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石と鉄(『君たちはどう生きるか』ネタバレ感想2)

 宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』についてまだ考えています。前回空のものと海のもの、火のものと水のもの、という二項対立と、その三項関係がいかに物語を駆動しているか、ということについて書きましたが、その中で第三項としての「石」について扱うことが難しく思えておりました。

 糸口と思えたのは、「悪意に染まっていない石」という大叔父の発言でした。
悪意に染まってない石がお守りとして主人公に残される、では「悪意に染まった石」というのはなんでしょう?

 そこで二つの場面がうかんできました。
ひとつは主人公が石で自分の頭を打つ場面
もうひとつは同じく主人公が釘を削って矢にする場面です。

 石によって己を傷つける主人公。それによって父親はコントロールされ、おそらく主人公の予想通りの動きをして学校に圧力をかけるようになっています。

 「鉄」はタバコを好む者、火に関わることで作り出され、航空機のキャノピー、鳥たちの使う刃物などとも暗示されますが、中核にあるのは主人公の作り出す弓矢なのでしょう。

 どうもここに、「害意に染まってない石」⇔「武器となる石」、そして「石」⇔「火を潜った鉄」という対立項を読み取ることができそうです。
それぞれ石が血に染まる(≒水)、石を精錬する(≒火)というものが第三項になっているのでしょうか。

 これは『もののけ姫』で、アシタカが石器を使う集落から旅立って、製鉄を行なうエボシのところに行く、というところにも現れている対比であり、本作でも「鍛冶屋」が出てきましたね。

 この石⇔鉄という二項が、火と水の循環する二項に干渉している、というのがこの作品の出発点となりましょうか。墓や産屋や「空からやってきた石」というものがそこに関わっている。石の敵意をすら、主人公は感じているのかもしれません。

 彼が自分の選択と共に連れてきた石。お守りというのはなんでしょう。

次は、煙草を好むキリコと結界という話がしたいなとおもいます。