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【務川慧悟】 2021.12/19 森のホール21 ショパン ピアノ協奏曲第1番

2021.12/19 森のホール21
指揮:浮ケ谷孝夫 
東京21世紀管弦楽団
ショパン ピアノ協奏曲第1番
ピアノ:務川慧悟

務川さんのショパンコンチェルト1番を聴いてきました。
とても清らかで優美なショパンコンチェルトでした。

第一楽章での、私の務川さんのベストは、楽譜で言うところの258小節目〜264小節目の7小節間です。(変奏しながら270小節目まで続きます)
務川さんの親友、反田さんの演奏で説明するとここです。
頭出ししたところから。

ここ右手のメロディが
「ソーーファミレドシラーソ」
「ファミレドシラソーファ」
「ミーレドシラソファーミ」
このように、音階をそのまま下がってくるメロディが3回出てくるんですが、左手のアルペジオのハーモニーが1小節ごとに色を変えていくのです。

ここを聴いて、あー務川さんだなぁ(>_<。)と思いました。

ピアニストなら当たり前のことなのでしょうが、務川さんは特に「このメロディがどんなハーモニーの中で鳴らされる音なのか」ということをとても大切にしながら弾いていることがわかりました。
「情熱大陸」で反田さんの演奏に「重要な非和声音が素通りされているところがある」というアドバイスをしたのも本当にうなずけました。
務川さんは、ハーモニーのどんな色の移り変わりも見逃さず、むしろそこがそのような色だからメロディはこう弾くのだ、と表現しているようでした。

そして、同じく同番組で言っていた「痛み」に当たる部分。私はてっきりその部分では、聴いている側も胸がギュッと締め付けられるような「痛み」を感じるように聞こえるのだと思っていました。

しかし私は今日実際に演奏を聴いてみて「その逆だ!」と思いました。
「痛み」に当たる部分では、務川さんがその痛みを大切に大切に慈しんで弾くのです。そのためにその音は「とても大切に慈しまれた音」として「幸せな音」に聞こえました。

正直私が、どの音がそうなのか、などどわかるような耳をもっているわけではありません。ただ、務川さんがメロディの性質からくる「大切にする音」とは別に、ハーモニーの性質からくる「大切に大切に慈しむ音」があると感じました。
その1番効果的で素晴らしい‼️と思ったのが前述の部分でした。

二楽章は、1番務川さんの味が生きる楽章のように思いました。
特にオーケストラの伴奏が途切れてピアノだけになる部分。
極上に美しく、ふわっと音が空間に消えていくような柔らかい世界でした。
特に、メロディの音が上がっていってその最高音でフレーズが終る時。
ふわっと柔らかく音が消えて一瞬の静寂ができる瞬間が素晴らしかったです。

三楽章は少しビックリしました。
こんな優雅な三楽章を聞いたことがありませんでしたから。
あら?最初のところスタッカートはついてないんだっけ?と確かめたぐらいです。

三楽章は元気溌剌で、躍動感があって、冒険心あふれる演奏が主流です。(たぶん)
務川さんの三楽章は、とても高貴で優雅でした。
左手のアクセントの部分も、文字通り曲にスパイスを与えるような力強いものではなく、あくまで上品に軽々と弾いてらっしゃいました。

ところがおもしろいことに、紆余曲折あって転調を挿んで戻ってくる第一主題からはとても快活でした。
務川さんの三楽章は、最初は優雅に戯れるように、そして後半に進めば進むほど快活さが増し、終局に向けて推進力が増し盛り上がっていくのです。
しかし最後まで、わんぱくなことはせず、あくまでも紳士的に上品に盛り上がって大団円を迎えるコンチェルトでした。

このショパンコンクールから、たくさんの協奏曲1番を聴いてきましたが、どれも同じ演奏というものはなく本当におもしろいですね❣

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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