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〈問〉 COP28の結果を教えてください。

〈回答〉

2023年11月30日から12月13日まで、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイにおいて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第28回締約国会議(COP28)が開催され、パリ協定で約束した世界全体の進捗評価であるグローバル・ストックテイクの実施、気候変動の悪影響に伴う損失と損害に対応するための基金の設置などが決議されました。

〈補足〉

  1. グローバルストックテイクの初実施

  2. 化石燃料から再生可能エネルギーへのシフト

  3. 気候変動の悪影響に伴う損失と損害に対応するための基金の設置


〈補足詳解〉

1.

THE UAE CONSENSUS|UNFCCC

12月13日に、「化石燃料時代の終わりの始まり」というメッセージとともにCOP 28が閉幕しました。結果は会議後に公表された「THE UAE CONSENSUS」と「グローバルストックテイク(成果文書)」にまとめられています。(共に英文)

パリ協定第14条に、各国が策定した温室効果ガス排出削減の進捗状況を評価するために実施状況に関する定期的な検討を行う旨の定めがあり、これを”global stocktake”(グローバルストックテイク、世界全体の実施状況の検討)と呼びます。今会議で初めて実施され、以降は五年ごとに実施することがすでにパリ協定で合意されているものです。今回の結果に基づき各締約国の行動及び支援を更新することが期待されています。

パリ協定第14条|UNFCCC

当会議におけるグローバルストックテイク成果文書27項(下図)では、これまで通り地球温暖化を1.5℃に抑えるには、世界の温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%大幅かつ迅速かつ持続的に削減し、実質ゼロに到達する必要があることを再認識することが示されました。
しかし、現時点で締約国による世界の温室効果ガス排出削減はパリ協定の目標とは一致しておらず、目標達成に向けて重大な懸念が示されました。

First Global Stocktake成果文書 27項および28項|UNFCCC

この結果を受けて、当成果文書28項では、締約国に対して今後の追加的な取り組みに貢献するよう次のことを求めています。
✅2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍に増やし、省エネでエネルギー効率を2倍に改善すること
✅再生可能エネルギー、原子力などネット・ゼロ・エミッション・エネルギー・システム導入の加速
石炭火力発電の段階的廃止
✅2030 年までにメタンを含む二酸化炭素以外の温室効果ガス排出の大幅な削減
✅インフラ開発やゼロ・低排出車両導入による道路輸送の多様化で排出削減
✅化石燃料補助金の早期かつ段階的な廃止

2.
これまでは石炭のみが削減対象とされていたのに対して、具体的な数値などは示されてはいないものの、当会議では石油や天然ガスなどを含む化石燃料全般へと対象が拡大しました。
日本国の動きとしては、COP28初日に、総理大臣から徹底した省エネと再エネの主力電源化や原子力の活用等を通じたクリーンエネルギーの最大限の導入を図るとが表明され、再エネ容量3倍等の方向性については賛成の意向であることと、併せて新規の国内石炭火力発電所の建設を終了することが発表されています。
また、脱炭素の取組みを協働推進するために設置されたアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)*で世界全体の脱炭素化に貢献することが強調されました。COP28後に開催された当共同体首脳レベル会合においては、アジア、特にアセアン地域は今後も世界経済とエネルギー需要拡大のエンジンであり続ける見込みであることから、特にエネルギー関連のイノベーションを通じて、経済成長とエネルギー安全保障が両立する形でのカーボンニュートラル推進に協力することが再確認されています。
*AZEC参加国は、日本の他に、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムです。

3.
前回COP27で設置が決定された気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)に対応する新たな資金措置(基金を含む)に関して、COP28の開会式全体会合において、気候変動の影響に特に脆弱な途上国を支援の対象とした基金の大枠について採択され、当基金が世界銀行の下に設置されることが決まりました。
ロス&ダメージは、温暖化が原因で発生する自然災害による損害や土地や家屋が消失する損失のことで、この損害と損失に対応するためには大きな資金が必要であるという考えです。まずは19か国が基金に対して総額7億9,200万ドルの拠出が約束されました。その中にはUAEからの1億ドルが含まれており、先進国を中心に他には、日本が1,000万米ドル、米国が1,750万米ドル(議会に要求中)、イギリスが4,000万ポンド、ドイツが1億米ドル、EU全体で2億2,500万ユーロ(独を含む)です。

〈参考〉