、ボールホルダーを追う、背後に出てシュートを打つ、キープするなど役割を果たしてくれたことは収穫でした。原も復帰戦で左太ももにテーピングを巻きながらフル出場でしたが、FC東京戦に続いて苦しい時間帯にボールを離さないで時間を稼いでくれたのはファインプレーでした。

ゼリカルド監督は最後、ヴァウドを入れて5バックにすることにしましたが、コロリが外れて外国籍枠が空いたことでベンチに入れられたという側面もありますし、5バックだとベタ引きになりがちですが、ボールにプレッシャーを掛け続けてくれるホナウドの良さを利用する形にもなったと思います。

まとめ

8月の4試合は3勝1分け。難しい試合ばかりでしたが、柏戦の最後の失点を除けば全てクリーンシートということで、いよいよ失点癖、負け癖は解消の気配です。数字ほどうまく守れている印象もないですが、勝って課題を修正できるのが一番いいことです。これだけのV字回復を見せた以上、残り試合は上を見て戦っていくだけだと思いますし、戦っている選手たちがそれを一番に思えているのが、今のチームの良いところだと思います。新体制になって2ヶ月ちょっとですが、今が一番楽しい時期かもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?