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# 62 医師が覗き見る「日本社会のイマ」

コロナショックに見舞われ、早、1年超となった。ここの所、日本の経済は欧米に比べて成長が鈍化していると言われる。それはワクチン接種の遅れであると単純に結論づけることはできるのだが、他にも要因がありそうだ、その辺を覗いてみる。
.....今回はごく一般的な話題であります.....

昨年の5月13日、米国パウエルFRB議長は「失業が長引けば持っているスキルの価値がなくなり、人脈も失われるため、労働者のキャリアに傷がつくか、終わる可能性がある。そうなればその家計の債務が大きく拡大する」と警告。「全米で数千もの中小企業が倒産すれば、多くの企業や地域のリーダーが一生かけて築いた仕事や先代から受け継いだ事業が失われかねない。そうなると経済が回復を迎えてもその力強さが限られてしまう」とも述べた。
議長が言いた本音は、『もうこれ以上、金融政策では難しい。財政政策を政府にお願いします。』と言うことだったのだ。これは、その後の巨額の財政出動へと繋がって行く。
この時点では、米国経済は危機に直面していたのであろう。

財政政策はバイデン政権下で本格化して、次々と大型のそれが提案されている。まさに、MMT理論を実践している米国なのである。この雰囲気はインフレ懸念を誘うのであるのだが、財源は富裕層への増税で賄うということも併せての戦略であり、インフレへのブレーキも忘れていない。

一方で、日本も財政政策を積極化して行った。しかし、多くの企業では潤沢な内部留保で雇用を繋ぎ止め、米国ほどの財政出動をしなくても失業率はさほど上昇しない状況であった。サラリーマンの『在宅勤務、それとも待機』などと言う言葉が囁かれ、待機の場合には読書などの余暇を楽しむ様な余裕にも繋がっていた。これは多分米国でも同様で、生活支援金を受注して、仕事をしないで、のんびり家族と過ごしている人々が多いのである。
いわゆる労働参加率の低下という現象を引き起こしている。これは景気が上向きなのに財政出動を続けているジレンマでもある。いつかは消えてゆく現象でもある。

冒頭に戻ると、日本の21年度のGDP予想は昨年と比べ4.0%増の予測であるが、米国は6.3%成長予測であり、ここに来て完全に振り切られている。米欧では物価上昇が勢いづいている。『米国の3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.6%上昇と2年7カ月ぶりの高い伸びになった。カナダの3月の物価上昇率も2.2%、ユーロ圏も1.3%と持ち直し基調にある。対照的に日本はなおデフレ懸念がくすぶっている。3月のCPIは0.2%下落と6カ月連続のマイナスになった。』と報道されている。

米国ではGDPの7割が個人消費と言われる。雇用がままなら無いにも関わらず消費は活発で、物価も上昇、GDPも急速に回復してきている。これは政府からの補助金を消費につなげている米国人気質による所が大きい。しかし、忘れてなら無いのが、コロナ前にほぼ経済が回復しているのは、コロナ禍で省人化が密かに急速に進み、生産性の向上に繋げているという事であろう。DX(デジタルトランスフォーメイション)が益々進んでいるのかもしれない。
日本は国民性であろうが、お上から頂いたお金は大切に老後の蓄えとして貯金に回して、結果、お金が回ら無い、消費が活性化しない、だからGDPも上がりにくく、そんな日本に製造拠点を置くより、経済成長著しい海外に出て、利益につなげたいという、そんな悪い循環に陥っているのかもしれない。

この様な短期的な見方と一線を画するのであるが、欧米では雇用は回復し無い一方で、賃金が上昇し始めている。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「欧米では賃金とサービス価格が恒常的に上がりやすい。日本は賃金が上昇しないため企業による値上げの動きが出てこない」と分析する。賃金の上昇がないと、それで無くても貯蓄思考の強い日本では消費は喚起されにくく、低インフレが継続してしまうのである。これは長年、日本の課題でもあり続けた。

賃金の問題で、狭い日本にも関わらず、都道府県で最低賃金が違うことは不思議である。医療機関では東京都の場合は人件費が高い、1方、地方は低いことから、地方の医療機関の経済力は強く、東京の中小病院を盛んに買収している。その場合、病院名はそのままである事が多くて、都民には経営者の交代がわからない。
所が、一般的な就職では東京と地方の賃金格差を期待して、東京都への人口流入は止まら無い。コロナ禍で多少それは減っているのだが、それでも人口流入は人口流出を上回り続けている。この様な日本独自の最低賃金の問題点、疑問点を兼ねてから繰り返し述べているのだが!

ここまで覗いてみるに、如何にして賃金の上昇を加速させるのか?という事が肝心要になると考える。
ワクチン接種が進み、日本でも1年以内に集団免疫を獲得して、post-コロナへ突入して行く。そこで長期目線であるのだが、生産性の向上に如何に向き合うのか?

政権に期待する。

コロナに密着してゆきます。









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