クラブ変革の年、清水の背番号10をもう一度考える

タイの名門・ムアントン ユナイテッドから加入が濃厚となっているタイ代表FWティーラシンが背番号10を背負うかもしれないことで、ここ数日、エスパルス界隈では賛否両論が出ている。

背番号10は、常葉大学サッカー部監督の"ミスター・エスパルス"こと澤登正朗氏が固定背番号制が導入された1997年から引退の2005年までつけていた番号である。

それだけに背番号10は、多くのサポーターがこだわりを持つ特別な番号であることは間違いない。


そこを踏まえて、ティーラシンが背番号10を背負うことに賛成か反対かを表明したいと思う。

私自身は、ティーラシンが背番号10を背負うことに賛成である。

理由は、澤登氏以降の背番号10を振り返りつつ述べていく。

歴代背番号10

1997 - 2005 澤登 正朗
2006 - 2010 藤本 淳吾
2011 - 2012 小林 大悟
2013     河井 陽介
2014 - 2016 大前 元紀
2017 - 2018 白崎 凌兵

背番号10の共通点

固定背番号制導入以降、エスパルスの背番号10は、これまで6選手が背負ってきたが、全員日本人である。

外国人選手が背番号10を背負ったことはない。

小林大悟を除いた5選手は、ルーキーでエスパルスに加入した選手である。

小林大悟は、富士市出身であり、清商出身でもあるため、移籍加入選手ではあるが、清水と縁のある選手である。

エスパルスの背番号10は、ルーキーで加入した生え抜きか県内出身選手しかつけたことのない背番号である。

澤登氏以降の背番号10と重み

ルーキーで加入した生え抜きか県内出身選手しか背番号10を背負ったことはないが、年々その重みはなくなっていると感じている。

澤登氏の次の背番号10である藤本淳吾は、名古屋に移籍するまで5年間背負ったが、その後は小林大悟が2年、河井陽介が1年、大前元紀が3年、白崎凌兵が2年と短期間で入れ替わっている。

そして、2019年は遂に背番号10は1年間通して空き番号であった。
重みがあるからこその空き番号だったのかもしれないが、短期間で入れ替わり、現在も所属している河井陽介を除き背番号10を背負ったまま他クラブに移籍しており、その重みは年々落ちていると言わざるをえない。

現代サッカーにおけるバンディエラ

短期間で入れ替わることになっている背景として、現代サッカーにおいては移籍が活発となっていることがあげられる。

過去と比べ生涯1クラブのバンディエラは圧倒的に減少している。

今季加入のルーキーを除いてエスパルス以外のクラブでプレー経験のない選手は、GK梅田透吾、DF立田悠悟、DF伊藤研太、MF六平光成、MF西澤健太、MF河井陽介、MF滝裕太、FW平墳迅の8選手で、今季で5年目以上となる選手に限ると9年目の河井と8年目の六平の2選手のみである。

他クラブに期限付き移籍中の選手も含めて移籍は期限付き移籍での武者修行のみの選手で考えてもGK新井栄聡、GK高木和徹、MF竹内涼、MF石毛秀樹、MF宮本航汰、MF西村恭史、MF金子翔太、FW髙橋大悟の8選手いるが、エスパルスでのプレーが今季で5年目以上となる選手は、通算11年目の竹内、通算8年目の石毛、通算7年目の金子、長崎に期限付き移籍中の髙木和の4選手である。

若手を除くとバンディエラの対象となる選手は少ないのが現実である。

この現実を考えると今までの条件に当てはまる選手にこだわる必要はないのではないかと個人的には思っている。

クラブ変革の年、新たな歴史を築く時

"清水"の名前など守らなければならないものはあるが、エンブレムが新しくなり、オレンジが統一され、社長、GM、監督が同時に変わった変革の年だからこそ、新たなスタートを切るこのタイミングで、背番号10を背負う初めての外国人選手が誕生してもいいのではないかと思っている。

しかし、実績のない選手に期待だけで背負わせてもいい番号ではないため、過去の実績は重要であることに変わりはない。

その点、ティーラシンは、タイ代表として99試合43得点の実績があるタイの国民的英雄であり、2018年の広島で32試合6得点のJリーグでの実績、2014年のアルメリアでのラ リーガ(スペイン1部)の出場実績、コパ デル レイのベティス戦では得点を決めているなど、欧州トップリーグでの実績もある選手であるため、背番号10を背負う初の外国人選手としては問題のない選手であると考えている。


クラブ経営を考えてもタイでのユニフォーム販売増加など大きなメリットがあることも事実であり、クラブ変革の年だからこそ、前例にとらわれない新たなチャレンジをするには絶好のタイミングである。

このタイミングを逃すと背番号10の重みは更に落ち続ける可能性もある。

背番号10の価値や重みをもう一度高めるためにも新たなチャレンジをしてほしいと思っている。

結果がどうなるかはわからないが、クラブの変革を見守りながら支えたいと思う。

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