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ハイライトとアンセム

「賞味期限1週間切れてる油揚げはよく油抜きして火を通せばOK」と結論が出て、味噌汁にぶちこんだ。小学生の頃は賞味期限が1日でも過ぎてようものなら「食ったら死ぬ」なんて考えていたものであるが、今や消費期限が2日切れた肉でも果敢に調理をする勇敢っぷりを発揮している。

年々数字に対するこだわりというものが減ってきた。中学生や高校生の頃は「3年」という区切りにビビらされっぱなしだったわけで、大学生の時にいたっては「素数の年はヤバい」などと意味もわからんことを言いながら22歳の年をおっかなびっくり過ごしていたものだ。たいした年になったわけではない。

次の素数が29歳、と間隔が空いたことを知ったからか、大胆にこの5年を過ごしてしまったもので、次に迎える29歳という素数の年にもたいして感慨がなくなってしまった。大胆に過ごしたせいか、思い返せば多くの変化があったように思えるが、23歳の頃と変わらず、20年以上も前の音楽を聴き、インスタグラムで好みの女性の写真にいいねをつけまくっている。さっきいいねした女性は、聴いていたレッチリのCalifornicationと同じ年に生まれたらしい。

20年前のことをたいして昔と思わなくなった、と言う繋がりで最近くらったものがある。

今年のSUMMER SONICのヘッドライナーはBlurになったらしい。SUMMER SONICは高校生の時に大阪会場にレッチリを聴きに行ったことがある。異常に暑くて意識が朦朧としており、会場のポカリスウェットの値段を恨めしく思ったことぐらいしか覚えていない。


このアナウンスの動画見たときに「カァーッ!」となった。カァーッ、カッコいい。カァーッ、Song 2は名曲やなぁ。カァーッ、いつまで俺らはSong 2にビビらされとんねん。頼むで、ホンマに。

しかしSong 2が発表されたのは1997年で26年も前のことになる。2023年になっても1997年の曲聴いて、カァーッ、となってるのは恥ずかしいことのように思えるが、これはマジでアンセムなので仕方ない。Song 3が出てないのが悪い。

映像も、過去のBlurのカッコいいところのハイライトが、リズミカルに切り替わっていて気持ちがいい。マイクの前で激しく揺れるデーモン・アルバーン、マジでかっこいい。名前がカッコいいもんなぁ、既に。

いいところだけ切り取ってみていれば誰だってよく見えることはあるかもしれない。サッカーだって、アーリング・ハーランドのゴール集だけ見てたら1人だけ少林サッカーやってる風に見えたりする。

自分だったらどうだろう、と過去の自分が良かったところをなんとか切り抜こうと思ったけどどれをとっても、のたうちまわってるアホヅラの男という塩梅でパッとしなかった。一つぐらいあるかもしれないが、同じシーンだけを反芻しまくって、アレは良かったなぁ、となっているだけのことは飲み屋で散々やってしまった。デーモン・アルバーンも、あのときはマジで良かったよな、と飲み屋で何遍も同じ話したりするのだろうか。

しかしカッコいいイントロであること。こういったアンセムになるような曲は、決まって単純な構成だったり単純なギターリフだったりする。

NirvanaだってSmells like teen spirit のイントロはめちゃくちゃ単純なパワーコードである。実家に帰るたびに、中学生のときにヴィレッジヴァンガードで買ったカート・コバーンのポスターがドヤドヤと壁に貼り付けられているのを見させられるのであるが、あの頃あのイントロにくらいまくった自分はなかなかに正しく中学生なのだったのだと思う。

そういえば、アンセムで思い出したが、プレミアリーグのマンチェスター・Cの試合見ていたら、スタジアムにoasisが流れていた。羨ましいことこの上ない。京都サンガもくるりとか流したらええやんか、と思ったけど、ナンバーガールを流せるアビスパ福岡が強すぎる。

何年も擦られるからこそアンセムがアンセムたらしめられるものなんだろう。BlurだってSong 2以外に曲はたくさんあるのではあるけれど、こんなにこの曲だけを擦ってもカッコいいんだというその仕組みは25年以上にわたる歴史が作り上げたのである。何遍でも擦っていいよ、って、それはもうこの曲を聴いてきた全員が作り上げた決まりであるんだろう。今この瞬間もどこかのカフェやレコード屋でBlurは流れているんだろうし、それはもう止められないことのように思える。

擦りまくっても減らないんだから、また20年経っても同じように擦ってる未来の自分が今の自分を見て何かを思うことだろう。まあ、今の自分もいいところもあったりする。

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