最近の就活生にアドバイス【起業とかいつでも出来るので後回しでOK】

Discord/clubhouse/スペースにて、ちょくちょく学生さんから「就職先どうしたらいいですかね?」系のお悩み相談を受けるので、なるべく俯瞰して客観的な意見に落とし込んでメモ書きしておこうかと思う。

起業したい!フリーランスになりたい!→いつでも出来るので、わざわざ新卒からやるべきじゃない

インフルエンサーの「起業するべき!フリーランス最高!」という煽りもSNS上では散見されるが、現フリーランスの私からすれば「起業とかフリーランスとかいつでも出来るので、わざわざ新卒カード切ってまでやるべきではない」というのが個人的な意見である。

個人的に「この人上手く行ってるんだろうなぁ…」と思える経営者・フリーランスの方の創業経緯を聞くと「会社から独立して仕事を分けてもらってる」など、起業自体が目的ではない起業の方が多いように思える。

また、新規事業を立ち上げた系の方の話を聞いてみても、過去の人脈や経歴をフルに活用できる下準備を整えた上で、慎重に起業している方が多い。

私自身、いい就職先が見つからなかったり、自分の能力を自分以上に上手く使ってくれる人がいなかった…というどうしようもない理由で、成り行きで自営業・フリーランスという立場になってるだけで、法人化も「まあ、そのうちするかもな…」ぐらいの消極的態度で会社法だの経理だのをしょうがなく勉強している程度である。

(このあたりの実務上の無駄な手続きや慣習の理解と実践はクソつまらん仕事の代表格なので、会社でお金もらいながら勉強するという意味でも、一般職への就職はメリットが大きい)

極端なことを言えば、今の仕事の仕方や生活を維持できる形で会社で働けるのであれば、雇用形態はどうでもよいし、事実、企業側も正社員を抱えるメリットがあまりないので派遣社員の採用や外部委託という形が増えている。

「ジョブ型雇用」の必要性が叫ばれる中、この傾向はますます加速していくとは思う。

逆説的に言えば、ジョブ型雇用が増えていく情勢の中であれば、やりたい仕事や挑戦したい仕事は本業でなくとも出来る機会が増えていくということでもある。

そういう意味で、わざわざ就活生が起業したり、フリーランスからファーストキャリアを歩むメリットは皆無だと言えよう。

本当に起業したいなら学生のうちに起業してるはず

最近では「学生のうちに起業してる人」も増えたし、あるいは「自分よりも若い上に数億円の年商を叩き出している会社の経営階級」という人とも出くわす。

そういった方の話を聞いてると、とにもかくにも行動的であるし、大きな失敗経験も笑いながら話す。基本的に「まともな感覚」を捨てた人種ばかりだと思ってもらっていい。

就職後起業しようともなるなら、そのような起業家と、年齢も能力も関係ないフィールドで戦うことを意味する。騙し合い上等、勝っても負けても恨みっこなしの世界だ。

学生時代の0点取ってもせいぜい教授に怒られる程度の痛みで済む世界と違い、売上が吹っ飛んで生活に行き詰まるリスク、または取引に失敗したり業界内での立ち回り方を間違えれば社会的信用を失うリスクもある。

「本当の想いには行動が伴う」

月並みだが、そういったものだ。

仮に就活生で起業を考えているのであれば、何かしら起業のための準備(勉強でもサービスの立ち上げでも、なんでもよい)を無意識のうちに行っているはずだ。

学生時代にそれができていないのであれば、少なからず、現段階では起業はすべきでないだろう。

「やりたいことを仕事にする」は難しい

就活生に多いのが「やりたいことを仕事にするにはどうすればいいか?」という悩みだ。

「やりたいことを仕事にする」が不可能だとは言わないが、確率的には非常に難しい。

大きな組織ほど自分の望まぬ配置をされ、つまらない一般職の仕事を振られれる可能性が高いし、人事側の配置や適性判断が必ずしも正しいとも限らない。

それも、学生時代に明確なアクションや実績がなければ、会社側は「学歴があるだけの人材」という判断基準で採用・人事を決める。

これは「どう成長するかもわからない、辞めるリスクもある新卒生に個別にあったマネジメントを行うメリットがない」からだ。

なので、決められた研修カリキュラムを一括で受けさせ、後は現場に投げて勝手に育つのを待つという方式になるわけだ。

「七五三現象」という言葉がある。

就職後3年以内に、中卒7割・高卒5割・大卒3割ほどで離職するという傾向を指す言葉だ。

これは厚生労働省の統計データを見る限り、おおよそこの割合で落ち着いており、どう企業側があがいても一定の割合で離職者は出るということが見えてくる。

なので「やりたいことができる会社で長く働こう!」と考えるよりは、「確率的に短期離職の可能性があるので、自分が辞めてしまっても仕方ない」ぐらいに考えておく方が、精神的にも楽である。

それも大手企業3年以上の勤務経験さえあれば「とりあえず地雷人材ではない」という証左程度にはなるので、仮に自分が組織内で成果の出せない無能だったとしても、リスクマネジメントとしては破格のコスパである。

学生からベンチャー企業就職はリスク大きめ

「やりたいことを仕事にする!」だとか「会社で挑戦して自己実現!」だとか、そういう意欲の高い就活生はベンチャー企業へ就職するのも一つの手だ。

この場合、事前にしっかり事業内容を把握できたり、経営階級と腹を割って話せる仲なのであれば、個人的には学生からの就職でもありだと思う。

だが、そうでない安定志向であれば、ベンチャー企業の就職リスクは非常に高いので、避けたほうがいいとは思う。

ベンチャー企業の多くは、慢性的に人手が足りておらず、個人の業務領域が広い。また、社内規則が整ってないことも多いため、ブラックな働き方が許容されてしまっている場合も中小以上の会社よりは多いだろう。

また、SNSなどでベンチャー企業の経営層が発信している内容を見ればわかるが、求めている人物像が素で高い傾向にあるので、とくに光るものがない就活生は見向きもされないだろうし、そういったところに否定されるのは学生にとっては夢が壊される思いもするかもしれない。

どうしても就職したいほど好きな会社や、付き合いのあって一緒に仕事してみたいと思える経営者のいるようなベンチャー企業なら検討の余地もあるだろうが、そうでなければ就活生がわざわざベンチャー企業に就職するメリットは低い。

一般的な就活生は「生存確率」に軸を絞った方がいい

以上のように、私の考え方としては「就活生は新卒採用というカードの特性をよく理解し、有効活用して、生存確率を高めるキャリアプラン」という軸で考えるのがオススメだ。

「やりたいことを仕事に」だとか「起業して自分の理想の働き方を得る」だとかは、それが出来る程度の実力と実績を身に着けてからでも遅くない。

また「失敗しないように就職先を決める」という考えも、企業側の人事が完璧でない以上は、本人の能力関わらず、確率的に離職が生じるものだと考えておけば、気が楽だ。

なんなら、失業保険を受け取れば、辞めても半年ほどは生活に困らないため、その期間に勉強などをしながら転職活動するのもありだろう。

中途半端に欲を出して起業してしまい、そこで失敗して、社会の後ろ盾がないまま露頭にさまよった挙げ句、余裕のなさから短絡的な考え方しかできなくなるのが一番の恐怖だ。

そうなると、計画的に転職する余裕も、自分に助けの手を差し伸べてくれる人の善意にも気づけなくなり、社会的に孤立してしまう、あるいは誰からも助けてもらえなくなる。

経済的な余裕、精神的な余裕、選択肢の多さ、社会的地位、人間関係の多さ…こういった要素一つ一つの積み重ねが、人生の豊かさや万が一の生存にもつながりやすくなる。

とくに、就活生は大手企業・中堅企業にでも就職して3年ほどの経歴を積んでおくだけでも社会的評価は変わってくるし、そこから転職したり副業を手がけるなど、選択肢は増える。また、ボーナス支給などの想定外の収入増加もあるため資金も確保しやすいし、ローンも組みやすくなる。

「リスクを追って挑戦する」のは、社会人としての基盤が整ったり、何かしらのスキルや経験、社会的な肩書や後ろ盾を得てからでも遅くはない。

SNSでは起業がもてはやされる傾向があるが、まずは地に足をつける意味でも、安定した王道の就職方法に着目してほしい。

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