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つながりの数、密度で見え方が変わる

Sustainable Innovation Lab.(SIL)はそれぞれの立場から持続可能な価値を創造し、それを社会に実装し、変革へとつなげていくための学びと共創のプラットフォーム(場)です。 この場には、様々な課題、思いを抱く人たちが集い、プロジェクトを組成し、お互いを観察しつつ、学び合い、前進しています。こちらの記事では、SILに関わりプロジェクトを回している具体的な人たちをご紹介します。

前回の記事では、地球を再生可能な状態に導くSINRAにおいて、マーケターである前田さんと、彼がSILに対してどう感じているかをご紹介しました。今回は、プロジェクトの具体的な紹介と、SILから何を得ているかを書いていきます。

SINRAのマーケターとして活動し、SILでも活躍する前田陽太さん


まずは、プロジェクトから──。前田さんは、SINRAとしてNFT(ブロックチェーン上で交換される代替が不可能なデータ)を売り出しています。マーケターですので、NFTに興味のある人たちに働きかけたり、Twitterでニュースレターを配信したりと活動しています。NFTを買った人たちは、オンラインコミュニティDiscordに参加しますので、現在は約300名にイベントなどを提供しています。最近では、気候変動について深く学んでいる「オタク」が、世界と日本での論点や、動向を分かりやすく解説するイベントを開催しました。その他にも、プレスリリースなど活動は多岐にわたります。

SINRAのNFTには、アート、コミュニティ、脱炭素、ソーシャルインパクトといった意味が込められています。このように美しい蝶のデジタルアートは、購入するタイミングと、それに紐づくカーボンクレジット(温室効果ガスを取引する権利)の量で見た目を変えるので、わくわくします。同じNFTを保有する人たちは、コミュニティの同志みたいなものです。自然資源を再生する現場を一緒に訪問し、作業を体験します(SINRAフィールドワーク)。そうした自然資源の再生による脱炭素量は、カーボンクレジットとして企業に販売されます。SINRAでは、こうしたソーシャルインパクトを見える化していくとのことです。

では、前田さん、そしてSINRAはSILから何を得ているのでしょうか?そもそも、SINRAは、SILでの対話から生まれました。前田さんは、報道などで言われる気候変動や環境問題は分かるが、「いまいち自分ごととして日々の生活につながらない、そこまでの動機づけになっていない」と感じていました。つまり、大きな話すぎる印象がありました。

それよりも、植物による温室効果ガスの吸収、生物多様性の保全、水と空気の流れを整えることによる水質や海の生態系の改善など、身近でシステムとして関わる方が魅力的でした。手触りとして、きれいな空気や、前はいなかった生物が戻るなど、その場で目に見えて変わっていくのが分かるようです。身近なところから課題を考え、解決を進めていく考え方です。

SINRA Webより引用

SINRAが、こうした目的を達成し、活動を持続させるとき、SILとの連携が意味を持ちます。たとえば、森林保有者や自治体とのパートナーシップが必要な地域に入り込むときです。SILでの検討から生まれたLocal Coopというプロジェクトでは、自助でも公助でもなく、共助をキーワードとして、自治体と企業と地域内外の住民で繋がりを生み出しています。プロジェクトの中には、新しい学びの場の創出、森林資源の管理、買い物の支援、地域電力などの取り組みがあり、SINRAはこの森林資源に携わっています。公的財源が限られ、92%が森林で囲まれている三重県尾鷲市において、NFTとカーボンクレジットを通じて域外からの新たな資金の流れを生んでいます。

SILと連携することで、様々なつながりが増えていると前田さんは強調します。そうした数が増えていき、密度が増すほど、世界の見え方が変わるようです。そうした視座の変化によって、資本とは何か、住民自治とはどうあるべきか、DAO(自律分散型組織)のあり方への捉え方が変化していきます。大きな方向性としてポスト資本主義を共有しつつ、緩やかにつながり、それぞれの目指す世界観を実現し、深めていくSILという場は、案外ほかの組織よりしなやかなのかもしれません。


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