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SUUMO(スーモ)が建築業界に与える衝撃

SUUMO(スーモ)は、これから家探しをしようという人がまず最初にチェックするリクルートが管理する不動産情報サイトである。

1970年代からあった「住宅情報」が、2009年に「SUUMO」となったのだが、当時は全国の賃貸物件から新築・中古物件までを掲載していた。

しかし最近では、それに留まらない。

・賃貸物件(借りる)

・新築マンション・中古マンション(買う)

・新築一戸建て、中古一戸建て(買う)

・土地(買う)

・注文住宅(建てる)

・リフォームする

・売却査定(売る)

・不動産売却、売却査定(売る)

・部屋を貸す、賃貸経営(貸す)

・プロに相談する

・引越し見積もり

・住宅ローン審査

など、ホームページを見れば分かるが、「SUUMO」はこれら全てを手がけている。

ちなみに同様のポータルサイトは他にもある。

「LIFULL HOME'S」「at home」「いい部屋ネット(大東建託)」「CHINTAI(エイブル)」「Century 21(センチュリー21)」「ホームメイト(東建コーポレーション)」「Yahoo!不動産」「スマイティ(価格.com)」など、主要なものだけでもこれだけあり、細かいもの含めるとまだまだある。

更にはこれらポータルサイトを集めたポータルサイトすらある。

一体この状況は何なのか?

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何故、この様な 家を買いたい人・借りたい人と、売りたい人・貸したい人のマッチングに、こんなにも多くの事業者が参入して、激戦を繰り広げているるだろうか?

それは

おいしい話

だからである!

なぜか?

過去からの経緯を振り返ると分かり易い。

例えば、家を借りる場合を考えてみる。

インターネット普及前は、まず場所を決めて、そこへ行き小さな地場の不動産屋を巡り歩いく、もしくは一軒一軒電話をかけて物件をFAXしてもらっていた。

次に、主要駅に大手不動産があるという状況になり、物件が集約される様になり、地場の不動産屋を巡り歩く必要は無くなった。

インターネットが普及してくると、大手不動産会社のサイトに行けば、その会社がもっている全ての物件の中から探せる様になった。

そして、不動産会社に関係なく物件を扱うポータルサイトができると、その地域のあらゆる物件の中から探せる様になった。

これは、最初は物件も客も限られておりマッチングが難しかったものが、地場の不動産屋→大手不動産会社→そのサイト→ポータルサイトとなるにつれ、物件も客も沢山集まる様になり、そのマッチングが簡単に成立し、そして自分に合ったものに巡り合える様になっていったという事である。

更に、現在では、先に記したように、家を借りるだけでなく、様々な理由で、実に多くの人たちが集まる場となっているのである。

この「多く人たちが集まる」というのが価値になることを、参入企業は良く理解している。

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そこは多くの業界で、究極的には一社独占の市場となる。

Facebook, Apple, Google, Amazon, ........

莫大な広告収入を得て、価格決定権をもち、サプライチェーンを操る(自分に最適化する)、つまり覇権を握るということになるのである。

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では今の状況はどうなっているのか?

2020年東京商工リサーチによると物件掲載数のランキングは下記になっており、「SUUMO」が抜けているという状況である。

1位「SUUMO」660万件

2位「LIFULL HOME'S」428万件

3位「at home」187万件

圧倒的に「SUUMO」が優位な状況。但し、まだポータルサイトは乱立しており、一社独占にはなっていない。まだ決着は付いていないのかも知れない。

この先はどうなるのか?

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2つの流れが起こると私は考えている。

1つは、この乱立状況がどこか一社、もしくは二社に集約されていく。これは自明であり不可避である。

もう1つは、新たなヒエラルキーが構築されていく。これはAppleやAmazonをみたら一目瞭然だが、顧客接点をとった企業の下流に、ステークホルダーたちが従属されるということである。ポータルサイトを見た顧客は、次に、家を買う、家を売る、家を建てる等の行為に移行する。それに関係する企業が、このポータルサイトの軍門に降る(少し強烈だが実際こういう状況になる)のである。

既に、家を買う、家を売るについては、もはやポータルサイトへのキックバックなどが発生しており新たなヒエラルキーが出来つつある。

一方、家を買うということに関しては、まだそこまで大きな流れにはなっていない様にみえる。
けれども、これからこの領域においても同様の変化が起きるはずである。この下流には、ハウスメーカーや工務店やリフォーム業者、更にその下にはそれぞれの関連会社や設備・建材・部材メーカーなど実に多くのステークホルダーがいる。非常においしい領域なのである。これまで一番上流で顧客接点をもっていたはずの会社が、その接点を奪われるという状況にどんどんなっていく。そうすると、これまでの価格決定権・顧客との交渉権は無くなり、マッチングに対して逆に対価を支払う様になり、まさに利益の源泉を奪われることになる。

今は、まだ感覚としては、新たな販路の1つという認識で、売り上げが増えるから良い話だと感じているかも知れない。しかし、確実にそこは違う!!!!

彼らは徐々に力をもち、気づいた時には遅いという状況になるだろう。

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ポータルサイトを運営している企業の多くは、そのことに気づいているはずだし、それを狙って参入し競争を繰り広げているのである。

ここは建築業界というおいしい市場である。

その覇権争いを秘かに繰り広げているのである。

汗水垂らして家を売り、家を建てていない人たちが・・・・・

ちなみに、これは日本国内で起きている日本企業同士の争いであるので、健全な勝負で良いと思っている。ポータルサイトを運営する企業に嫌な感情をもっている訳でもないし、むしろ市場を活性化する素晴らしい動きだと思っている。また、最終的にここを誰が取るかに執着はない。

ただ、もう少し建築業界の人たちにこの現在進行形で繰り広げられている現状を理解してもらった上で、そこをチャンスだと感じる人たちには参入してもらいたいと思っている。

知らないうちに負けていたというのは余りに悲しいから。。。。



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ここまで読んでいただき有難うございます。最後にこれまでの記事へのリンクです。


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