死にたいやつは短歌を読め
インスタのdmで「今度現代短歌の話しましょう!」と言ってくれた後輩へ
私はお前の誘い方も分からなければ、お前がよく落ちてる文さには滅多に行けなくなってしまったので、この場を借りて現代短歌の魅力を語ろうと思います。
詩人の谷川俊太郎氏は、「ふつうの言葉は真偽に責任がある」が、「詩はうつくしさに責任がある」と語ったそうです。
現代短歌は言葉ほど正しくもなければ詩ほどのうつくしさもないです。生活感があるやつとか、生きづらさを肯定するやつとか大喜利っぽいやつとかいっぱいあります。
私の好きな歌集をいくつか紹介していくね!
心に残る一歌がありますように!
一冊目多分これ初めて買った歌集です。ブルーノート観に行く前に下北沢の本屋で出会いました。なつみちゃんは薄情なので、一緒に行ったことを覚えてないと思います。
とりあえず5首
有給で泥だんごつくるぼくたちは世界でいちばんいちばんぴかぴか
「豆腐屋の二階に住んでた矢野くんは今もうんこで笑ってくれる」
メイド喫茶のピンクはヤニでくすんでて夢なんて見ない自由があった
今日までを生きてて良かったんだよね 鳥貴の釜めしまた食べようね
大体はタンパク質と水なのにどうして君が好きなんだろう
どう?世の中へのヘイトと生き辛さと寂しさをユーモアでユーモアで消化しつつ、泥くさく生きてくことを肯定する強さがあると思います。良くない?
ちなみに5首目はチェンソーマンについて書いたものらしい。好きです。この本で初めて、あ〜現代短歌って別に綺麗な情景とか描かなくていいんだ、もっと人間らしい人間の感情とか飾らない感覚とか描いていいんだって思いました。
次行こ!
たしか神保町の本屋で買いました。丸の内線の中で見てこれおもろいよって見せたら笑ってくれたような気がします。違ったっけ?違ったらごめん。
無駄なことばかりしようよ自販機のボタン全部を同時押しとか
平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ
南極に宇宙に渋谷駅前にわたしはきみをひとりにしない
愛だった もしも私が神ならばいますぐここを春に変えたい
まだ明るい時間に浸かる銭湯の光の入る高窓が好き
私も好き!ちっさい日常の嬉しさとか悲しさなどを丁寧に描いている気がします。合理的でないものを大切にしてる気がします。世の中たまには有給で泥団子作ったり昼間からビールや銭湯に行くことが大事だし、これを大事にする人はきっと他人にも優しいから友達になりたい。自販機のボタン全部押ししたいねって思ってくれる人はぜひ遊んでください。
あとはわんこへの愛をひしひしと感じる歌が多いです。他にもユーモアたっぷりの素敵な歌がたくさん載っているので読んでみて!
まだあるよ〜
弊社の向かいの本屋で昼休みに買った本です。タイトルだけで買いました。
「あのバスに乗ろう行き先海じゃないけれど風とか強そうだしさ」
摘む花をすべて忘れて僕たちがずつと寂しくありますように
夜の地平線のあたりでぼやけてるあれがイオンでその右が月
「悪いけど精神科医と弁護士と野菜ソムリエは信用しない」
今日の『アメトーーク‼︎』のお題なんだっけそっかそれなら別にいいかな
Twitterっぽい歌がめちゃめちゃ載ってます。詩や短歌って内面的なものにフォーカスすることが多いと思うんだけど、べつに31字全部話し言葉にしたっていいんだもんね。
個人的には3首目が結構好きです。有明の月、夜半の月、月のことなんて千年前から歌われてきましたが、令和の月はイオンの隣にあるんだぜ
ちょっといいよね。この本の短歌はちょっと捻くれて口語的で、友達が少なさそうな感じがします。ぜひ手に取ってみて。
そろそろデッキが少ないので最後です
これも東京モード学園の近くで買いました。
ケルベロス、おねがいわたしになるまえのわたしのことも好きって言って
どうやってどうしてここへ 影のない恋人が海で拾うガラス片
夜があたしに懐くから、行こう ベイビー、ユートピアはすぐそこよ
記憶のためのさみしい水面が脳にあり、そこでようやくやさしくできた
夜の海は空としずかに繋がって音楽をイヤフォンで聴いていた
渋谷の変なバーで一緒にこの海の短歌読んでから、終電で江ノ島に行ってくれた山本さんありがとうございました。
ぜつてえにもうやらないけど楽しかったです。
喪失の痛みを思いっきり描いてるのがいいです。もう記憶の中でしか会えない人のことを、傷ごと抱えて見つめてる感じがして、読むたびぎゅってなるけど、どこかで救われる気分にもなります。
恋の歌って平安時代から続く普遍的なものですが、本当に10代の女の子が携帯で打ったらこんな文章になるんだろうな〜って思う。
詩歌の世界でだけ、好きな言葉を漢字ではなくひらがなで表記する自由があるなと感じます。
比喩も具体的なものも少なくて、感情の純度が高いから鋭利。落ち込んでる時は過剰摂取注意です。
短歌の本ばかり買っちゃうのは、ちょっと小説を読む時間的余裕がなくなったという悲しい理由もあったりするんですが、31文字でもきちんと突き刺してくれるし、心に残ってくれると思ってます。
その人のものの見方、考え方を切り取って載せたみたいな、写真集を見る気持ちでぜひ一冊買ってみて欲しいです。
短歌を書く人って大体みんな寂しくて繊細で生きづらくて人が好きだと思います。日常で忘れてしまいそうな感覚を、人の寂しさに触れることで思い出すことができると思うんだよね。
なので、正しく厭世観を持っている人へ、ぜひ踏み入れてほしい世界です。
以上です。全部大丈夫になろうね〜〜!!来年はリサイ乗って年会費払いなね!
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