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長編文学小説・MとRの物語

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Mというのは、あの、三島由紀夫さんのことです。三島由紀夫さんが現代によみがえり、女子高生とともに小説を書いていく、というお話です。ファンタジーっぽいですが、純文学です。
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2017年12月の記事一覧

57「MとRの物語(Aルート)」第四章 1節 文芸部

新章突入。でも、いうほど新展開でもない。 なぜならこれは、純文学だから。 でもこの後、2節、3節あたりでは、エンタメ風のシーンとなる予定。 そこで多くの真事実が判明する、ことになるはず……。 (目次はこちら) 「豊饒の海・第三巻 暁の寺」を読了したRは、白いカバーをかけた第四巻をカバンに入れ、学校へ向かった。教室に入り、席についてそのページを開くと、すぐに文芸部のメガネっ子が近づいて来て、Rに言った。 「Rさん、三巻読み終えたんだね! しかもこんなに早く! すごいね!」

58「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(1)

昨日の夜書き上げ、即投稿しようとしたんだけれど、 あまりにもとげとげしく感じたために、一晩寝かせてリライト。 (目次はこちら) 授業が終り、自転車で帰宅するR。そこでRが、Mの異変に気付いた。  Mさん……。どうしたの? 何かピリピリしてるけど。  何か怒ってるの? 文芸部のこと?  いや……。大丈夫、文芸部には賛成だよ。  気になっているのは、この空、この大気だ……。  空、大気? Rは堤防の脇の小道で、自転車を止め、空を見上げた。 青く澄んだ空に、細かい雲が、

59「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(2)

暴かれていく真実。でもそれは、MとRにとっての通過点に過ぎない。 がんばれM、がんばれRちゃん。 (目次はこちら) 闇の中、落下する感覚だけが全身を包む。 女神は落下していた。太古の竜の住む、日本の地底深くに向かって。 途中、もうもうと湯気の煙る、滝のしたたる巨大な空洞などもあったが、日の光のない地底に置いては、それらは何の情動もおこさない。ただ事象として、感覚として、女神の皮膚を刺激するのみだった。物質を伴わない感情を、「唯識(ゆいしき)」と呼ぶならば、感情のともな

60「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(3)

正直、2、3回の投稿で終ると思っていた、「第四章 2節」。 あまりに頭でっかちで、説明口調すぎる展開になったのでリライトしたら、 3回では終らなくなってしまいました。 でも全体的な流れはいい感じ。このまま進めてみます。 今回のお話で、私による「豊饒の海」に関する解釈の、 片鱗を垣間見ることができると思います。そのキーワードは「妹」。 今回は推敲不足できっと読みづらいと思います。すみません。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(3) ベラ

61「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(4)

今回も少し粗削り。 でも今回は、寝かせてどうにかなるものでもない気がするし、 あまり時間もないのでこのまま投稿。 Mは「現実とは滅びの連続」と思っていたっぽいけれど、 そのアンチテーゼとして、「滝をのぼる鯉」を、 今後描いていってみたい。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(4) M……。 私は前世における、少年時代のあなたのことを、忘れられない。 あなたは本当に美しく、利発な少年でした。 のちにあなたが書いた、「豊饒の海」という小説に

62「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(5)

ありがとうございます! 先のお話に興味があるため、すこし駆け足にします。 ちょっと粗削りな回や、矛盾ある記述、説明不足が続くかも。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第四章 2節 竜の秘密(5)  Mは女神の説明を、じっと聞いていた。女神は説明しながら、Mの顔をちらちらと盗み見た。意外なほどに、Mの表情は冷静だった。「記憶の扉」で、彼の中の、妹の記憶を封じたことが、功を奏しているのだろうか。1970年(昭和45年)の彼の自決による死は、その瞬間におぞましいほど

63「MとRの物語(Aルート)」第四章 3節 鮎の奔流・その1

さっき「鮎の遡流(そりゅう)」というタイトルで投稿したんだけど、 「鮎の奔流」に変更。こちらの方が、よりMさんっぽいね。 川の流れは、時間、運命などを表し、これを全身全霊でさかのぼり、 上流での産卵をめざす、高貴な鮎たちを描きたいという思い。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第四章 3節 鮎の奔流・その1  Rは今日も、「豊饒の海 第四巻・天人五衰(てんにんごすい)」にしがみつき、猛スピードで読み進めていく。トイレでも、学校でも、家に帰ってからも。何かを口

64「MとRの物語(Aルート)」第四章 3節 鮎の奔流・その2

悲しいお話は嫌い。そんな強い思いが作者にもし届いたなら、 その結末は変わるのか。変えるべきなのか。 (目次はこちら)  Rは読み進めていく……、おだやかな川の水がその流量を増し、ゆっくりとしかし着実に海へと近づいていくように、結末までのページが消化されていく。きらきらと輝いていた第一巻、闇にぎらぎらと光る太陽のようだった第二巻、夕焼け染まる妖艶なダンスのようだった第三巻。とすればこの第四巻は、漆黒で不吉な夜なのか。清顕(きよあき)、勲(いさお)、ジン・ジャン、そして透(と

65「MとRの物語(Aルート)」第四章 3節 鮎の奔流・その3

推敲ゼロの粗削り。 瑕疵(かし)など、なんぼのもんじゃーい。 どんとこーいw (目次はこちら)  Rはすごいスピードでストーリーを追っていく。Mは信じられない思いで、それを眺めている。一体Rの身体に、何が起こった?  Mさん……。  永遠不変の、美しい粒子という言葉で、ひとつ思い出したの。  以前にも私、夢の中でこういうことをしたことがあるって。  こういうことって?  うん、私がね、何かを変えるために粒子になるの。  確かそんな夢だった。 ストーリーにはどんどん

66「MとRの物語(Aルート)」第四章 3節 鮎の奔流・その4

女神やMを超える、怖ろしい能力を身に付けてしまったRちゃん。 そんなRちゃんに、恐怖を覚えるM。 (目次はこちら) 「Mさん、ちょっとMさんの小説の疵(きず)、直していい?」 Mは戦慄した。この小娘は、何を言いだすのだと、正直腹立たしく思ったが、他でもないRに、乱暴な言葉などは吐けない。 「待って! もし本当に時間をさかのぼれるとしたら、その技は危険すぎる。ひとつ実験をしてみようか……」 「実験?」 「うん……。ここにノートPCがある。電源を入れよう。さっきの技を

67「MとRの物語(Aルート)」第四章 4節 女神五衰

今回のお話は、ちょっと唐突だし、説明的すぎる。 でも内容的に、第四章:天人五衰に入れておきたかった。 中二臭い「七柱」の設定は、もしかしたらのちのち、 都合で変更させていただくかも? (目次はこちら)  楽しかったパーティーが終り、Rとその母が眠りについた後、Mはベランダで、軽くうとうととしていた。そこへ天から、女神が舞い降りた。 「やあ、来たな」 「ええ。色々と情報も仕入れてきましたよ」 「阿頼耶識を使って?」 「そう。未来のことを少し見てきました」 ベランダ