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複数の住所を持つことができる法案を作成しました。

毎年、12月ころに自主講座を開催し、一本ずつ法案をつくって来ました。もう16年目になります。ことしは、複数の住所を持つことができる法案を作成しました。居住割合におうじて、投票と地方住民税を分割するという仕組みです。

今年の法案作成講座は、はじめてのオンライン開催です。最初に参加者から自己紹介をもらって、その後、わたしが法案を作っていきます。法案を作る作業は、わたしが環境庁にいたときに、環境基本法案と環境影響評価法案の作成に携わった経験にもとづいています。既存の法体系に規定されているさまざまなプログラムを組み合わせて、あたらしいルールを作るという作業になります。この世界は、コピペが許されている世界です。法律に著作権はありませんし、全く新しい条文を書くのは、法体系の整合性を崩してしまうおそれがあるので、可能な限り過去の使用例がある書き方が望まれるのです。

法案作成に当たっては、電子政府の総合窓口e-govの法令検索システムを用いて過去の法律の用例を検索しながら、新しいプログラムを考えることになります。今回のテーマを条文化するにあたって、「住所」「住民」といったワードで検索しました。そうすると、それこそ検索しきれないほどたくさんヒットしました。「住所」「住民」という概念自体を変えるとこれは大変なことになるという直感で、「従たる住所」「居住割合」を申告させて、「従たる住所住民票」「従たる住所住民基本台帳」をあらたに作成し、「居住割合」におうじて、投票と地方税だけ分割するという仕組みにしました。

90分×3回の法案作成講座で完成した法案は以下のとおりです(今回は内職もしました)。最後の方は、住民基本台帳法ベースです。

このような法律があれば、都会に生活の拠点をおくライフスタイルから、都会と田舎の双方に生活の拠点をおくライフスタイルに徐々に移行していくのではないかと思います。ふるさと納税は単なる寄付ですけど、この制度は、実際の居住が伴いますから、こちらの方が社会的なインパクトは大きいでしょう。

複数の住所を有する場合の投票及び納税の特例に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、複数の住所を有する生活様式を促進するため、従たる住所を届け出ることができることとするとともに、従たる住所届出者に係る投票及び納税の特例等を定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において「従たる住所届出者」とは、第三条第一項の規定による届け出を行った者をいう。
(従たる住所の届出等)
第三条 複数の住所で居住する者は、総務省令で定めるところにより、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長(以下、「主たる住所地市町村長」という。)にその従たる住所及び年間の月数を従たる住所で居住することとする期間の月数で除して得た値(以下、「従たる住所地居住割合」という。)を届け出ることができる。
2 前項の届け出をした者は、前項の従たる住所地居住割合が、年間の月数を従たる住所で実際に居住した期間の月数で除して得た値が異なることとなる場合には、遅滞なく新しい従たる住所地居住割合を届け出なければならない。
3 前二項の規定による届出をした者は、従たる住所を失ったとき又は従たる住所を変更したときは、従たる住所を失った日又は従たる住所を変更した日から十四日以内に、総務省令で定めるところにより、当該主たる住所地市町村長にその旨を届け出なければならない。
4 主たる住所地市町村長は、前三項の規定による届出を受けたときは、遅滞なく、当該届出に係る事項を当該届出に係る従たる住所を管轄する市町村の長(以下「従たる住所地市町村長」という。)に通知するものとする。
(従たる住所届出者の住民票への従たる住所の記載)
第四条 主たる住所地市町村長は、前条第一項の届出を受けた場合、遅滞なく、当該届出を行った者に係る住民票に、次に掲げる事項を記載するものとする。
一 従たる住所
二 従たる住所居住割合
三 従たる住所を届け出た日
2 主たる住所地市町村長は、前条第二項又は第三項の届出を受けた場合、遅滞なく、当該届出の内容を、当該届出を行った者に係る住民票の記載事項に反映させるものとする。
(従たる住所地市町村長による従たる住所住民基本台帳の作成)
第五条 従たる住所地市町村長は、第三条第四項の規定による通知を受けた場合、遅滞なく、当該通知に係る者について、個人を単位とする従たる住所に係る住民票(以下、「従たる住所住民票」という。)を世帯ごとに編成して、従たる住所に係る住民基本台帳(以下、「従たる住所住民基本台帳」という。)を作成しなければならない。
2 従たる住所地市町村長は、適当であると認めるときは、前項の従たる住所住民票の全部又は一部につき世帯を単位とすることができる。
3 従たる住所地市町村長は、政令で定めるところにより、第一項の従たる住所住民票を磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)をもつて調製することができる。
(従たる住所住民票の記載事項)
第六条 前条第一項の従たる住所住民票には、次に掲げる事項について記載(前条第三項の規定により磁気ディスクをもつて調製する従たる住所住民票にあっては、記録。以下同じ。)をする。
一 氏名
二 出生の年月日
三 主たる住所
四 従たる住所
五 従たる住所地居住割合
六 従たる住所の届出の年月日
七 一の市町村の区域内において新たに従たる住所を変更した者については、その従たる住所を定めた年月日
八 個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号をいう。以下同じ。)
九 選挙人名簿に登録された者については、その旨
十 従たる住所住民票コード(番号、記号その他の符号であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)
十一 前各号に掲げる事項のほか、政令で定める事項
(従たる住所住民票の記載等)
第七条 従たる住所住民票の記載、消除又は記載の修正は、政令で定めるところにより、第三条第四項の規定による通知に基づき、又は職権で行うものとする。
(住民票の記載等のための市町村長間の通知)
第八条 従たる住所地市町村長は、従たる住所届出者につき住民票の記載をしたときは、遅滞なく、その旨を主たる住所地市町村長に通知しなければならない。
2 前項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、従たる住所地市町村長の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)から電気通信回線を通じて相手方である主たる住所地市町村長の使用に係る電子計算機に送信することによって行うものとする。ただし、総務省令で定める場合にあっては、この限りでない。
2 市町村長は、その市町村の住民以外の者について戸籍に関する届書、申請書その他の書類を受理し、又は職権で戸籍の記載若しくは記録をした場合において、その者の住所地で住民票の記載等をすべきときは、遅滞なく、当該記載等をすべき事項をその住所地の市町村長に通知しなければならない。
3 第一項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、市町村長の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)から電気通信回線を通じて相手方である他の市町村の市町村長の使用に係る電子計算機に送信することによって行うものとする。ただし、総務省令で定める場合にあっては、この限りでない。
(従たる住所住民票に係る選挙人名簿への登録)
第九条 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第二十一条第一項にかかわらず、選挙人名簿の登録は、当該市町村の区域内に従たる住所を有する年齢満十八年以上の日本国民(公職選挙法第十一条第一項若しくは同法第二百五十二条又は政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条の規定により選挙権を有しない者を除く。)で、その者に係る登録市町村等(当該市町村及び消滅市町村(その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となった市町村であって、当該廃置分合により消滅した市町村をいう。第三項において準用する場合に同じ。)をいう。以下この項及び次項において同じ。)の従たる住所住民票が作成された日から引き続き三箇月以上登録市町村等の従たる住所住民基本台帳に記録されている者について行う。
2 公職選挙法第二十一条第二項にかかわらず、選挙人名簿の登録は、前項の規定によるほか、当該市町村の区域内から従たる住所を移した年齢満十八年以上の日本国民のうち、その者に係る登録市町村等の従たる住所住民票が作成された日から引き続き三箇月以上登録市町村等の従たる住所住民基本台帳に記録されていた者であって、登録市町村等の区域内に従たる住所を有しなくなった日後四箇月を経過しないものについて行う。
3 同法第二十一条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。
(従たる住所届出者の投票の効力)
第十条 公職選挙法第三十六条にかかわらず、前条の規定による選挙人名簿の登録にかかる投票は、各選挙につき、一人当たり、当該投票に係る者の選挙人名簿の登録の日から三箇月前のその者の従たる居住地居住割合の値の票とする。
2 同法第三十六条にかかわらず、従たる住所届出者の主たる住所地市町村における投票は、各選挙につき、一人当たり、一票から当該投票に係る者の選挙人名簿の登録の日から三箇月前のその者の従たる住所地居住割合の値を差し引いた値の票とする。
(従たる住居届出者に関する市町村民税の特例)
第十一条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第二百九十四条第一項の規定にかかわらず、従たる住所届出者の従たる住所地市町村の市町村民税は、均等割額及び所得割額の合算額に、従たる住所居住割合を乗じた額により課する。
2 同法第二百九十四条第一項の規定にかかわらず、従たる住所届出者の主たる住所地市町村の市町村民税は、均等割額及び所得割額の合算額に、一から従たる住所居住割合を差し引いた値を乗じた額により課する。
(調査)
第十二条 市町村長は、定期に、第四条及び第五条の規定により記載をすべきものとされる事項について調査をするものとする。
2 市町村長は、前項に定める場合のほか、必要があると認めるときは、いつでも第四条及び第五条の規定により記載をすべきものとされる事項について調査をすることができる。
3 市町村長は、前二項の調査に当たり、必要があると認めるときは、当該職員をして、関係人に対し、質問をさせ、又は文書の提示を求めさせることができる。
4 当該職員は、前項の規定により質問をし、又は文書の提示を求める場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(秘密を守る義務)
第十三条 従たる住所住民基本台帳に関する調査に関する事務に従事している者又は従事していた者は、その事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(住民に関する記録の保護)
第十四条 市町村長の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けて行う従たる住所住民基本台帳に関する事務の処理に従事している者又は従事していた者は、その事務に関して知り得た事項をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
(従たる住所住民票に記載されている事項の安全確保等)
第十五条 市町村長は、従たる住所住民基本台帳に関する事務の処理に当たっては、従たる住所住民票に記載されている事項の漏えい、滅失及び毀損の防止その他の従たる住所住民票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
2 前項の規定は、市町村長から従たる住所住民基本台帳に関する事務の処理の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者が受託した業務を行う場合について準用する。
(苦情処理)
第十六条 市町村長は、この法律の規定により市町村が処理する事務の実施に関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。
(資料の提供)
第十七条 国の行政機関又は都道府県知事は、それぞれの所掌事務について必要があるときは、市町村長に対し、従たる住所住民基本台帳に記録されている事項に記載されている事項に関して資料の提供を求めることができる。
(適用除外)
第十八条 この法律は、日本の国籍を有しない者のうち政令で定める者については、適用しない。
(政令への委任)
第十九条 この法律の実施のための手続その他その施行に関し必要な事項は、政令で定める。
(罰則)
第二十条 第十三条の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第二十一条 第十二条第三項の規定による質問に対し、答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は文書の提示を拒み、妨げ、忌避し、若しくは虚偽の文書を提示した者は、五万円以下の罰金に処する。
第二十二条 第三条第一項乃至第三項の規定による届出をする場合において虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処する。

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