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Twitterスペーストークライブ「画像や映像の加工をした際、それを明示することを義務付ける法律は必要か?」ゲストオーサー:山口真一先生②

日本で画像加工の明示を義務付けるとどうなる?

(伊藤)日本で広告主やインフルエンサーに画像加工の明示を義務付けた場合、どのような効果・利点があると考えられますか?

(山口)そうですね、ある程度問題は改善されるのではないかと思います。自分の見ているこの写真が加工されているんだ、とわかれば、それがわからない状態に比べると被害が少なくなるだろう、と予想されます。なおかつ、明示することを義務付ける程度であれば、表現の自由を強く規制するものではなく、そのあたりの懸念は少ないものと考えています。他方、悪い点をあげるとすれば、「加工とは何か」という線引きをしなければならず、これが曖昧になる可能性があります。例えば、「肌の加工が著しい場合」という条件があった場合、「著しいってどこから?」となります。場合によっては、クリエイティブな活動をしにくくなるかもしれません。法規制を考えるのであれば、慎重に議論する必要があると思います。

行動変容を促すインフルエンサーに対する世界の取り組み

(伊藤)広告主やインフルエンサーに画像加工の明示を義務付ける取り組みはノルウェー、イギリス以外にも広がってきているのでしょうか?

(山口)フランスでもつい最近、インフルエンサーの加工の明示を義務化したんですね。なぜこういう流れができているのかというと、「インフルエンサー」というキーワードかなと思っています。誰でも自由に発信できる時代になっており、その中から結構な数のインフルエンサーが出てきています。SNSという友達とやりとりをするような場で発信しているインフルエンサーは、テレビで見る有名人よりも距離感が近いです。その結果、行動変容を促しやすい、と指摘されてるんですね。例えば、英国の環境に関する調査の中で「環境に関して行動を変えるきっかけとなった広告や人物は?」という質問に対する回答は、インフルエンサーが圧倒的にトップでした。一方でテレビはその半数しかなかった、という結果が出ています。人数で言えば、テレビを見ている人の方が多いと思います。しかしながら、行動変容を促された人はインフルエンサーが圧倒的に多いという結果は注目すべきだと思っています。これは環境のことなので良いことなんですが、インフルエンサーが「こんな風に痩せました」などと言ったときに与える影響が大きいということなんですね。なので、インフルエンサーについて言及した法律が世界中に広がってきているのかな、と思います。

他人と比較して良いことは何もない

(伊藤)もし今聞いてくださっている方の中で、このような問題で悩んでいる方はどういったことに気を付ければよいですか?

(山口)主に3つあります。1つめは「切り取った情報であることを知る」ということです。みんな色々な悩みを持っているけれど、それは載せていない、バイアスのかかった情報なんだ、と知ってほしいです。2つめはこういう問題の根幹には「ルッキズム的価値観」が社会に広まっていることがあると思います。つまり、過剰に見た目を重視する傾向があるということです。SNSによってそれが加速しているという傾向もありますので、ちょっとそこから距離を置くことを意識してもいいのかな、と考えています。そして3つめ、私はこれが一番大事だと思っていますが、「他人と比較して良いことは何もない」ということです。自分の軸をしっかりと持って生きることが幸せの1つの条件だと思うし、色々なパフォーマンスもあがると思うので、ぜひ他人と比較しないでほしいな、と思います。

(伊藤)そうですね、他人と比較してしまうときもありますが、自分はこうなんだ、という軸を大切にしたいな、と聞いてて思いました。

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(これまでのインタビューおよび続きは下記リンクからご覧ください)
①画像加工がもたらす社会問題とは?
③「広告主やインフルエンサーに画像加工の明示を義務付けるべき」が最多回答


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