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宮内れんげ(れんちょん)の天才性に関しての考察

※のんのんびよりはあっと作の漫画作品であるが、ここではアニメ化された作品を扱う

宮内れんげ(れんちょん)とは

のんのんびよりの作中に登場する小学1年生で、語尾に「なん」「のん」「ん」などをつけるのが特徴的なキャラクタである。やや青みがかった銀髪をツインテールにしている状態で観察されるケースが多い。

「れんちょん」の愛称が有名だが、作中でそう呼ぶ主要キャラクタは越谷夏海のみであり、越谷小毬からは「れんげ」、一条蛍からは「れんちゃん」と呼ばれている。(文中では以降「れんちょん」で統一する)

その愛くるしい容姿、言動からTwitter等のSNSでアイコンにしている者も存在する。ハロー効果(注1)を期待しているのだろう。

あんよが上手ごっこをするれんちょん

宮内れんげの才能と能力

ネット上では、れんちょんは天才なのではないかとの意見が散見される。はたして、それはどのような部分を観察して導き出されたものなのか。れんちょんの稀有な才能と能力の一部について考察していく。なお、MECEに則っていないなどといったツッコミはやめていただきたい。

知的好奇心・言語能力・表現力・誠実性

しおりちゃんという年下の女の子が、なぜボールは丸いのに止まるのかと疑問を口にするシーンがある。(このしおりちゃんという女の子もすごいのだが、論旨から外れるため割愛する)

その疑問に対してれんちょんは驚きつつ、「確かにこの問題は議論に値するんな。この謎はウチが解いてみせるん」と返す。彼女は続けて「実はこの前、空気抵抗という言葉を知ったん。そして、その後、摩擦という言葉も覚えたん」と話す。

この一連のやり取りからわかるとおり、れんちょんは知的好奇心が旺盛で、かつ、語彙が豊富である。「空気抵抗」「摩擦」という語彙は科学系の書籍から得たらしいが、それもまた知的好奇心の高さを裏打ちしている。

しおりちゃん(左)とれんちょん(右)

さらには「なんでボールは投げても下に落ちるの?」と質問され、答えるシーンでは「それは地球が引っ張ってるからなん」「地球はこのお団子みたいにまんまるなん。でも見えない力で引っ張ってるん」と「重力」という言葉を使わずに説明している。「空気抵抗」と「摩擦」を知っているのならば「重力」も知っているはずだが、れんちょんはそこであえてその単語を使わなかった。「空気抵抗」「摩擦」に加えて、立て続けに新しい単語を使うと、しおりちゃんの脳に対して負荷が大きすぎると考えたためである。
れんちょんは代わりに、「見えない力で地球が引っ張っている」と説明した。相手が理解できるように別の表現に置き換えたのだ。ものを教える行為は、用語を噛み砕いて別の言葉に置き換える行為に等しく、かなりの割合で表現力に依存する。このことから、れんちょんは表現力にも長けているといえよう。

れんちょんは、しおりちゃんの純粋な質問に、ひとつひとつ丁寧に答えていく。小さい子の「なぜ?」「どうして?」といった質問に答えるのが大変な作業であるのは、子を持つ親ならば納得しやすいだろう。そんな労力を要する質問に対して、れんちょんは誠実に、しかも簡潔に回答する。難解な用語で周囲を煙に巻くウォール街の人間(注2)とはちがうのだ。

状況把握能力・問題解決能力・自己犠牲の精神

授業参観の回がある。そのエピソード内で、夏海が母親の前でいいところ見せないとヤバいことになる、みたいな場面がある。
あまり頭がいいとは言えない夏海に対して、宮内一穂(教師。れんちょんの姉)は、彼女が自信をもって回答できるように九九の八の段を答えさせる。(ちなみに夏海は中1である)
しかし、夏海は8×3のところで止まってしまう。(ちなみに夏海は中1である)
絶体絶命の夏海だったが、れんちょんが救いの手を差し伸べる。
れんちょんは、不穏な空気に包まれ始めた教室の空気を切り裂くように「24なのーーん!!」と叫んだ。「こら〜今は夏海の番だぞ〜」と優しく嗜める一穂。「今答えようとしてたのに〜」と苦笑いする夏海。結果、れんちょんの機転により、夏海が8の段を知らないのではないか、という疑惑は有耶無耶になった。

目から光を失っている越谷夏海(なっつん)

れんちょんがこの行為に及ぶまでのプロセスを整理してみよう。
①状況を把握する
②解決策を思いつく
③実行に移す

①状況を把握する
れんちょんが「24なのーーん!!」と叫ぶには、現在「夏海が困っていて、彼女が回答できないと危機的状況に陥る」と認識する必要がある。当たり前に思える方は、家庭や職場で解決されない問題をいくつか思い浮かべてほしい。そのうちのいくつかは、多くの人間がそもそも問題だと認識していないからではないだろうか。

②解決策を思いつく
自らが代わりに答えるというアイデアを閃いたれんちょんだが、そこでは彼女の計算高い一面が垣間見れる。
彼女は「自分がいきなり他人の質問を答えてもギリギリ許される年齢である」と自覚しており、それを利用することを思いついたのだ。自分が今持っている限られた材料で最大限の成果をあげようとするれんちょんは美しい。

③実行に移す
あとは実行に移すだけなのだから簡単と思うかもしれないが、そうはいかない。
「他人が回答しようとしていた質問に割り込む」という行為は、自身に「邪魔した人間」というレッテルを貼るに等しいからだ。
もちろん、教室にいた者はれんちょんが夏海を助けようとした結果だと理解しているが、れんちょん自身はかなり勇気のある選択をしたのではないか。
つまり、この一連の行為は、イエス・キリストのような自己犠牲の精神を孕んでいたのである。
自分の利益よりも他人の利益を優先しての行動、自らが悪者になるかもしれないリスクを背負う覚悟。ただの小学生でないのは明らかだ。

身体能力

お世話しましょう小鳥さん〜♪
お世話しましょううさぎさん〜♪
きれいに毛づくろいいたしましょう〜♪
そ〜してまとめて……ダイナマイッ!!

と歌ったあといきなりヘッドスライディングするシーンがあるのだが、助走なしで2、3メートルは飛んでいるように見える。

ヘッドスライディングするれんちょん選手

こんなことをすれば怪我をするのは必至で、実際、このあと彼女は「膝をやっちまいました」と報告する。
しかし、泣き出すそぶりはなく、非常にたくましい。怪我もそこまで重症ではない。着地の段階で身体をしなやかに動かし、ダメージを外に逃したのだろう。

このような事例を紹介した場合、よく言われるのが、「自然が豊かな田舎で育ったから運動神経が良い」である。しかし、実際はそんなことない。反例は筆者だ。

創造性・芸術的センス

彼女の代名詞である「にゃんぱすー」が彼女の創造性の高さを示す好例であろう。
影響を受けた漫画やアニメ、テレビで視聴した芸能人の言動を周囲の人に対して使った経験は誰しもあると思う。だが、「にゃんぱすー」は、れんちょんがほとんどゼロから生み出した挨拶であり、なにが下地となって生まれた言葉なのか判然としない。
これは、ベースとなった言葉がなにかわからないほど、れんちょんの思考が飛躍したことを意味している。

また彼女は、タヌキに「具」、蝉の幼虫に「その日暮らし」など、生きものに対しユニークな名称をつける傾向がある。さらには、学校のウサギに餌をあげている最中、そのウサギによって小屋に閉じ込められるという話があるのだが、その際には「ウサギににんじんいっぱい食わせるどころかウサギに一杯食わされてしまいました」と驚くべきユーモアを披露した。
これらはすべて、事象Aからまったく別の事象Bに関連付けする能力が他者より発達している表れだ。

れんちょんは非常に絵が上手く、イラストのコンクールでは金賞を受賞している。彼女の芸術性はブラックロータス(注3)のように高く評価されているのだ。
絵だけではなく、工作も得意だ。れんちょんは学校で爪楊枝とセロハンテープを使って人形をつくっていた。

爪楊枝とセロハンテープで作成した人形

れんちょんの独特な発想は、このようなちょっとした工作や新たな遊びを考えつくなかで培われたものかもしれない。
作家・工学博士の森博嗣はこう述べている。

柔軟な発想というのは、突然思いつくものではなく、いつも可能性を探す目で見ている、その集積の中から芽生えるのである。

出典:創るセンス 工作の思考|森 博嗣

家庭環境・教育環境(宮内家・旭丘分校)

れんちょんがこれほど学問に精通しているのは、姉である宮内一穂が教師であるところが大きい。その証拠に、れんちょんのもうひとりの姉である宮内ひかげも成績優秀だ。彼女は東京都内の高校に通っている。故にれんちょんの頭の良さは姉、一穂の力……と述べたいところだが、その可能性は低いと言わざるを得ない。旭丘分校は小中一貫校であり、基本的に自習するモデルが採用されているのだが、生徒たちが自習しているあいだ、一穂は基本、寝ている。学校で普段授業をしない教育者が勤務後に優秀な家庭教師になっているとは想像しがたい。
れんちょんの知識は、彼女の知的好奇心に支えられていると考えるのが妥当だ。

では、彼女の創造性や芸術性の源泉はどこにあるのか。
筆者は、彼女の周囲にいる人間の影響が大きいと考える。
作品を観てもらえればすぐに気づくが、れんちょんの周りにいる人間は、彼女の突飛な言動を一切否定しない。
ブレインストーミングのアイデア出しの段階で相手の考えを否定するのがご法度であるのは、他者の否定によって、発案しづらくなるからだ。
他者からオリジナリティ溢れる表現を抑圧されなかったことにより、れんちょんは思う存分、創造性を伸ばせたのではないかと推察できる。

結び

さて、れんちょんの天才性について見てきたわけだが、彼女の成長はまだ終わっていない。彼女は小学校低学年であり、まだ世界の一部しか知らない。この先、彼女がどのように変容するか予測するのは不可能であるが、その才能がのびのびと育つ未来を期待したい。

補足

現在のれんちょんの人格を形成した人物を、ふたり紹介しておかねばならなない。

1人目は加賀山楓。駄菓子屋を経営しているため、周囲からは「駄菓子屋」と呼ばれている。中学生時代からまだ赤ん坊だったれんちょんを世話をしていた人物であり、れんちょんの髪を初めてツインテールにしたのは彼女とされている。ここで感謝の意を示しておきたい。

2人目は石川ほのか(ほのかちん)。夏休みに父親の実家に里帰りしていた際にれんちょんと仲良くなった少女。れんちょんが初めて絡んだ同年代であり、彼女の人格形成に多大なる影響を与えた人物。彼女の出演した回は伝説となり世界が滅ぶまで語り継がれるらしい。

注釈

  1. ハロー効果は、ある対象を評価するとき、目立ちやすい特徴に引きずられてほかの特徴についての評価が歪められる認知バイアスの一種。つまりここでは、れんちょんの愛くるしい容姿を惹起させることによって、発信者が少しくらい支離滅裂な発言をしても許されるだろうという狙いがある。ハロー効果に関しては、日経BPから刊行されているPhil Rosenzweig著の『なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想』が詳しい。

  2. マイケル・ルイス著の『世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち』を参照されたし。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』として映画化もされている。この作品を1度読んだり観たりしただけで完全に理解できる者は少ない。それもそのはずで、金融業界というのは、そういう難しそうに見せることが重要なのだ。これらの作品には「思考停止するな、わかった気になるな」というメッセージが込められているように思う。

  3. ブラックロータスは世界初のトレーディングカードゲーム、マジック・ザ・ギャザリング(通称MTG)のレアカード。筆者が確認した2022年5月4日時点でのアルファ版の価格は103,936,469円だった。

参考・引用

読んでくれてありがとなん

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