「お前は1917にハマり、ジョージ・マカイを推すことになる」
久しぶりに何度も見たい、何度でも語りたいと思える映画を見ちゃった
実はこの映画、イギリスに住んでて一足先に見てる友達に「お前は絶対にハマるから覚悟しとけ」「ジョージ・マカイを推すことになる」とか散々おどされててフーーンと思っていたのに、やっぱりそうなったから 預言者か?と思っている
ジョージ・マカイ、演技が凄まじい(出てくる人物みんなそうだが) スコの嫌々道中を行く顔と、決意を固めてからの顔が違いすぎる 最初「この人が推し?になるの?」と疑ってたけど、あ〜あ、沼に落とされてしまいましたね
(日本の表記はジョージ・マッカイだけど、本人がマカ(ー)イと発音してるのでここではマカイと表記します)
・主人公の身体性について
2回目見て思ったけど、この人場面によって身体の動きのスピードを意図的に変えてる気がする
この作品、常に走ってなきゃいけなくて(時間がないし、止まったら敵に撃たれてしまう)、だから動いていることが「生」なんだけど、彼はときどき足を止めてしまう というかものすごくゆっくり遅い動きをする
決意を固めて走り始めてからも、ときどき、このまま死んでしまえたらいいのに、このままここにいられたらいいのに… みたいな表情をする場面がある そのときの彼、顔を相手にゆっくり向けたり瞼をゆっくり落としたりしてる そのスローな動きがものすごく色っぽい
ゆっくり動くことはすなわち「死」へ移行していくこと、だから、いっそう「生/性」を鮮やかにする 彼が瞼を半分しか開けていないときの、あの退廃の匂い… すごくエロティック…(あの場面で赤ん坊が出てきたことも象徴的だよね)
この種の色っぽさ、ダンケルクでは感じなかった あれも何か目的があって移動をしていく話だけど、疲労を映す場面があんまりなかった このままここで死んでしまいたい、現実から逃げてしまいたい みたいに、そこから逸れていく動きがない みんなつねにきちんと動いて、必死に生きてる
あ〜 もしかしたら「疲労」にエロティシズムがあるのかもしれない 英雄でもない、神でもない、ただの人間の肉体が疲れていくこと この話は神話じゃなくて、リアルな人間の話なんだな〜と思う
見た目は若いのに、諦めモードみたいな冷静さを感じさせるところがいくつもあって(楽にしてあげよう、二度と戻らない覚悟で… etc)、このキャラクターが戦いの中で何度も絶望して、老いてしまったことを感じさせる
全体的にスピードが早くて走ってる場面の多い作品だし、出てくる他のキャラクターも生き生きしてる人が多いから(トラックの中の若者たちがふざけあったりしてるのも若くてまぶしい)、その疲労がいっそう対比的になって色っぽい
だって身体をゆっくり動かすのって、思っている以上に難しいでしょ 勢いにまかせて叫んだり怒ったり泣いたりするのは、わかりやすくてやりやすい でも悲しいのに泣かない(泣けない)とか、何も言わない(言えない)とか、感情を抑えた表現をするのは難しいんだと思う
脚本を読んでもあれらの場面に「ゆっくり」という言葉はないし、インタビューとかを見る限りジョージ本人はくるくるにこにこ動くタイプの人間なので、 そのへんを理解して意図的にああいう演技をしているんでしょうね
すごいね
はぁ…
あと終盤、へろへろに疲れたスコが、誰かとぶつかって倒れそうになりながら歩くとき、肩から崩れ落ちてるのがいいなと思った ふつう誰かとぶつかったとき、手が動くでしょ? でももう疲れすぎて手も出せない 肩から斜めにぐらっとする その疲労が痛々しく身にしみる
ほとんど自分から話さない彼の、初めての長いセンテンスが詩(!)なのも、脚本家め…… LOVE と思っている
・音/音楽について
2回目でようやく音楽に気を配れた 夜中、照明弾が空中を一定のリズムで横断していくときの音楽が気になる 音階を上がって下がる音楽 宙を飛んでいく光をより鮮やかにしてるし、この音楽の壮大さとぼろぼろの廃墟のミスマッチがなんだか不気味にも感じる
(https://music.apple.com/jp/album/the-night-window/1489939478?i=1489939567 てかサントラのタイトルだけで泣けませんか?わたしは泣けます)
あと使命を終えた瞬間から、周りの雑音や喋り声が遠くぼんやり曇って聞こえるのも、身体は限界なのに心だけで前に進んでいる気がして、自分も彼の耳でそれを聞いてるみたいだった
まだ見てない方はIMAXで見てほしい 画面の大きさ、音などいろいろあるけど、なにより画面の明るさが全然違います 画面が明るいといろいろなものがよく見えますよ…
ハァ〜〜〜〜〜〜
とにかく見れば見るほど考えることがあって最高 ジョージがとにかく美しい おまえらもまたジョージ・マカイを推すことになりますからね みんなで推しましょうね ハハ
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