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『ジャック・ウェルチ「20世紀最高の経営者」の虚栄

『ジャック・ウェルチ「20世紀最高の経営者」の虚栄』 デイヴィッド・ゲレス 著

 かつてジャック・ウェルチと言えば名経営者の誉れ高く、当時の社長も「ウェルチはこう言っています」とよく引き合いに出していました。しかし、その名門GEが、ダウ平均銘柄から外され、収益源と言われたGEキャピタルを手放し、さらにはドル箱だった発電機・ヘルスケアも売却。いまや「ただの航空機エンジンのサプライヤーになり下がった」内情・顛末について詳しく論じています。本書ではその要因を、「ダウンサイジング(人員削減)、事業売買、金融化」を推し進めたウェルチズム、内部でのパワハラ言動、粉飾操作などに起因すると分析しています。

 正直、ここまでひどかったのかと驚かされました(ウェルチはアンパンマンの対極)。一人の経営者によって会社が傾くことは東〇・シャー〇などでも既視感があり、児玉博氏の『テヘランからきた男』にも通底するところがあります(日本の某通信事業会社も大丈夫か…)。

著者は、NYタイムズの記者ですが、多面的な取材と分析を重ねており、訳もとても読みやすくできています。ユニリーバなどを対比して、長期的な視点に立つことの重要性を訴えていますが、最後の提言では、これが「新しい資本主義」ではないかと思わせる内容です。

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