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ペット犬の幸せヨーロッパ生活~ヨーロッパは犬と飼い主の天国


#ペットとの暮らし

9年のベルギー生活を経てペットの犬と猫を連れて2019年に帰国しましたが、思うのは犬連れでどこでも楽しめたヨーロッパの暮らし。海外生活が長く、借家・アパートの条件でなかなかペットが飼えませんでしたが、ベルギー赴任時は病気持ちの犬連れが前提だったので、当初からペット可の物件に入居しました。でも日本から連れて行った犬は、病気が悪化して最初の冬を越せずに最期を看取ることになってしまったのです。ここからは、新たに我が家に加わって悲しみの隙間を埋めてくれた愛犬ポリーヌが、ヨーロッパでの生活、特に懐かしい散歩、レストラン、旅についてお話しします。

私は2010年10月にベルギーで生まれた、パーソン・ジャックラッセル・テリア、11才メスのポリーヌです。飼い主さんは、日本から連れてきた私のお兄ちゃん犬を亡くし、代わりの犬を保護犬サイトで探し、ポリーヌという犬が気に入ったのです。週末にシェルターに会いに行きましたが、その犬はもうもらわれてしまっていませんでした。そこでまた犬探しをするうちに、ブリュッセル郊外のペットショップで、生後5か月で売れ残っていた(確かに小さい頃のペットショップの紹介写真はあまり可愛くありませんでした)、私に出会ったのです。

お母さんは一目で私が気に入って、お父さんに、「見て見て、この仔は死んだウィリーそっくりよ、この仔にしましょう」と言いました。私は嬉しくて嬉しくて、全身をぶるぶるふるわせて、動くことができませんでした。するとお父さんは「この仔変だよ、病気じゃないの?ダメダメ」と言って、ほかの子犬を見に行ってしまいました。がっかりしていると、お母さんがあきらめず、店員さんに「この仔元気がないみたいだけど、病気ですか?」と尋ねると、店員さんは「こんなに元気な仔はいませんよ」と言ってケージから出してくれたので、私はここぞとばかりにそこら中思いっきり走り回って見せました。これでお父さんも納得してくれて、私はめでたく買ってもらえたのでした。

そして名前は、お父さんお母さんが気に入っていたポリーヌをもらいました。ポリーヌPaulineは、フランスではちょっと古風な女の子の名前で、散歩で会った人に言うとよくくすっと笑われてました。でもポリーヌという有名な女優さんもいるんですよ。さあお兄ちゃん犬ウイリーの分まで可愛がってもらおうっと。

EUでは、ペットの犬猫は生まれてすぐに獣医さんに行ってIDチップを入れ、EU Pet Passportをもらいます。パスポートには名前、犬種、生年月日、毛の色、ID番号、飼い主情報が記載され、また生後のワクチン接種記録も記録されるので、このパスポートを持っていればEU内を家族で自由に旅することができます。私のパスポートも獣医さんに行って飼い主変更の手続きが行われ、これで晴れて私はお父さんお母さんののペットになったのです。後日加わった我が家のベルギー生まれのベンガル猫アルタも同じようにパスポートを持っています。

新しい生活はまず散歩から始まります。アパルトマンから徒歩5分の所にかつては動物園だった、ちょっとした芝生の斜面や水鳥が多い池もある散歩にぴったりな公園があります。レオポルドパークという、EU議会に隣接する公園で毎日散歩に行きました。私は、小さい頃は元気いっぱいのお転婆娘だったので、公園デヴューしたその日に嬉しくて思いっきり駈け出したら、子犬用の細めのハーネスがブチっと切れて、まるで鉄砲玉のように遠くに行ってしまい、お父さんがあわてて追っかけてきてやっとのことで捕まりました。私が一人で駆け回っていても、公園を散歩する人々はまったく驚きません。リードなしで飼い主さんと散歩する犬やその辺を走り回っている犬が沢山いるからです。日本ではドッグランでしかありえませんが、向こうでは当たり前の風景です。もちろん、人間やほかの犬に迷惑をかけないようにしつけられていることは大前提です。ごく稀にですが悪い犬がますが、飼い主さん、犬のしつけはあなたの責任ですよ!

私も段々と慣れてきて、公園に入るとお父さんがリードを外してくれるようになりました。仲良しの犬とお互い追いかけっこをして遊ぶのです。池の周りのエジプト雁やクイナをわざと追いかけて池に落とすこともよくやってました。でも、一度白鳥に接近しすぎて耳をかじられたこともありました。お母さんもかつてオーストリアのザルツブルグ近郊で白鳥にエサをあげようとして手に嚙みつかれたことがあったそうで、野生の白鳥は危険なのです。あとは大好きなボール遊び。私はボールを一つ口にくわえて、もう一つのボールを追いかけて、サッカーのドリブルのように口にくわえたボールで押して遊ぶのが大好きです。いつも夢中になって、特に暑い日などはもうぜーぜー行って歩けなくなるまで遊んでいました。日本では、のんびり散歩できる場所は公園か遊歩道ですが、自由に遊ぶことはもちろんできませんし、歩いていても人に加えて自転車がそばを走り抜けていくのでそのたびにびっくりしてしまう毎日です。

公園の次はレストランです。日本では犬が入れるレストランはほとんどありませんし、入れてもテラス席のところが殆どで、ゆっくり食事を楽しめる雰囲気ではありません。ドライブをしても結局コンビニで何か買って外で食べることになり、旅の楽しみは大きく減ってしまいます。

お父さんお母さんは初めてフランスに住んだ時に、レストランで人間が食事を楽しむテーブルの下で犬が大人しく座っているのを見て驚きました。フランスでは格の高いレストランほど、特に夕食時には子供は入れず、大人だけで食事を楽しみます。でも犬は連れて行けるのです。そう、フランスではレストランに限って言えば、犬は子供より上の存在なのです!ヨーロッパの生活を楽しむには、犬がレストランで大人しく待てるようにしつける必要があります。私もまず、近所のカフェの歩道の席でカフェ・デヴューをしました。最初から周りの人や犬に迷惑をかけることはありませんでしたが、子犬なのですぐ飽きてしまいます。隣の席に行ったり、もう行こうよとクンクン言ったりしますが、お父さんお母さんさんは良い子にしていようねって言いながら、パンをちぎってくれます。そのうちに、私は、レストランに行って大人しく待っていればパンをもらえるんだと分かって、レストランに行くのが楽しみになりました。そういえば、ブリュッセルの行きつけのお寿司屋さんの大将はいつも「犬連れておいで」、と言ってくれました。ミシュランの星付きレストランにも何回も行きましたが、お店の人たちはとても親切で、絨毯は柔らかいし、水は持ってきてくれるし、パンも特別美味しくて大満足、最後はいつもすやすや寝てました。また行きたいなあ。

最後は旅行です。ヨーロッパの楽しみの一つははあちこちに気軽に車で出かけられることです。特にブリュッセルは北西南に100KM行けばオランダ、ドイツ、フランスという絶好の位置にあります。私はベルギー国内はもちろん、フランス、スイス、イタリア、ルクセンブルグ、ドイツ、オランダそしてイギリスまで日帰りや泊りがけで旅行しました。パスポートのチェックがあったのは、海をまたいだイギリスだけでした。一週間のヴァカンスもよく連れて行ってもらい、お父さんお母さんとの長距離のドライブ、見知らぬ街の散歩や、レストランでの食事をのんびりと楽しみました。泊まるところも食事も日本のような苦労はありません。お父さんがネットでペット可のホテルを探せばたいがいの場合は複数の選択肢があります。そうそう、歴史ある豪華なシャンパーニュやサンテミリオンのシャトーホテルにも何度も泊まって食事にもついていき、お姫様が寝るようななベッドでゆったりと過ごしました。当時、私は旅するポリーヌと呼ばれていました。

日本ではレストランだけでなく、犬が泊まれる宿やホテルは限られますし、いかにも犬連れは隔離されているという雰囲気のところや犬連れだけの所が多いのが残念です。靴を脱いで畳で生活する長い間に当たり前となった、衛生観念がヨーロッパとは異なる日本では、外を歩く犬が室内を歩き回ったり、レストランにいるのは大きな違和感があるのでしょうね。これから犬にも優しい場所が少しずつでも増えるといいなと思います。旅行中、もちろん、美術館・博物館や教会などの中に犬は入れませんが、どうしても見たい場所はお父さんお母さんが代わりばんこで見学していました。私もおやつのビスケットをもらいながら楽しく待っていました。お父さんお母さんが飛行機で出かけるときは私はお留守番でしたが、お留守番はいつも決まった、大好きなお姉さんのところであまり寂しくありませんでした。旅をした国の中でヨーロッパ大陸側はおしなべて犬に優しいのですが、意外に優しくなかったのはイギリスで、食事場所に苦労した覚えがあります。どこに行っても一番優しかったのはドイツで、是非もう一度訪れたい国です。

私は行けませんでしたが、お父さんお母さんによれば、街中にノラの犬や猫があふれていて犬猫好きにはたまらなかったのはトルコのイスタンブールです。住民がエサを与えて保護しているのでみな人懐っこく、逃げないのはもちろん、可愛がると嬉しそうに遊んでくれます。有名なアヤソフィア寺院には、グリというノラ猫が住んでいて、内部でのんびり寝ています。オバマ大統領が訪問した時にも挨拶したとかで、世界で一番素敵な場所に住んでいる有名なノラ猫です。イスラム教では、預言者ムハンマドが「ネコへの愛は信仰の一側面である」と言ったとされ、イスラム教の国であればこどこへ行っても猫は敬愛され、保護されています。一方、犬はよだれを垂らす不浄な生き物として、嫌われているのが普通なのですが、イスタンブールの人々は犬に対しても同じように優しかったのがとても印象的だったそうです。そういえば、ブリュッセルで散歩していると、怖がって避けていくアラブ系の大人や子供に毎日のように出会っていました。

さあ、楽しいヨーロッパ生活もいよいよ終わりが見えてきて私は帰国準備に入りました。お兄ちゃん犬が来るときは渡航前に狂犬病予防注射の接種証明と健康診断書をもらうだけで、入国時のチェックも無く簡単でした。昔、飼っていた猫を日本からアメリカに連れて行く時も同じように簡単だったようです。でもペットを海外から日本に持ち込むには一年前から大変な準備が必要です。まずIDチップの埋め込み、1回目の狂犬病予防注射とその有効期限内の2回目の注射。その後狂犬病抗体血液検査をして、検査から180日以上の待機期間。渡航40日前までに成田の動物検疫所への事前届け出、渡航前10日以内の輸出前検査、ベルギー当局からの輸出証明書取得。お父さんはスケジュールの確認や書類の準備でてんてこまいでした。これをすべて済ませてやっと飛行機に乗れます。飛行機の旅はケージに入りチェックイン。私はチェックインの時にケージに入らず、荷物を預けるベルトに乗って荷物と一緒に行こうとして降りようとせず、航空会社の人に大笑いされました。フライト中はお父さんお母さんが美味しいワインや食事をのんびりと楽しんでる間ペット専用の空調貨物室で過ごします。チェックインから成田で再会するまで15~16時間、アルタも隣のケージにいたので一緒に頑張りました。成田の動物検疫所でそれまで我慢していたピッピ(おしっこ)をしてしまいましたが、お父さんお母さんもよく頑張ったねと褒めてくれました。

これで、ポリーヌの話はおしまいです。ヨーロッパでの犬との生活、いかがでしたか?ベルギーで暮らしている間に毎月のように出張していたフランスや地元ベルギーでもテロが頻発し、不安で暗い時期も長かったのですが、ポリーヌやアルタのおかげで癒され、慰められ、乗り切れました。本当に彼らが我が家に来てくれて幸せです。ポリーヌもアルタも日本で元気に暮らしていますが、いつもヨーロッパでの彼らとの暮らしを懐かしみ、いつかまた一緒に住んでみたいという思いを募らせています。

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