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《終止》、《邪悪な熱気》、《稲妻》それとも《致命的な一押し》?

●はじめに

 去るモダンホライゾン2にて、白には《虹色の終焉/Prismatic Ending》、赤には《邪悪な熱気/Unholy Heat》という強力な除去カードが追加されました。どちらも環境で見ない日はないと言っていいくらいよく見るカードとなっています。

 そんな中、ジャンドも稲妻を押しのけてまで邪悪な熱気を採用するリストも少なくありません。
 《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》との相性も抜群ですし、《ウルザの物語/Urza's Saga》で墓地にエンチャントも容易に落ちやすくなり、従来より昂揚も達成しやすくなっています。

 一方、ジャンドにとっては邪悪な熱気以外にも、《致命的な一押し/Fatal Push》や《稲妻/Lightning Bolt》など優秀な除去が多く存在します。また、デッキのスロットと現在のモダン環境的に、すべてを4枚入れるわけにもいきません。
 そこで、今回は現代のジャンドでよく採用されている除去をリストアップしてそれぞれを比較考察してみたいと思います。
※《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》や《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》、《激情/Fury》のような除去を行えるパーマネント呪文は今回除外しています。

●ジャンドの除去事情

 2022/08/01現在でよく採用されるジャンドの除去スペルは以下のようなものになります。
・稲妻
・邪悪な熱気
・致命的な一押し
・終止
・突然の衰微
・暗殺者の戦利品

豊富な種類の除去スペル

 まずは、この6枚から見ていきたいと思います。

・《稲妻》

テキストが中央寄せのM11版が好きです

 モダン制定当時から環境で一線級の活躍をしてきたカードです。本体に投げてもよし、PW除去としてもよし、1マナと軽いためとにかく使いやすいカードです。
 しかし、最近は稲妻で倒せるカードが少なくなりつつあります。4Cコントロールが出してくる《創造の座、オムナス》や《忍耐》、青赤執政の《濁浪の執政》や謀議を行った《帳簿裂き》、ほかにも《イリーシア木立のドライアド》や《死の影》や《衝撃の足音》のサイトークンなどなど……枚挙にいとまがありません。
 そのため、最近は4枚フルで投入されることは少ないと思われます。最後の一押しとして非常に優秀な点はいまだにありますが、総合的に見たら採用できるのは1-2枚ほどだと思います。

・《邪悪な熱気》

 冒頭でも紹介しました強力な除去スペルです。通常時はクリーチャーかPWに2点と、《ショック》以下の性能なのですが、昂揚達成時には2点の代わりに6点を与えることができます。6点も与えられればたいていのクリーチャーやPWを倒せますので、実質1マナの確定除去となるのはとても強力です。
 問題の昂揚ですが、ジャンドは幅広いカードタイプを用いるため割と達成しやすいです。そのため、通常通りゲームが進行すればそれほど問題にならないはずです。
 しかし、条件を達成するためには多少時間はかかってしまうため、強力ではありますが4枚入れるのは非常にリスキーです。これらの点から、採用するのは2-4枚程度と考えています。(《ミシュラのガラクタ》が入っている型ならば3枚以上も採用できるかもしれません)

・《致命的な一押し》

 黒によくある条件付き除去カードの一つです。これはマナコストが2以下のクリーチャーを破壊できますが、紛争達成で4マナ以下まで範囲が広がります。先ほど稲妻で倒せないクリーチャーたちは、ほとんどこれであっさり倒すことが可能です。特に、死の影は邪悪な熱気でも倒せないサイズであることが多く、こちらの方が楽に対処することができます。ほかにも《未認可霊柩車》などもサイズが大きくなりがちなので、クリーチャー化した際はこのカード一枚で倒せます。
 紛争も、フェッチランドや《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《鏡割りの寓話》のゴブリントークンから出せる宝物トークンで容易に達成できます。
 PWを処理することこそできませんが、強力な軽量クリーチャーが多い昨今の環境では手放すことができない一枚だと思います。採用枚数は2枚前後とりたいですね。

 ちなみに、Secret Lairの致命的な一押しのイラストはめっちゃかっこいいので気に入った方は是非こちらも……。


・《終止》

旧枠がちょっとかっこいいのでプレーンシフト版

 ここから2マナ域のカードとなります。
 終止はクリーチャーならなんでも破壊できる点が優秀です。上記の1マナの除去で倒せないクリーチャーはタフネスが7以上でかつマナコストが5以上という条件ですが、それを満たすのは濁浪の執政くらい(※)です。また、再生を許さないため、《溶接の壺》が置かれていてもクリーチャーを破壊しに行くことが可能なので、覚えておきましょう。
 たったそれしかいないのか、となってしまいそうですが、現在のモダンでトップメタの青赤執政で3枚以上積まれているカードなので、モダンで遊んでいればしょっちゅう遭遇します。そのため、終止が1枚あるとほんの少しは余裕ができるかと思います。
 ただ、2マナ域というのが最大のネックとなりますし、邪悪な熱気や致命的な一押しで十分という考えもあるため、採用枚数は0-1くらいです。筆者は1枚入れていますが、これも後々の調整でどうなるかは分かりません。

※ほかにも《隔離するタイタン》や、大型エルドラージなどもいますが、これらは出てきたら大体負けなので、今回は特記しませんでした。

・《突然の衰微》

 打ち消されないうえに、マナコスト3以下の土地でないパーマネントが対象という広い条件が魅力の突然の衰微です。
 クリーチャー以外も対象にとれるため、《レンと六番》や《時を解す者、テフェリー》なども触れますし、サイド後によく見る《安らかなる眠り》や未認可霊柩車、《血染めの月》なども破壊できます。(月は色が厳しそうですが……)
 打ち消されない、という部分も《呪文貫き》や《対抗呪文》を気にすることなく撃つことが出来るのはとても良い点です。
 一方、3マナ以下という点が足を引っ張る時もちょくちょくあります。先ほどから何度か名前が出ている濁浪の執政や、オムナスなど放置すると致命的なクリーチャーを除去することができません。また、ミシュラランドも破壊することは出来ないので気をつけましょう。
 筆者は、2マナの除去を採用するなら上記のようなハズレがあるのは致命的だろう、と考えているため、最近は採用したことはありません。

・《暗殺者の戦利品》

 パーマネントを何でも1つ破壊することが出来るという、圧倒的に範囲が広い除去スペルです。しかし、そんなうまい話はあるはずもなく、破壊されたパーマネントのコントローラーに基本土地をデッキから戦場に出すことを許してしまいます。《流刑への道》と違い、この土地はアンタップ状態で出てしまうため、せっかく除去したのにそこから何かしらのアクションに繋がってしまう危険もあります。
 そのため、対象にハズレがないのは魅力的ですが、総じてリスクがとても大きいと感じる1枚です。筆者は、なるべくなら採用したくない一枚と考えています。

●ほかの候補

 次からは上記以外にも1-2枚程度採用されることの多い、除去スペルを紹介します。

・《コラガンの命令》

 3マナと少し重いですが、多くの場合1:2交換を実現するカードであり、非常に小回りがきく使いやすい一枚です。
 現在のモダンではハンマータイムや親和には絶大な効果があるので、採用できるなら是非採用したい一枚と感じています。ただし、稲妻の3点で倒せないクリーチャーが多いと述べたとおり、このカードの2点火力で倒せるクリーチャーはあまり多くありません。そのため、器用貧乏感もちょっと拭えないかなと最近感じ始めています。

・《土建組一家の魔除け》

 ニューカペナで突然現れた新ジャンドチャームです。マナコスト最大のクリーチャーかPWを生け贄にさせるか、3枚衝動的ドローか、墓地追放の3つのモードを選択できます。布告能力はもちろん強力ですが、相手ターン終了時に唱えて衝動的ドローを選択すれば、追放したカードは自分のターンまで持ち越せるので実質3枚ドローしたようなものです。墓地追放もリビングエンド戦などで、メインから《虚無の呪文爆弾》以外に墓地に触れるカードがあると役に立つ瞬間もあるかもしれません。
 この布告能力ですが、PWも生け贄にさせるため、ビビアンポッドのようなコンボを途中で制止することも可能です。また、「マナコストが最大の」という条件があるので、布告にありがちな横にいる小粒を生け贄にされてあまり強くない……みたいな状況が発生しにくいのは便利です。アミュレットタイタン戦や青赤執政などで相手のキーカードを狙い撃ちできるため、ヴェールのリリアナより強い時も。
 ジャンド版《大魔道師の魔除け》といったら語弊はありますが、かなり取り回しが効く良いカードだと思います。筆者も調整により枚数は変動しますが、0-2枚ほど採用しています。

●《終止》、《邪悪な熱気》、《稲妻》それとも《致命的な一押し》?

 さて、ここまで主要な除去スペルを列挙してきましたが、結局のところ何をどれだけ採用すればいいんだよ、という問題に直面します。結論としては何を選択しても、メタゲームによって裏目は存在するため環境に合わせつつ調整を頑張る……という身も蓋もない根性論みたいな話に帰結してしまいます。
 しかし、それはあまりにも投げっぱなしなので、なるべく後悔が少ない除去スペルの組み合わせを以下に挙げておきます。
▼1マナ 5-6
稲妻        1-2
邪悪な熱気     2
致命的な一押し   2
▼2マナ 0-1
終止        0-1
▼3マナ 1-2
コラガンの命令   1
土建組一家の魔除け 0-1

 1マナはもちろん多めに採用したいです。ラガバンや帳簿裂き、《エスパーの歩哨》など、1-2マナでマウントを取ってくるクリーチャーがぶいぶい言わせてくるので、それをいなすために軽量除去は多いに越したことはないです。ただし、稲妻に限っては除去カードとしてハズレが散見されるので、他の2枚よりは評価を少し落としています。

 2マナは終止を1枚取るようにしています。裏目があまりなく、対象にハズレがほぼないのが魅力です。ただし、テンポ面でやや怪しい点は払拭できないので、ここは個人の好みになりそうです。

 3マナはコラガンの命令は必ず1枚、土建組一家の魔除けは1枚入れたり抜いたり……といったところでしょうか。コラガンの命令は、少々重さが目立ってしまいますが腐ることがほぼ無く、このカードが有効なマッチアップも存在するというのが大きいです。
 魔除けは、除去したいクリーチャーかPWを狙い撃ちに出来る可能性が高く、インスタントタイミングで行える衝動的3ドローも従来のジャンドに今まで無かったアクションであり強力なため、できれば1枚は使いたいと思っています。ただ、ヴェールのリリアナとマナ域が被っている都合で採用しないのももちろんありです。

 最後に以下が、現在使用しているリストとなります。

 アドバンテージという面では、鏡割りの寓話の2章能力が強力なため、魔除けはこのあたりとのバランスで枚数が変わるかもしれません。いっそ、魔除けを全抜きして追加の鏡割りの寓話でも良さそうです。
 また、今回は非パーマネント除去スペルに焦点を絞っているため紹介はしませんでしたが、リリアナやレンと六番や黄鉄の呪文爆弾、激情なども除去となるので、それらとの相談も必要かと思います。

●結び

 今回は、自分の考えを整理する意味でもあるのですが、除去のそれぞれの特徴をまとめてみました。採用カードに「苦労が見える」などと言われたこともありますが、この細やかな調整がジャンドの面白いところでもあります。
 皆さんも自分好みのジャンドを組んで遊んでみましょう。

 それでは。


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