こうして私は会社を追われた①

2023年4月
私は無職になった。
約20年勤務した会社を退職した。正確には【辞めざるを得ない状況下になるべくしてなった】というのが正解だろうか。

20代前半で結婚をし二人の子供に恵まれ、親子共に成長をしていった。しかし数年前に離婚をし、子供も巣立った。

会社に勤めていた時は、それなりに成績も良く、比較的早い出世もした。社内での出世競走する事を楽しんでいたと自負する。

しかし、順風満帆な成長が持続する訳でも無く、歯車の歯が一つ欠損しただけでこうも凋落するものか…と自分でも笑えるくらい落ちこぼれた。

イノベーションだかフロンティアスピリットだか知らないが、どこかの国の創業者を深く信仰し、歴史ある古い日本の企業を若手に丸投げで作り変えるなど、到底無理な話だ。数十人規模ならまだしも、千人を超える従業員を抱えるそれなりに名のしれた会社だ。今の国家同様に、古い体質の人間が掌握した会社など、そう簡単に変わるわけない。

しかしいとも簡単に変わる方法があったとしたらどうだろうか。

そんな革新的な流れにしてやられた。

それは役員の中途採用だ。しかも人事掌握できるレベルの。所謂ハイクラス転職というものだろう。

組織のヒエラルキーは本社の建屋が物語っている。
最上階は役員室、人事、間接部門のトップが鎮座し、その下に直接部門が居る。士農工商の様なわかりやすい構造だと思う。

本社最上階は、その建物の中でも特別空気が悪い。妙な重圧と薄暗さがある。
それもその筈だ。太陽光が射し込むエリアは役員室が配置され、そもそも日光を浴びることすら出来ない構造なのだから。他のフロアとは大きく異なる。

なので、余程の用事が無ければ最上階へ足を踏み入れようなど思うわけもない。

2022年の春先、重役の一声で会議室が揺らいだ。
重役の命令は絶対だと言わんばかりに、人事が内偵を開始する。
ワタシもその会議に参加していたが、中々に衝撃的な一言だった。
しかし、まさかそれが自分に降りかかるとは思っても見なかったが…

ある日上司から呼び出され、とある不祥事についてのヒアリングがあるから会議室へ来てくれ。との事だった。
見に覚えのない呼び出しに応じ、重々しい雰囲気の最上階へと足を運ぶ。

「失礼します」

 少人数の会議室とは思えないほどの人数がこちらを見ている。それも皆役職を持ったお偉方だ。

内容は控えるが、当時の部下であった人間との繋がりや、その周りを取り囲む環境など、根掘り葉掘り聞かれた。
もちろん、理由を知る由もないので全て正直に答えた。

最初のヒアリングはそうして終わった。
そこまでは良かった。


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