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パグはウィリアム三世の愛犬だった

 16世紀後半のイギリス——権力を欲しいままにしていた国王ジェームス二世が議会によって追放され、新国王としてオランダから招聘されたウィリアム三世と共に彼の地に渡った愛犬がいました。それがパグだったと言います。
 当時の犬名は「ダッチドック」——まさに「オランダの犬」でした。

 オランダ時代のパグはマズル(顔の長さ)が長く、足長のすっきりしたスタイルで耳は短く断耳されていたそうで、その後マスティフやブルドックと交配されて今の姿形になったと言う事です。
 その後のヨーロッパでビクトリア女王を始めとする多くの貴族に愛され、ロイヤルコペンハーゲンやマイセンなど、パグが陶磁器のモチーフとなった歴史は誰もが知るところです。
 以上、パグの来歴を述べてきましたがその末裔の端くれ、現在介護中の我が家の愛犬について少しばかり語りたいと思います。

つぶれてる

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 愛犬との出会いは、とあるホームセンター。ショウケースの中の仔犬達は皆うしろを向いて、バックヤードにいるスタッフの動きを目で追っていました。
 どうやら朝食の時間だったらしく、食事が提供されると真っ先に食べ終えたパグの男の仔がまだ足りないという様に巻貝の様なグルグルの尻尾をパタパタさせ、しきりとスタッフにアピールしています。その愛らしさに惹かれ、即決で我が家に迎える事になりました。

 ヤンチャだった幼犬時代、凛々しい成犬時代を経ていつの間にか14年の月日が流れ、徐々に足腰が弱くなって来ました。その後、昼夜逆転の徘徊が始まり

 •頻繁に起こるてんかん発作時の見守り
 ・シリンジでの給水
 ・スプーンでの給餌
 ・腹圧減少による便秘解消ための腹部マッサージ
 
 などなど今は介護の負担が増える一方ですが、感謝を伝えるかの様にじっと見つめ返すクリクリの大きな濡れた瞳に癒され、毎日を頑張っています。
 つい先だって高齢犬用のゆったりしたベッドを購入しましたが居心地が良いらしく、三日月まくらに顎を乗せて幸せそうに微睡む姿を見ながら、ふと近い将来の自分の姿と重ね合わせてしまいました。(シッカリと心しておかなければ………)

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 【ある少年との思い出】
 愛犬を散歩させている時、自転車に乗った中学生らしい男の子と度々出会うことがあった。
 いつもはこちらに視線を送りながら私達の横を走り抜けてゆく彼が、その日は自転車から降りてしゃがみ込み、犬の頭を撫でながら 

「この犬パグでしょ?パグってラテン語で握り拳っていう意味なんだって」
 額の皺のクラウン、両頬のほくろ、マズルやマスク、耳はハッキリと黒いほど良いらしい等とうんちくを傾け
「この尻尾、二重に巻き付いてるでしょ。良い個体の証拠だよ」と、最後はお墨付きまで頂戴した。
 既に知識を持っていたのか、それともチンクシャな仔犬に興味を惹かれて調べ上げたのか、それは分からないが彼の話は犬種マニュアルに載っている情報を全て網羅していた。
 散歩の時間帯は決まって朝の十時。という事はどうやら彼は不登校児と見られる。
 何時も公園の入り口付近で待ち伏せては一頻り犬と戯れ、明日またねーと自転車に飛び乗って風の様に走り去った。
 そんな関わりが半年ぐらい続いただろうか、ある日を境に彼の姿は見られなくなってしまった。
 元気でいれば二十代後半の立派な青年になっているはず。あの時の拘りを生かして良い人生を見つける事が出来ただろうか。その後の消息を知りたいと思いつつ、すっかりしょぼくれてしまった愛犬を介護しながら、懐かしい日々を振り返っている。


花びらじゃないよ したをぺろり


やめてー
ごはん はやくぅー
アルカポネ?


 *写真は綴込みのアルバムから掲載しましたので雑な切り抜きになってしまいました。愉快な写真沢山ありますので又記事と共に掲載しようと思います。ご覧頂き有難うございました。

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