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妻籠宿は遠かった175Km

序章

今年の9月は敬老の日と秋分の日が週末に重なり、2週続けて連休が有った。
1週目はあまりの暑さに出かけるズクを失い、2週目の今回は山仲間と尾瀬、燧ヶ岳にハイキングの予定を立てていたけど雨で中止となった。
この雨は北陸や東北地方に相当な被害をもたらした。
特に能登半島は地震と豪雨のダブルパンチで本当に気の毒だ。
謹んでお見舞いの意を表したい。
連休の最終日は天気が回復して、各地は晴れた様子、しかも朝晩の冷え込みが増して一気に秋の陽気となった。
当初は群馬県前橋市の「よしおか温泉道の駅」に車中泊して、利根川と江戸川を結ぶ、東京ロングライドを予定していたけど、車を運転するのもめんどくさくなり、リストにあるコースの中から、自宅からそのまま「妻籠宿」へ向かうことに決めた。

今回のルート
輪行で南木曽駅から特急しなので戻ってくる。


「中山道」はご存知の如く、江戸時代に整備された江戸の日本橋と京都の三条大橋を結ぶ街道である。
長野県の通過地点は、東の軽井沢から和田峠を越え下諏訪、塩尻、南西の南木曽の妻籠宿を結ぶ約160kmの距離となる。
今回のライドは自宅から国道19号線で塩尻で中山道となって、木曽で国道19号線を外れ旧中山道を辿り、妻籠宿迄の計画である。
基本、国道19号線を名古屋へ向かえば良いのだけれど、塩尻から愛知県中津川へ向かうのは、高速道路をいつも使ってしまうので通ったことが無い。
この木曽街道と呼ばれる国道19号線は、しょっちゅう大型トラックの事故があり、よくニュースで見かける。
果たしてトンネルはいくつあるのか?勾配は?
未知のライドに多少躊躇いはあった。
距離は約170kmで、きつい登りは無いはず、8時間もあれば良いだろうと思って出かけたが…


塩尻へ

2024年9月23日、午前3時前には目が覚めてしまい、セットしていたアラームを止めた。
窓を開けると寒くてすっかり秋の陽気に変わっていて、ウェアを長袖に変えて4時前には家を出た。
20分程でR19に合流すると、後は妻籠宿のある南木曽迄、忠実にR19を辿れば良い。
長野市からのR19は、松本市迄約70kmで橋が何箇所かあり、犀川と並行していて川沿いのワインディングロードが楽しめる。
休日早朝の国道は空いていて寂しいが、車のストレスも無くライドするには快適だった。
信州新町に入ると路面が濡れていて、こちらは夜中に雨が降った様だ。
山清路」を過ぎると左カーブの手前に警察官が立っていて、こんな早朝何をしているのかと進んで行くと、車が1台ひっくり返って大破していた。
どうやら単独事故の様だ。
その昔、先ほど通過してきた大安寺橋で「犀川スキーバス転落事故」があった事を思い出してしまった。
気を取り戻して先を急ぐと夜明けとなり、そろそろ腹が空いてきたので、八坂バス停で最初の休憩を入れた。
稲刈りが済んだ犀川辺りの田園地帯は、はぜかけも終わりすっかり秋の景色だ。

八坂バス停
はぜかけにブルーシート


行程は始まったばかりで腹は満たされていないが、まだ先は長いので適当に切り上げて先を急ぐ。

犀川沿いにR19
生坂水鳥公園対岸


コンビニ食は極力食べたくないので、この時間に開いている店といえば「すき家」しか無い。
多分、明科にあったかも?と急ぐが、明科手前木戸橋のコンビニで我慢出来ず、おにぎりを補給した。
明科には結局無くてその後松本市内の「すき家」を見つけ、やっと定番の「塩サバまぜのっけ朝食」で腹を満たす事が出来た。
時刻は8:40、残す行程は100km位か。
松本から塩尻までのR19沿は色々な思い出がある。
20代の頃就職した会社の寮がこの辺りにあり1年程住んでいた事、息子が就職して同じくこの辺りに寮があり、引越しの準備をした事、槍ヶ岳からヘリで松本市内の病院へ搬送され、急遽向かえに来てもらったかみさんと深夜のロイヤルホストで食事をした事、今の会社の営業所が合併され、南松本駅の某居酒屋で宴会をした事、細かい事を挙げればキリがないが、ペダルを漕ぎながら走馬灯の様に蘇ってきた。

妻籠宿へ

ライドしてきたR19善光寺街道は、塩尻市広岡の信号「高出」で十字路となって中山道と合流する。
左折する東側はR20から岡谷でR142中山道を繋ぎ軽井沢へ、直進する南側はR153で伊那街道(三洲街道、飯田街道)は愛媛県岡崎へ、北側からのR19善光寺街道は右折し、西側へ直角に曲がって木曽街道となり名古屋へと続く。
塩尻宿から妻籠宿までは、洗馬、本山、贄川、奈良井、薮原、宮ノ越、福島、上松、須原、野尻、三留野、妻籠と12の宿場があり、一番有名なのが奈良井宿だろう。
木曽街道に入るとアップダウンを繰り返しながら進んで行く。
ドライブインと併設している広い駐車場のローソン 塩尻宗賀店でおにぎりを二つ買って、一つはバックポケットに収めた。
ここからベースは上がらず後の気配も感じずに重いペダルを踏んでいると、一人のローディーが抜いて行った。
抜いて行ったローディーは次の信号で右折してしまい、背中を追う目標がなくなってしまい、再びソロライドとなってしまった。
ここから妻籠宿までトンネルは8つあって、自転車の事は全く考えていない。
大型トラックやスピードオーバーの乗用車などが、ひっきりなしにすれ違いストレスが溜まる。
木曽の境に差し掛かると、中山道最大の宿場町、奈良井宿に到着した。
「道の駅木曽ならかわ」で休憩を入れて、ここより僅か先に、美しい樹齢300年以上の総檜作りの太鼓橋があった。

なんという快晴!
樹齢300年以上の総檜作りの太鼓橋は橋脚を持たない木製の橋としては日本有数の大きさ。橋の下部の木組からは匠の技を垣間見ることができた。


奈良井宿をゆっくりと散策したかったが、先はまだ長いので名残惜しいが諦めて出発した。
この先は木曽郡との境となり、一番長い「鳥居トンネル」を通過する。
トンネルの入口には歩道に誘導するように、「自転車は降りて通行して下さい」と看板まで立っていて、鳥居トンネルの通過は指示に従った。
トンネルを抜けるとダウンヒルが続く。
ハンドルをしっかりと握り、腰を後ろに引いて快適に下って行く。
この先のトンネルにも狭い歩道があり、暗い歩道を通行するのは曲芸で、後続の車に煽られながら車道の左端を決死の覚悟で走り抜けた。
後で気づいたのだが、「奈良井川」は塩尻市の鳥居峠東側手前で、中央アルプス茶臼岳を水源とし犀川に注ぎ、一方「木曽川」は鉢盛山を水源として鳥居峠西側手前で伊勢湾に注いでいる。
鳥居峠を挟んで全く違う水系だった。
トンネルを幾つか抜け、道の駅大桑に辿り着いたのは13:00を回っていて、腹ごしらえをしようとレストランに寄るが、10人ほど待っていて時間がもったいないので諦めた。
バックポケットに入れておいたおにぎりをほおばりながら、妻籠宿までの距離を確認すると、残すところ15kmで気を取り戻し先を急いだ。
僅かな距離で、サイコンに入れてきた旧中山道へ右折のナビ表示が有り、国道ばかりライドして来てうんざりしていたので、田舎道に入ると気分転換となり、古い家屋や道標に、旅人が往来し賑わっていた当時の雰囲気があった。
しかし、再び国道に出てしまい僅かなひと時だった。
今度は山側へ旧中山道は左折し、民家の無い山道を登って行くと、南木曽駅の貯木場が見え、木の香りが漂ってきた。

旧中山道、ここを通る人はまずいないだろう。

迷路の様な山道を彷徨いながら、なかなか妻籠宿には辿り着かないので、心配になって方角を確認し進んでいくと国道256号に出て、妻籠宿を通り過ぎた「町営第三駐車場」に15:00前にやっと辿り着いた。

妻籠宿から南木曽駅

駐車場から国道を渡ると妻籠宿が始まる。
この通りを歩く為に来た。


昭和43年8月、妻籠宿保存事業は、県の明治百年記念事業のひとつとして実施することになり、地元住民は、昭和43年「妻籠を愛する会」を設立し「売らない・貸さない・こわさない」の信条に基づき意思統一を図り、自然や街道とともに、山深い木曽谷の中の集落として宿場景観を保存している。(公式WEBサイトより引用)

街並みは1km少しだろうか、自転車を引いてゆっくりと見学した。
人はまばらだったけど、外国の方が半分を占めていた。
今度はゆっくりと訪れてみたいものだ。

あまりゆっくりしていられないので南木曽駅へ急いで向かおう。
駅に到着し、輪行の準備をしていると、16:00発長野行きの「特急しなの」がホームに入ってきた。
次の「特急しなの」に乗れば良いと輪行の準備を終え、切符売り場に行くと閉まっている?
カウンター越しにおばさんがいたので聞いてみると、南木曽駅はJRの業務委託で発券は16:00で終了だそうだ。
次の「特急しなの」は20:43発、マジか!
困っていると、おばさんが親切に長野へ帰る最短の方法を調べてくれた。
17:16発の各駅停車がホームに入ってくるので、それに乗車して塩尻駅18:50着、19:37発「特急しなの」に乗り換えて、篠ノ井駅20:32到着。
料金は塩尻駅で清算して下さいとの事。
30分ほど残業させてしまってごめんなさい。
おばさんに丁寧にお礼を申し上げた次第である。
南木曽駅から塩尻駅迄の各駅停車は93分と長かったけど、おかげで缶ビールを呑みながらライド記録をゆっくりとまとめる事ができた。 

塩尻駅から篠ノ井駅までは僅かな時間なので、デッキで待機した。

20:32、無事に篠ノ井駅に到着。
天気に恵まれて良い1日を過ごす事ができた。

 Bird`s eye view

あとがき

8月のロングライドはあまりの暑さに自転車に乗る気もしなかった。
なのでほぼ毎日、家のローラー台で汗を流していた。
盆休みは山仲間と、2泊3日で槍ヶ岳縦走を予定していたが、台風が来ていて中止。
急遽天気の合間を縫って、笠ヶ岳1泊2日の縦走に出かけた。
1日目は新穂高温泉から笠新道経由笠ヶ岳、2日目は笠ヶ岳から弓折岳、鏡平経由新穂高温泉。
笠新道はキツイと聞いていたが、テン泊の重荷は流石に答えた。
下山後久しぶりに、筋肉痛が1週間続いた。


















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