見出し画像

ぼっちがバンド活動を通じて獲得した能力に関しての一考察

※アニメ最終話までのネタバレを若干含みます

概要

後藤ひとり(以下ぼっち)はギタリストとしての才能以外に、バンド活動を通じて広い視野を獲得し、それを音楽活動に昇華するスキルを習得しつつある。

ぼっち・ざ・ろっく!とは

ぼっちは長年の努力によりギタリストと作詞家としての才能(注1)を開花させたが、コミュ障だったため、ネットに演奏をアップロードするものの、リアルの世界では人前で演奏せず、悶々とした日々を送っていた。だがそこにバンドのギター枠を探していた大天使・伊地知虹夏が降臨し、ぼっちは結束バンドのメンバーになる。バンド活動をしながら、ぼっちは少しずつ変化していく。

こんなかわいい人に頼まれたら断れないね

視野狭窄

ぼっちをぼっちたらしめる最大の要因(注2)は極度の人見知りと妄想の暴走である。初めてバイトをする際に走った脳内シュミレーションでは、スムーズに接客できず、それがネットに拡散され、なぜか裁判沙汰になり死刑を宣告されていた。(注3)

裁きを受けるぼっち

さらに喜多郁代にイソスタ(注4)をやろうと誘われた際(注5)には、強い拒絶反応を起こし、精神世界に迷い込んだ。そこではぼっちが承認欲求モンスターと化し、街を火の海に変えていた。

作画崩壊するぼっち

このようにぼっちには自分の世界に閉じこもり妄想を爆発させる癖がある。この自分の世界に閉じこもってしまう癖こそ、ぼっちがじめじめとした青春を送ってきた一因なのではないかと推察する。自分の世界に閉じこもる行為は、思考が一辺倒になりがちで、多様な視点が失われる。視野狭窄になって、ほかのありえるかもしれない道筋に思考が及ばないのだ。(注6)

たとえば、虹夏と郁代が海の家でバイトしようかと話していたとき(注7)、ぼっちはバイトをしたくないあまり自らの肝臓を売ろうとしていた。冷静になればわかるが、肝臓を売るほかにもバイトをせずにお金を得る方法はある。
ほかにライブハウスの店長である伊地知星歌が、ぼっちに認めている人間がいるのだとをほのめかすために「お前のこと、ちゃんと見てるからな」と言った際(注8)には「完全に目をつけられてる」と誤解していた。(注9)

視野狭窄に陥っているさまを体現しているのが、1話で描かれたダンボール箱をかぶったぼっちである。この状態では視界が遮られぼっち本来の実力が発揮できない。だが彼女はここからめざましい進歩を遂げる。

ギターヒーローの正体

分岐点

ぼっち成長のターニングポイントとなるのが、廣井きくりとの出会いである。(注10)

昼間から酒を呑むきくりおねえさん

きくりはチケットを売ろうと奔走しているひとりを気遣い、路上ライブを提案する。初の路上ライブで緊張しているぼっちに対し、きくりは「敵を見誤るなよ」と助言した。
アドバイスを受けたぼっちは客の認識を、自分を追い詰める存在から楽しませる存在なのだと改め、結果、いい演奏ができた。
このエピソードで習得した広い視野こそが、ぼっちを成長させる一助となる。

成長

第8話では、ライブ途中でメンバーが思うように演奏できていないとに気づき、それを断ち切るようなギタープレイでメンバーを引っ張った。以前のぼっちなら自分のことに精一杯で周りの状況など見えていなかっただろう。

ペグが故障して1、2弦が使いものにならなくなってしまった最終話では、パニックに陥る寸前で、きくりが放置していた酒瓶を使ってボトルネック奏法を披露した。周囲を広く見ている証拠だ。こういう咄嗟の行動はなかなかできるものではない。とくに陰キャは。ぼっちの成長がはっきりと示されたシーンである。

酒瓶になれたら

結び

以上、ぼっちの成長には広い視野でものごとを見れるようになった点が大きいと示した。文化祭後、父親のギターをずっと使っていたぼっちが、新しく自分用のギターを買ったのは、成長を表すメタファーかもしれない。(注11)
成長したぼっち含め、結束バンドにはさらなる飛躍が期待できる。2期を首を長くして待つとしよう。

ちゃんとロックしてるのがよかった

補足

ぼっち・ざ・ろっく!を語る上で欠かせないのがASIAN KUNG-FU GENERATION(通称アジカン)の存在である。アジカンはぼざろの舞台と同じく下北沢から生まれたロックバンドである。筆者も学生時代『アフターダーク』や『君の街まで』など何度もリピートして聴いていた。今回聴き直し、ノスタルジィを感じて涙腺が緩んだのは内緒だ。
結束バンドのメンバーの名前はアジカンのメンバーの名前からきているなど元ネタがあるので、興味がある者は調べてみるといい。
また音楽に関しても通常のアニソンとは少し異なり、下北系が意識された楽曲が多い印象である。最初、そこらへんと絡めて記事を書こうとしていたのだが、すでに自分より深堀りして書かれている方がいたので、今回は別のアプローチから執筆した。



あと『星座になれたら』って曲なんですけどこれってキタちゃ……(話が長くなるので割愛)

注釈

1.アニメのなかでしか楽曲を聴いたことがない者は歌詞を見ながらフルで聴くといい。なかなか尖った歌詞でぼっちへの理解度が高い人が書いてくれたのだと嬉しくなれる
万人受けの歌詞を書こうとしていたぼっちに対し、めずらしく親身になって助言した山田リョウの功績が大きい
2.同時に彼女のアイデンティティであり、これを失うとぼっちでなくなる
3.アニメ2話
4.画像のシェアに重きを置くSNS。インスタグラムの略称であるインスタのもじりであると思われる
5.アニメ4話
6.この視野狭窄に陥るケースには、ポジティブになりすぎる場合とネガティブになりすぎる場合があるが、ぼっちが陥りやすいのは当然ネガティブな思考に囚われるケースだ
7.アニメ5話
8.同じくアニメ5話
9.星歌の普段の振る舞いにも問題があるので仕方がないとも言える
10.アニメ6話
11.成長を示す寓話の多くは親離れが暗喩となっているケースが多い

参考

いいねくれー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?