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日本の医療保険はどのような制度ですか?

回答

医療保険は病気や怪我をした際の費用負担を軽減するための保険であり、日本国における公的医療保険制度は国民全員の加入が義務付けられた国民皆保険制度です。加入者から徴収する保険料および公費を財源として医療サービスが提供されています。

ポイント

  1. 公的医療保険は3つ(国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度)

  2. 高額療養費制度による自己負担限度額の設定

  3. 医療保険の財政


ポイント解説

1. 公的医療保険は3つ(国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度)

我が国の医療保険について|厚生労働省

公的な社会保険には、医療保険の他に、介護保険、年金保険、労災保険、雇用保険が該当します。ここでは医療保険について説明をしていきます。

一般的に保険は将来病気や事故や災害などリスクに備えて加入するものですが、このうち病気やケガに備えて加入する保険を医療保険と言います。加入者全員がお金を出し合い、治療が必要になった際の経済的負担を軽減する仕組みです。医療保険には、加入が義務である公的医療保険制度と、民間の保険会社が提供する保険商品があります。

ここでは公的な医療保険について説明します。

日本国の公的医療保険は国民全員の参加で成立する国民皆保険制度です。医療機関を自由に選択することができ、安心で安全な医療サービスを少額の費用負担で受診できます。病気にかかりやすい方が高額な費用負担をしなくて良い制度です。病院を利用する被保険者(患者)は、診療サービス受診後に診療報酬のうち負担分(1割〜3割)の支払いを行い、残りの診療報酬については医療保険者(機関)に対して病院から請求する仕組みです。この医療保険者(機関)にはみなさんが毎月納めている保険料が貯められているわけです。

公的医療保険の種類と対象者|日本医師会

公的医療保険は、国民健康保険被用者保険および後期高齢者医療制度と3つの制度が設けられています。国民健康保険は、その他の公的医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入されていない全ての住民の方を対象とした医療保険制度です。農家やフリーランス、非正規雇用者、会社を退職した人などが加入することから地域保険とも呼ばれています。被用者保険は、会社などに勤めている方を対象とした医療保険制度です。後期高齢者医療制度は、75歳以上を全員対象とする医療保険制度です。75歳になると自動的に加入していた医療保険から脱退し、後期高齢者医療制度に加わります。
日本国民は必ずこの3つのうち1つの保険制度に加入することになります。

加入者が支払う保険料はどれほどでしょうか?
例えば、全国健康保険協会において都道府県ごとに被保険者の保険料が定められています。居住地と所得に応じて異なりますが、負担する保険料はおおよそ月額報酬の約10%です。従業員本人だけではなく、事業主も折半で負担する仕組みです。ざっくりとしたイメージでは、社員に月30万円を支払う場合は、1.5万円(5%)が会社負担となり、残りの1.5万円(5%)を会社員本人が負担することになります。

2. 高額療養費制度による自己負担限度額の設定

家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないように、公的医療保険には高額療養費制度が設けられています。医療機関で支払った1か月分の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に超過部分が償還される仕組みです。自己負担限度額は年齢と所得に応じて異なっており、例えば、70歳未満の方の診療費が100万の場合、所得が210万円以下であれば57千円、210万〜600万円以下であれば約90千円となります。

3. 医療保険の財政

令和5年版厚生労働白書資料編|厚生労働省
制度区分別国民医療費|厚生労働省
財源別国民医療費|厚生労働省

2021年度の国民医療費は45兆359億円(前年度比2兆694億円、4.8%増加)であり、人口一人当たりの医療費は約35万円でした。国民医療費は年々増加傾向にあります。十年前、2011年時点では38.6兆円でしたが、そこから7兆円ほど膨らんでいます。この増加傾向は今後も続くことが予想されています。財源に目を転じますと、基本的に財源の半分は徴収された保険料であり、残りのうち約4割は公費で賄っている構造です。全体の21%ほどが会社負担の保険料です。医療保険は個人の病気やケガのための制度ですが、企業もその財源を負担する仕組みです。会社経営においては保険料の負担分を想定した上で雇用を計画して予算編成することが重要です。生産年齢人口が減少することが予測されている昨今、メインの財源である保険料の徴収を維持できるか否かが国家的な課題です。

〈参考〉

あとがき
他国では公的保険が任意の国がある中、日本は皆保険制度により医療サービスを提供しています。国民全体で健康意識を向上することが望まれます。