「BL=ファンタジー」を考える - 2023/04/13 日記#122

・似たようなことを書いてる過去のnote

・ミステリ作家である七尾与史さんのyoutubeチャンネル。

・BLを知らない人から見た「BL」「美しい彼」の話が面白かったので、動画内での話題を取り上げる。

・BLは一大マーケット

・私が足を踏み入れたのはもう10年以上前、その頃には既に本屋さんではBLコーナーがあった。おそらく、もっともっと前から大きな本屋さんではBLコーナーがある。

・この話は何度も書いているけど、日本の実写において、より大きなマーケットになったのは、「おっさんずラブ」と「2gether」のヒットの影響が大きい。その前の「SOTUS」も、放送当時はタイや中国を中心にかなり大きなヒットになっていて、その後のタイBL量産ルートの足掛けとなった。

・「SOTUS」をやっていた2016年頃はそもそも実写BL作品が少なく、自国コンテンツだけでは飽き足らずみんな目を血眼にして世界中のコンテンツを探しては見ていた時代。だから、日本でもタイでも大陸でも、とにかく実写BL好きはなんでも見ていた。

・その流れで、今でもこの手の界隈に所属してる人たちは、BLが作られるアジア作品を中心に国にこだわりなく楽しむ傾向がある。だから、『美しい彼』も世界的に楽しまれている。

・BLのマーケットの拡大は、国内だけではない。いま日本人俳優が役者業で世界的にファンを増やす一番手っ取り早い方法がBL作品に出る、になっている気がする。国外ファンを増やしたところで直接お仕事が好転するかどうかは知らないけれど、日本の作品や日本の役者さんたちの演技を世界の人たちに楽しんでもらうって、悪いことじゃないよね。

・凪良ゆうさん

・昨日、『流浪の月』に続く二度目の本屋大賞を受賞した凪良さん。躍進が止まらない。というか、こんな賞を取る前から緩やかなファンだった私は、世間がやっと凪良ゆうさんの面白さに気がついた、と表現するべきなのかもしれない。

・一般文芸でこれだけヒットしてまうと、本人がいくら続けると言っていても、新作のBL作品に割く時間はないんだろうな、と寂しい気持ちもある。同時に、一般文芸や『美しい彼』のヒットから、他のBL作品を読んでくれる人が増えると思うと、嬉しくもある。

・凪良さんの作品は、登場人物たちがみんな何かに躓いている人たちが多い。そんな複雑な事情を抱えたキャラクターたちを繊細に描き、文章も堅苦しくなくかなり読みやすい。そんなキャラクターたちなので、ストーリーもシリアス寄りのものが多く、だけど一切救いがないわけではない。それが私の思う凪良作品の良さ。

・『美しい彼』、雑誌発表済のものも含めると、あと雑誌掲載1本と十数ページの書き下ろしさえあれば多分単行本が出せるので、なんとか……

・自慢しますけど、この掲載紙、発行当時買っておいて本当に良かった。当然だけど、今すごい値段で売られてる。

・もし今後新作が掲載されるとなったら、普段の何倍も刷らなきゃならないね……

・あれ、ちょっと高騰してる。この作品、電子がなくて買ってなかったんだけど、確保しておいたほうがいいかな。ちょっと前に電子書籍を一旦下げたとお知らせしていたので、待ってたら配信されるかな。シリーズの『2119 9 29』は電子で持ってるんだけど。

・これも面白かったなあ。

・一般文芸のことは知らないので置いておくとして、『美しい彼』の大ヒットにかこつけて他作品のメディア展開も十分ありえる。

・若いイケメンじゃないとだめ?

・七尾さんが動画内で「僕みたいなおじさんじゃダメなんだよね?」と発言していた。結論から言うと、年齢ではなくイケメンかどうかのほうが大事なのかも、と思う。

・これは何もBL作品に限った話ではない。一般の恋愛ものだって、アクションだって、ホラーだって、どんな作品でも主人公は美男美女でしょ。

・年齢についても、異性愛ロマンスだって、40、50代を主人公にした作品よりも圧倒的に10代、20代を主役に置いた作品が多い。それと一緒。

・実写BL作品でも同様に20代くらいの作品が圧倒的だけど、『おっさんずラブ』や『きのう何食べた?』や『ポルノグラファー』、『花は咲くか』、『オールドファッションカップケーキ』など、30代後半~40代の男性をメインに置いた作品も全然受け入れられている。

・それこそ、年齢よりもビジュアル重視。

・BLとLGBTQ作品

・前にも書いたけど、BL作品とLGBTQ作品の違いは、ターゲットとする客層の違いだと思っている。BL作品は男の子同士の恋愛モノが好きな女性向け、LGBTQ作品は当事者の過去や現状や理想を描いた、より一般向けの作品。

・でも実際のところ、結局どちらの作品も客層の大半は”男の子同士の恋愛モノが好きな女性”だと思う。

・『チェリまほ』や『美しい彼』といったBL原作の作品も見に行くし、『エゴイスト』のようなゲイ映画でも、客席を見てる限りでは95%が女性で、熱心に見ている人は大体BL作品を好んで見る層なんじゃないかな。

・BL好きの方は同性愛を描くよりも、ビジュアル重視なのかな?という指摘があった。この辺は正直、男の子同士ならなんだっていい、が結論かも。

・同性愛だからとか、ビジュアルが良いからとかではなく、とにかく男性同士であることが大事。その中身が同性愛のリアルについて熱く語っているものでもいいし、ライトな日常モノだっていい。

・もちろん、中にはリアルな寄りものは苦手という人もいる。でも、私は次元を問わず、獣人からゲイビまでオールOKだ。

・ちなみに、『窮鼠はチーズの夢を見る』はBL原作。

・同性愛というテーマへの踏み込み

・そもそも、同性愛を描く上で、同性愛だからというだけで出てくる苦悩や大変さを描くことを踏み込みや理解と言うならば、ちょっと浅いよね。

・BL作品だってその手の葛藤が丁寧に描かれている作品はいくつもあるし(それこそ”窮鼠”とか”純ロマ”とか)、逆にゲイ作品でも、そこが主題になっていない作品もある。『ファイアー・アイランド』とか『マイ・ビューティフル・ランドレット』とか。

・もちろん、当事者の方々はこの令和の世の中ですら、自分をさらけ出して生きられてる人なんてきっとほんの一握りだと思う。日常生活で出会うなんてまずありえなくて、アプリで出会いを探したり、『エゴイスト』の浩輔のように、親にはカミングアウト出来なかったり。そんな描写が作品内で出てくると、当事者は共感できるし、そうじゃない人間も「これが現実なんだな」と知れる。

・そういう現実を描いて、当事者の方々のリアルを伝える作品も大事だけれど、今世界の動きって、もはや同性愛自体が障害になることはない世界、を描く方向にシフトしていってるんだよ。

・異性愛の作品で、相手が異性だからという理由だけで親に紹介を戸惑ったり、異性愛者だから差別されたりなんてこと、ないでしょ。それと同じように、同性同士の恋愛を、”同性愛だから”という枕詞を一切出さずに展開していく作品って、増えてきてるんだよ。

・この流れは、わりと海外のティーン向けドラマと、それこそアジアのBL作品において見られる。

・『美しい彼』も、割りとそう。平良は性別は関係なく、好きになったのは清居だけと言うし、清居も自分がゲイである自覚はあって、それに極端に悩んだり差別を受けるわけでもなく。ドラマ版は特に、ナチュラルに日々を過ごしている。

・BLなんて若い男がいちゃいちゃしてればそれでいいんだろ、という姿勢の実写作品は、早く淘汰されればいいのに。

・BLはファンタジー

・私はいつもこの言葉を腑に落ちないな、と思っている。それは、私の好むBL作品はファンタジー要素が少ない作品が多いから。でも、だからといって、実際の男性同士の恋愛を描いている、とも全然思っていない。

・一つ前の話にもつながるのだけど、私の好きな作品は男女に入れ替えたらまあある話だろうな、とか、世間でそこそこヒットしそうだな、とか、そう思う作品が多い。

・じゃあそれが、男性同士だからって急にファンタジーになるのかというと、そうじゃないでしょ?

・というか、そもそもの「BLはファンタジーですから」という文言自体が意味不明ではある。まず、主語がでかい。

・「ニセコイ」とか「いちご100%」とか、ああいう異性愛ラブコメ漫画もめちゃめちゃファンタジーだけど、わざわざ「ラブコメはファンタジーですから」なんて言わない。なんでBLだけファンタジーか否かに重きが置かれるんだろう。

・現実世界を生きる同性愛者カップルとの乖離、が原因なんだろうけど、それを言ったら、やっぱり遅刻寸前で出会い頭にぶつかったイケメンが転校生だったなんて話も、現実の異性愛カップルの出会いとはかなり乖離してるじゃんね。でも、あれをわざわざファンタジーだとは言わない。みんなが言わずもがなわかっているから。

・異性愛ラブコメに対して「リアルじゃない!」とは怒らないのに、BLに対しては男性同性愛者が「リアルじゃない!」と怒る…苦言を呈する…?のは、少数派な上にBLは当事者ではない人が書いている場合が多く、それをリアルだと思われてはいけない、という理由からなんだろうか。

・だから、BLを書いたり読んだりする側から「BLはファンタジーですから」という言葉で、自衛している。

・「ゲイ当事者や一般の方々、誤解しないで下さい。BLは私達が欲望のままに萌える為のものであって、現実のゲイカップルをリアルに描くことは目的ではありません。だから、現実とは違うと叩かないでください」の略なのかな。

・そういえば、似た言葉に「AVはファンタジー」もあるね。

・あれらは、主に女性側の「AVをリアルだと思われてはいけない」という思いのもと、広められた言葉だと思う。BL作品とゲイ当事者の話と一緒。

・ファンタジーであることが周知されていないから、わざわざ言わなきゃならないってことなんだろうか。

・このファンタジーという言葉、「テレビを見る時は、部屋を明るくして離れて見てね」や「この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません」と同じ意味なんだろう。

・いずれは、BLだからファンタジーという注釈ではなく、実際にはないだろうなという学園ラブコメだからファンタジー、のように、BLというカテゴリー全般を指してわざわざファンタジーだと主張しなくても良い世の中になってほしいな。


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