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石油とみかんと飛行機と ~ENEOS和歌山・脱炭素で再出発へ

サステナビリティの世界に足を踏み入れた私。基礎知識を身に付けるために1000日連続のnote更新をめざす挑戦、2週目に入りました。8日目(Day8)のテーマは「ENEOS(エネオス)和歌山製油所の稼働停止」です。



1.はじめに


明日は大事な仕事があるので、今日こそは早寝するぞ…!との決意をこめて、本日は早めの時間の更新に成功しました。

…という個人的事情はさておき、本日ご紹介するのは、10月16日に稼働を停止したENEOS和歌山精油所の話題です。

協力会社を含め約1500人の雇用も抱え、税収や補助金の恩恵を受けてきた。「みかんと石油の街」(紀州有田商工会議所の栗山弘専務理事)の有田市に、製油所は不可欠な存在だった。
(中略)
「次の展望も示さないで閉めるのは、『死ね』というのと同じだ」。仁坂吉伸知事(当時)は発表翌日に東京のENEOS本社で大田勝幸社長と面会し、憤りをあらわにした。

ENEOSも地元からの強い反発を覚悟していたが、背に腹は代えられない。

ENEOSホールディングスは24年3月期に在庫評価を除き最終利益で1800億円を見込むが、石油精製の利益が大きい。40年にガソリン需要が半減すると予測する中で、赤字の製油所を抱えたままでは利益が吹き飛ぶばかりか、会社の存続も難しくなる。

地元とどう折り合いをつけるか。ENEOSは新たな道を決めた。23年9月、ENEOSと経済産業省、県、有田市などはGX(グリーントランスフォーメーション)モデル地区を目指す構想をまとめた。再生航空燃料(SAF)の拠点として再出発させる。

日経電子版 2023年10月16日「石油の街・和歌山、エネオス製油所停止 脱炭素で再出発」


2.SAF拠点へと決まるまで

当初はみかんを使ったバイオエタノール製造案も

先の記事には「再生航空燃料(SAF)の拠点として再出発させる」とありましたが、すんなりとこの案に決まったわけではなさそうです。

2022年2月に開催された第1回検討会では「跡地利用については何も決まっていない」状態であり、総務部長の挨拶で「例えば、バイオマス発電などの電力事業や、摘果したみかんを使ったバイオエタノールの製造など」が跡地利用のアイディアとしてあがっている、との発言があったのだとか。(出典:和歌山放送ニュース

そして、2022年10月に開催された第3回検討会議でもまだ何も決まっておらず「エネオスがこれまでに検討してきた新規事業案の進捗状況や、地元から寄せられた跡地活用のアイデアに対する報告などを行った後、さらに地元からの意見を聞いた」状況であったのだとか。なお、この時点では、跡地利用計画をまとめる時期は「跡地の無害化作業が終了する予定の2025年3月をめどにする」こととなっていたようです。(出典:和歌山放送ニュース


2022年11月にSAF案を発表

ところが、1カ月後。11月24日にこんな発表が出ました。

石油元売り大手ENEOSは24日、持続可能な航空燃料(SAF)について、生産拠点を当初検討した根岸製油所(横浜市)から和歌山製油所(和歌山県有田市)に変更すると発表した。生産開始年も1年遅らせて2026年とする。

同社は仏トタルエナジーズと年40万キロリットルの生産に向け事業化調査を進めていた。和歌山製油所は石油の需要減を受けて23年に精製をやめるため、跡地利用につながると判断した。

日経電子版 2022年11月24日

仏トタルエナジーズとの調整もあったので、ちゃんと決まるまでは発表できなかったのかもしれないですね。

いずれにせよ、この案は地元からも歓迎されたようです。
(ENEOS側としてもほっとしたのではないでしょうか…)


3.そもそもなぜ今、SAF?

SAFとは何なのか

となんとか書いておきながら、私、今回の記事を読むまで、SAFについてよく知らなかったのです。ということで、おくればせながら調べてみました。SAFとは…

廃食油やサトウキビなどのバイオマス燃料、廃プラスチックなどから生産される燃料で、持続可能な航空燃料を表す「Sustainable Aviation Fuel」の頭文字からSAFと呼ばれる。

日経電子版 2023年9月4日 「きょうのことば 再生航空燃料とは 脱炭素に効果、世界で需要」

国際航空運送協会(IATA)によれば「50年までにCO2の排出量を実質ゼロにするためには、世界の7000カ所の製油所で4億トンのSAFの生産が必要」なのだそうです。


日本の空港では国際線に給油する燃料の1割をSAFへ

今年5月にはこんなニュースもありました。

経済産業省は2030年から、日本の空港で国際線に給油する燃料の1割を再生航空燃料(SAF)にすることを石油元売りに義務付ける。自動車に比べ航空機は電動化が難しく、脱炭素に向け植物や廃油からつくるSAFの利用が広がる。世界でも供給量は燃料消費の0.03%で、国産化支援など調達が課題になる。

日経電子版 2023年5月25日「国際線、再生航空燃料1割に 石油元売りに30年義務付け


これを受けて、国内では来年度(2024年度)にもSAFの商用生産が始まるのだとか。まさに今、旬の話題だったのですね…勉強になりました!!


4.SAFで生まれる協業も

ENEOSとサントリーが廃食油調達で協業

ENEOS和歌山に話を戻すと、SAFの原料となる廃食油を調達するために、サントリーと協業するとの発表もあったようです。

図がダウンロード可能になっていたので、お借りしてみました。

出典:2023年9月12日付 ENEOS株式会社 サントリーホールディングス株式会社リリース


5.あわせて読みたい(発展学習)


今回学んだ内容に関連する新聞記事や論考、書籍などをピックアップし、追記していきます(随時更新)。

■ESGブランド調査2022 エネルギー転換で先行/ENEOS

ENEOSは、2022年ESGブランド指数の「ランキング急上昇企業」でもあったのですね。あとで読んでみようと思います。


■再生航空燃料や鉱物、海外で資源確保へ 経産省が支援

SAFに限らず、バイオ燃料といえばその原料を確保するのが大きな課題だと思います。(食料用途を圧迫しかねないものもありますし…)

政府としてもさまざまな策を講じているようですので、こちらの記事を皮切りに色々と読んでみたいと思います。


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